【61歳】WWEマニアHBK草野仁氏8【脅威の肉体】
258 :
お前名無しだろ:
その日、獣の鎖が外された。
適度な広さを保った控え室。ドアにはその野獣の名が記されてあった。
――――草野仁。
控え室に、突如ドサリと重々しい音が響く。
地面に脱ぎ散らかされた一件何の変哲も無い普通のスーツ。
しかし、それが鈍重な鉛で作られている事を知るものは少ない。
その重さは100kg。並の人間なら日常生活を送るのも困難なほどの重みを持ったスーツ。
男はそれを着て。一見、ただの知的なアナウンサーを演じてきた。
だが、今日。その鎖は外された。
TVのプロデューサーの無邪気な好奇心。それが男に鎖を外させる理由を作ってしまった。
「仕事だから仕方が無い。」
そうつぶやく草野仁は静かに誰もいない控え室でほくそ笑む。
すると、外から控え室をノックする。
「どうぞ。」
草野仁の声に導かれるように入ってきたのは安田大サーカスのHIRO。
今回の番組、「レッスルコロシアム」一の巨体を誇る、元力士である。
のっそりと部屋に入ってきたHIROは明らかに不満顔を浮かべている。
HIROはスタミナ不足が原因で初戦で早々に敗れてしまい、
「後は何もしなくても良い」という条件でこのスタジオに留まっていた。にもかかわらず、
突然、草野仁に控え室にまで呼び出された事に苛立っていた。
*9.1% 21:10-23:04 NTV レッスル・コロシアムザ芸能界!最強の格闘王者グランプリMAX
(´・ω・`)
260 :
お前名無しだろ:2005/04/04(月) 09:44:08 ID:nQixk6v1
「なんのよう?」
荒い吐息とともに出された不遜な問いにも草野は笑顔を崩さない。
「いやぁ、実はですね。今マギー審司君と森君が闘ってるでしょ?
その後私と闘うんですが少々不公平に思いましてね。皆さんはもう何戦も重ねている。
なのに私は一回も闘ってはいない。これでは誰が見ても不公平です。そうでしょう?」
「?」
「……そこでですね、HIRO君。今あなたを含め、戦いに敗れた選手全員。
――――私と闘ってもらう事にしたんです。」
「!?」
すると突如、目の前の椅子に腰掛けていたはずの草野仁がHIROの視界から消える。
気がつけば、がっしりと。巨大な万力のような腕がHIROの胴体に巻き付いている。
驚いて思わずのけぞろうとするが草野の腕がそれを許さず、微動だに動けない。
HIROの顔面にダラダラと汗が流れる。先ほどまでの部屋の空調によってかいた汗ではない。
冷や汗。人間として、生物としての本能が全力で警鐘を鳴らす。
ゆっくりと。確実にHIROの巨体が宙に浮いていく。
「ヒ、ヒィ!」
「……正直。見るに耐えませんでしたよ。あなたの肉体。
目標も、ポリシーも何もなくただただ怠惰の上で積み上げてきたその脂肪。万死に値する。」
「……ぎゃああああああああああああ!!!!」
342 :名無しさん@お腹いっぱい。:テレビ史54年,2005/04/04(月) 09:10:35
978 名前:ほくほく堂 投稿日:2005/04/04(月) 09:08:46 ID:2vPWidrm
26.5% 19:00-20:33 NTV 一球の緊張感THE LIVE 2005「巨人×広島」
13.8% 20:33-20:54 NTV ダッグアウト
16.1% 21:03-22:54 NTV 金曜ロードショー「身代金」
10.7% 23:00-23:30 NTV (新)プリティガレッジ
22.4% 19:00-21:04 NTV 一球の緊張感THE LIVE 2005「巨人×広島」
*8.6% 21:10-23:04 NTV レッスル・コロシアムザ芸能界!最強の格闘王者グランプリMAX
13.1% 23:16-23:46 NTV 恋のから騒ぎ
10.9% 23:46-24:11 NTV ナイナイサイズ!
262 :
お前名無しだろ:2005/04/04(月) 09:44:42 ID:nQixk6v1
―――数分後、ますだおかだの増田が廊下を走っている。
「やべぇ、やべぇ。草野さんに呼び出されてたの、すっかり忘れとった。
……まぁ、草野さんなら謝りゃ許してくれるやろ。」
すると、廊下に突如、岩でも落ちたかの様な衝撃が響く。
衝撃の元は増田が目指していた草野仁の控え室。
「……草野さん、の控え室から?」
呆然と控え室の前で立ちすくむ増田。
するとドシンと再び同じような衝撃。その衝撃でゆっくりと、控え室のドアが開く。
「……く、草野、さん?」
増田の眼前にいつもの草野仁の姿は無い。
「さて有田さん」 そんな当たり前のいつもの返しすら、今では嘘であったように感じる。
この男。この生き物が他人に意見など求めるのか? ありえない!
震えながら硬直する増田を見て、ニコリと微笑む草野仁。
「遅かったですね。増田君。あやうくHIRO君が死んでしまう所でしたよ。」
「……え? ……HIRO!?」
レスリング姿で微笑む草野仁の足下には、
ボロ屑の様に変わり果てたHIROが転がっている。
「……な、なんで?……え?草野さんが…」
「そうです。私がやったんですよ。
彼の場合、口の聞き方がなってなかったので少々、手心を加えてしまいましたが。」
「…………」
「さぁ、次はあなたの番ですよ。
そういえばあなたもよくありませんね。時刻通りに来る。社会人なら当たり前の事ですよね?」
「……ヒ……た、助け……ああああああああああ!」
263 :
お前名無しだろ:2005/04/04(月) 09:48:15 ID:nQixk6v1
それからしばらく時間が経ち、ようやくマギーVS森戦の決着がついた。
勝者はマギー審司。スタッフがその旨を伝えるべく草野仁の控え室を訪れる。
「すいませーん。草野さん。本日の挑戦者はマギー審司に決定しましたー。」
「はーい。分かりました。もう少ししたらスタジオに向かいます。」
ドア越しに草野仁の穏やかな声が響く。
用件を伝えたスタッフは次の仕事をこなしにさっさとスタジオへと戻っていく。
入れ替わりに控え室に訪れたのはヨーコ・ゼッターランド。
「草野さん。タオルをお持ちしました。」
その声にガチャリと控え室のドアが開く。
中から出てきたのは赤い鬼。全身に返り血を浴び、赤く染まった。草野仁。
「いやぁ、どうもすいません。大変ありがたいです。
さすがにお客さんの前でこの「スーパーひとしくん」の状態を
お見せするわけにもいかずに困ってたんですよ。」
そう言うと、草野仁という鬼は気恥ずかしそうに笑い、 タオルで全身の血を拭っていく。
するとドアの奥から控え室の内部がのぞく。
そこには三又、舞の海、秋山、薬師寺、その他全選手が変わり果てた姿で転がっていた。
「……あら。今日の参加選手全員、倒しちゃったんですか?」
「いやいや。どうにもこらえきれなくて。お恥ずかしい。でもまだ全員じゃないですよ。」
「え?」
「イキがいいのがいるじゃないですか。……マギー、審司。」
264 :
お前名無しだろ:2005/04/04(月) 09:49:59 ID:nQixk6v1
後にヨーコ・ゼッターランドは語る。
そう笑った草野仁はもはや人ではなかった。
いつもの笑みではあったが、その奥に潜む目には明らかに光が無かった。
「きょうはおそらく初めてTVで公開殺人が行われる日だ」
彼女はその笑みを見て、そう確信したのだと言う。
ーーーーー『草野仁という名の鬼』 著・大木凡人 より引用。