6月18日午後4時半ごろ、永野会長は大阪・北区にあるマンション
「ストークマンション扇町」の5階の自室に1人でこもっていた。
ドア周辺には、約30人の報道陣やガードマンが張り込んでいる。
その人垣を押しのけて、2人の男が永野の部屋のドアの前に立った。
ゴマ塩頭でベージュのブレザー姿の工場経営者の飯田篤郎(当時56歳)と
パンチパーマに黒ずくめ姿の建築作業員の矢野正計(当時30歳)であった。
ガードマンが誰何(すいか)すると、飯田が凄んだ。
「名前なんかどうでもええ。鉄工所を経営しとるもんや。
永野に会いたいんや。開けんかい。お前ら、よう、こんなやつのガードしとるな」
驚いたガードマンは、電話で聞いてみる、と言って階段を降りていった。