【いただき】WJ163【マンモス】

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650お前名無しだろ
とある田舎町、仕事のため始発電車に乗ろうと無人駅につくと
なにやら雑音まじりのBGM、この曲はパワーホール???
見ると駅前広場とは名ばかりの空き地に背の低い男がなにやら
みすぼらしい格好で声を張り上げている、聞き取りにくいその声に耳を澄ませば・・・
「○○町体育館、今夜6時半から!アレだから!これ持っていけば半額だから!」
その異様な光景・・・あきらかに50歳を越えるその男は長い髪を振り乱しながら、
足元に置いてあるラジカセのパワーホールに負けじと大声をあげる、
着ているにはポスターを何重にも重ねた、服というよりは紙をまとっている。
その紙にはこう書いてあった「MAGMA 04」そしてそのポスターにある顔こそ、
今、まさに目の前で早朝から犬の散歩をしている御婦人に割引券を押し付けている男、
「新人類・革命戦士・長州力」その人、本人だったのだ・・・!!
恐る恐る近づくと長州自らこちらへ走る、そしてわめき散らす。
「今夜6時半!アレだから、アレ!これ持ってアレだから!半額だから!」
握りすぎてしわくちゃになっている割引券をそっと受け取り私は話す。
「・・・長州力さん、ですよね・・・?」
その問いに、ふと我に返ったように黙り込む長州・・・
沈黙の間、パワーホールだけが鳴り響く・・・そして・・・
「・・・・・お願いします、見に来てやってください、アレしますんで」
少し照れくさそうにはちまきを外し頭を下げる長州さんは自ら握手を求めて来た。
「長州さん・・・私、昔、テレビで見てました!藤波さんと・・」
言葉をさえぎるように首を振る長州さん「・・・昔話はアレだから、
今日の試合、俺と若いのを見に来てやってください」
始発電車がやってきた、私は軽く会釈をして電車に乗り込むと、
窓の外ではにこやかに手を振ってくれる長州力の姿があった・・・