1 :
お前名無しだろ:
「プロレスの定義について考えたことある?」
僕は心の底から吃驚した。多分彼女も気づいただろう。
定義?なんでそんな上等なものがプロレスに求められるんだ?
「単なるショーだよ」
とても素敵で人間的な答えだ。
でもそんなことをいってしまったら僕と彼女との関係が気まずくなってしまうことはさすがに僕でも予想できた。
「でもね」
と彼女は言って、煙草を地面に落とし、靴の底で踏んで消した。
「ファンの間では絶対に『八百長』って言っちゃいけないの。例えば
『プロレスはプロレスである』って言わなくちゃいけないの。 『八百長』
って言葉、ほら、聞こえが悪いでしょ?私、プロレスがプロレスだって
わかったとき、『プロレスって真剣勝負じゃないのね』って言ってみたの。
そしたらすごおく怒られちゃった。そういう こと言っちゃいけないって。
だって、みんなすごく真剣なんだから。プロレスを真剣にやってるのよ。」
やれやれ、プロレスファンってのも楽じゃない。
2 :
お前名無しだろ:02/09/20 06:56 ID:eEqYVo/c
4 :
お前名無しだろ:02/09/20 07:45 ID:tjcLaUJm
その女から電話がかかってきたとき、僕は台所に立ってスパゲティをゆでているところだった。
「ボブ・サップが新日のドーム大会に出るらしいの。」と受話器をとるなり唐突に女が言った。
ぼぶさっぷ?しんにち?いったい何を言っているんだ?
「失礼ですがどちらにおかけですか?]と僕はあくまで礼儀正しく答えてみた。
「そんなことは関係ないわ。とにかくボブ・サップが新日に来るのよ。」と女は早口でたたみかけるように言った。
「ねぇ、サップと猪木が戦ったら素敵だと思わない?」続けて女は言う。
「いのき?」
「アントニオ猪木よ。」と女は簡潔に答えた。
「まぁ、素敵だろうね。」と僕は良くわからないままに答えた。「ところで、あなたはいったい誰ですか?」
「石井館長よ。」
「いしいかんちょう?――」と僕が言いかけたところでぷつんと電話が切れた。
やれやれ、と僕は思った。まったくやれやれだ。
5 :
お前名無しだろ:02/09/20 09:21 ID:lpUhtaSG
「ときどきプロレスを見るんです」と彼が言った。
「失礼?」と僕は言った。ちょっとぼんやりしていたもので、聞き間違えたような気がしたのだ。
「簡単な話なんです。テレビをつけて、10チャンネルを回すんです。わいわいやって、
それでおしまいなんです。見終わるのに一時間もかかりゃしませんね」
「それで」と言ってから、僕は口をつぐんだ。次の言葉がうまくみつからなかったからだ。
「どうしてプロレスなんて見るわけ?」
「変ですか?」
「わからないな。君はプロレスを見るし、僕はプロレスを見ない。そのあいだには
はっきりとした違いがあるし、僕としてはどちらが変かというよりは、まず違いを
はっきりさせておきたいんだ。お互いのためにね。それに、プロレスの話は君が先に
持ち出したんだよ」
「そうですね」と彼は言った。「確かにそのとおりだ。ところでフィッシュマンズの
レコードはお持ちですか?」
ない、と僕は言った。
もっと読みたいよ…
ミドリ>直子>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>ジョアニー・ローラー
9 :
お前名無しだろ:02/09/21 16:08 ID:Eh0LMX8Q
電話のベルが鳴った。
「今仕事が終わったの」
「そう」
「何してるの?」
「テレビを見てる。プロレスがやってるんだ」
ちょうど大柄な男が相手にひざげりを繰り出しているところだった。
「プロレス?めずらしいわね、あなたがプロレスを見るなんて」
「そうかな?結構おもしろいんだ。G1ていう大会らしいんだけど」
大柄な男は高山という名前らしい。素人目から見てもこちらの男の優位はあきらかだった。
「そう。ところで今日は何の日か知ってる?」
相手の男にはどうしても負けられない理由があるらしい。蝶野という名前だ。
「わからないな。ねえ、蝶野ってレスラー知ってる?」
「しらないわよ、そんな人。これから出てこない?」
蝶野は相変わらずおされていて、それが僕をハラハラさせていた。
「わるいけど・・・」
「ねえ、大事な話があるのよ」
「わるいんだけど、今目がはなせないんだ」
「プロレスってわけね」
これは本当だった。信じられないけれど本当に目がはなせなかったんだ。
「わかったわ・・・あなたっていつもそうね。・・・ウソツキ」
僕はいつもこうらしい。ただ今日は、本当に目がはなせなかったんだ。
10 :
HELMUT:02/09/22 14:03 ID:8+t9pAIc
僕はプロレスについての多くを佐々木健介に学んだ。
殆ど全部、というべきかもしれない。
不幸なことに佐々木健介自身は全ての意味で不幸なレスラーであった。
見ればわかる、試合は見辛く、組み立ては出鱈目であり、技は稚拙だった。
しかしそれにもかかわらず、彼はプロレスを武器として闘うことができる数少ない
非凡なレスラーの一人でもあった。
武藤、橋本、蝶野、そういった彼の同時代人のレスラーに伍しても、佐々木健介の
戦闘的な姿勢は劣るものではないだろう、と僕は思う。
ただ残念なことに彼佐々木健介には最後まで自分の戦う相手の姿を明確に
捉えることはできなかった。結局のところ、しょっぱいということはそういった
ものなのだ。
11 :
ムルアカ ◆2GETDbPA :02/09/22 14:04 ID:DzmKOHfk
(・∀・)
12 :
お前名無しだろ:02/09/23 07:05 ID:Vf97xptB
「私が間違っていたと思う?」彼女がそう訊ねた。
僕はビールを一口飲み、ゆっくりと首を振った。「はっきり言ってね、みんな間違ってるのさ。」
「何故そう思うの?」
「うーん。」僕はそう唸って考えるふりをした。答えなど無かった。
「私は武道館まで行って腕がもぎとれるくらい一生懸命に武藤を応援したのよ。
とても苦しくて死ぬかと思ったわ。それでね、何度も何度こんな風に考えたわ。
私が間違っててあなたが正しいのかもしれないってね。
私がこんなに苦しんでるのに、何故あなたは何もせずにテレビの前で新日を見てるんだろうってね。」
彼女はそう言うと軽く笑って、しばらく憂鬱そうに目の縁を押さえた。
僕はあてもなくポケットを探った。3年ぶりに無性に煙草が吸いたかった。
「僕も武道館へ行けばいいと思った?」
「少しね。」
「本当に少し?」
「・・・忘れたわ。」
二人はしばらく黙った。僕はまた何かをしゃべらなければならないような気がした。
「ねぇ、力があるからチョーノー力。」
「誰の言葉?」
「アントニオ猪木。」
13 :
お前名無しだろ:02/09/23 07:10 ID:+cPFVwST
>>1 ただ1つ言えることは
タバコを地面に捨てるようなクソ女は死ね!!!
ということだ
14 :
お前名無しだろ:02/09/23 07:59 ID:qsA7/VfG
大昔にこんなスレがあったような気がする。
15 :
新日本は腐ったミカン ◆bAf7Dym6 :02/09/23 08:42 ID:ftqnk5wK
SEX
「やれやれ、なんだって総合格闘技が好きな連中は形而上的に強さを
証明して見せなければ気が済まないんだ」とひとり呟きながら僕は
レモンドロップを口にした。
------突然、電話の呼び出し音が為った。
「強さを"演出"してきたツケを払う時が来たのよ」
と聞き覚えのない女の声が冷静に真実を告げた、そうまるで朝になれば
ニワトリが鳴きますよ、とでも言いたげな当たり前の口調で。
僕は朝からロシア文学みたいな憂鬱を味わう事になる。
プロ格が脚本をひた隠しにしてきたツケが払う時…………
ていうのは無いかW
K-1とかPRIDEってェのはアレだねぇ~ショーの部分を見せるのがヘタだねぇ~
20 :
HELMUT:02/09/23 10:35 ID:QRnpqkLq
小島のラリアットプロレスについては西村は常々批判的であった。
もちろんラリアットについては問題はないが、と彼は述べている。
そこには宇宙の観念が欠如しており、そのために試合は実に
ちぐはぐな印象を私に与える、と。
「宇宙の観念」という言葉を彼が使う時、それは大抵「無我」を意味した。
彼が一番気に入っていた技は「俺ごと刈れ」である。
「ねえ、君。相手を倒すために自分が刈られるなんて信じられるかい?」
と彼は言った。
♪ノアの杉浦はイカしてる
ファッションだって御機嫌さ
全日のカシンの歩き方、しゃべり方
うん、ノックダウンだね
フリーのやさしい高山
ハートにぐっときちゃうのさ
高田道場のかっこいい高田
君をうっとりと暖めてくれる
素敵なプロレスラーがみんな
プライド最強だったらね・・・♪
やれage
23 :
お前名無しだろ:02/09/25 23:17 ID:hqpvDOo7
それage
面白い!よく文章真似られるなー
作家さん応援あげ
26 :
:02/09/26 00:56 ID:nu/V9AAK
あれー?今日は職人さん来てないのか・・
残念
このスレ好き?。
保守
「楽しかった?」とハツミさんが僕に訊いた。
「プロレスのことですか?」
「そうよ、ドームに行ってきたんでしょ?」
「べつに楽しくはないです」と僕は言った。
「ただ見るだけです。プロレス観戦したってとくに何か楽しいと感じることがあるわけじゃないです」
「じゃあ何故プロレスを見てるの?」 不思議そうな顔をしてハツミさんが僕に訊いた。
「俺が誘うからだよ」と永沢さんが言った。
「私、ワタナベ君に質問しているのよ」とハツミさんはきっぱりと言った。
「どうしてそんなことするの?」
「ときどきプロレスが見たくなるんです」僕は言った。
「わけがわからないわ。プロレスを見ないというわけにはいかないの?」
とハツミさんは少し考えてから言った。
「複雑な事情があるんです」
ハツミさんはため息をついた。
「あのね、ワタナベ君、どんな事情があるかは知らないけれど、
そういうのってあなたには向いてないし、ふさわしくないと思うんだけれど、
どうかしら?」とハツミさんは言った。彼女はテーブルの上に手を置いて、じっと僕の顔を見ていた。
「そうですね」と僕は言った。「自分でもときどきそう思います」
「じゃあ、どうしてやめないの?」
「ときどき、なつかしくなるんです」と僕は正直に言った。
「昔のことを思い出すと、ときどきたまらなく淋しくなるんです。
そして、それを求めてまた見てしまうんです。」
「要約するとこういうことだと思うんだ」永沢さんが口をはさんだ。
「ワタナベはプロレスに対してなにか見えない壁があるんだよ、事情があって。
事情というのは、最近、暴露本が出版されてね、
まあファンとしてはいろいろと悩まされることが書いてあったんだ。
それ故、プロレスはプロレスとわりきって・・・
わりきろうとして観戦しているわけだよ。でも、わりきれずに求めてしまうのさ。そういうもんだよ。
だからプロレスを見る。ドームへ足を運ぶ。
それでかまわないじゃないか。話としてはまともだよ。
否定したところで、部屋にこもってずっと2ちゃんねるやってるわけにはいかないだろう?」
やれやれ
今度は夏目漱石でやってみてよ
正直な感想
>>29 はちょっと村上春樹っぽくはないかも。
「他の男とはプロレスを見ないの?」と僕はある時彼女に質問してみた。
「もちろんよ」と彼女は言った。「みんな私がプロレスに興味あることすら知らないんじゃないかしら」
「プロレスを見ない時のセックスってどんなものなの?」
「とても義務的なものよ。まるで新聞紙をかじってるみたいに何も感じないの。
でもいいのよ、義務を果たすのって、それはそれで悪くないから」
「でもプロレスを見た時のはずっとすごいんだろ?」
「そうよ」
「じゃあ見ればいい」と僕は言った。「なにもわざわざつまらない思いをすることはないじゃないか」
彼女はまじまじと僕の顔を見つめ、それからため息をついた。
「あなたって、本当に何もわかっていないのね」
36 :
安田:02/09/26 14:02 ID:???
格闘プロレスというのはひとつの大きな転換点であって、それは何かを取り、何
かをあとに置いていくことなのだ、と。そして、その物理的な組み替えが終
わってしまったあとでは、好むと好まざるとにかかわらず、もうあともどり
はできないのだ。試してみたけれどやはり気に入らないので、もう一度以前
の状態に復帰します、ということはできないのだ。それは前にしか進まない
歯車なのだ。僕は漠然とそう感じていた。
オープンフィンガーグローブをつけることはそれほど怖くはなかった。グローブをつけることは僕の責任ではな
い。誰だってグローブはつける。それは仕方のないことなのだ。僕が怖かったのは、
あるひとつの時期に達成されるべき何かが達成されないままに終わってしま
うことだった。それは仕方のないことではない。
37 :
安田:02/09/26 14:05 ID:???
もちろん、何をしていようと、プロレスはだらだらとマンネリになってしまうものだ。新
日にいようが、ノアにいようが、どこでも同じだ。マンネリになるというこ
とはそういうことだからだ。そして逆の言い方をすれば、だ
らだらとマンネリになるからこそ、レスラーはまだなんとか正気を保ってい
られるのだ。
そういう時にいちばん大事なのは集中力である。そしてその集中力をでき
るだけ長く持続させる力である。そうすれば、ある時点でそのつらさはふっ
と克服できる。それから自分を信じること。自分にはこれを完成させる力が
有るんだと信じること。
38 :
安田:02/09/26 14:07 ID:???
プロレスというのはそういうものだ。その状況の向こうにいるファンの姿がき
ちんと見えていれば、大抵のことには我慢ができる。逆にそれほど悪くない
状況に身を置いていても、ファンの姿が見えてこないと苛立つし、不安になる。
・・・・・・
これじゃまるで根無し草みたいだな、と僕は思った。格闘技にすり寄ってはう
んざりされて女子レスラーと戦い、女子レスラーに行ってはうんざりされて魔界倶楽部に行く。
でもまあいいじゃないか、と僕は思う。あっちに行ったりこっちに行った
りしちゃいけないという法もないんだ。
39 :
安田:02/09/26 14:10 ID:???
この三年間の意味はいったい何だったんだろうと僕は思う。何やかやあっ
てもとの見せ物に戻ってきただけじゃないのだろうかと思うこともないでは
ない。
僕はいわば失われた状態でこの新日を出ていった。そして一年近くたって戻
ってきた今もやはりその時と同じように失われているように見える。無力感
は無力感として、疲弊は疲弊として残っている。ただ単に観客が減っただけで
何ひとつ解決されてはいないのだ。
でもこうも思う。もう一度ふりだしに戻れただけでもまだいいじゃないか、
もっとひどいことになる可能性だったあったんだ、と。
そう、僕はどちらかというと楽観的な人間なのだ。
言いたいことは理解出来ないが凄く雰囲気出てる
垂直落下式ノルウェーの森 炸裂!!!!
誰か田中康夫でお願いします。
43 :
お前名無しだろ:02/09/27 23:50 ID:Q2Mh3ZDH
要望あげ
44 :
お前名無しだろ:02/09/27 23:58 ID:ORB1rLW4
「他の誰とも寝なかったの?」
と直也は訊ねた。
「寝なかったよ」
と真也は言った。
「じゃあ、これも覚えていてね」と直也は言って体を下にずらし、真也のペニスにそっと唇をつけ、それかたあたたかく包み込み、舌をはわせた。
46 :
お前名無しだろ:02/09/28 22:22 ID:tGLEr14i
「何故総合格闘技が嫌いだと思う?」
その夜、彼女はそう続けた。そこまで話が進んだのは初めてだった。
わからない、といった風に僕は首を振った。
「はっきり言ってね、総合格闘技をする人たちは何も考えていないからよ。」
はっきり言って、というのが彼女の口癖だった。
「そう?」
「うん、あの人たちは大事なことは何も考えないの。考えてるフリをしてるだけよ。・・・何故だと思う?」
「さあね?」
「必要がないからよ。ただ相手のことを叩き潰せばいいだけだからよ。でもね、プロレスラーはそうじゃないわ。生き残るためには考え続けなくちゃならないの。明日の試合展開のことから、新しい必殺技の名前までね。」
「ああ。」と僕は言った。
「そういうことよ。」
彼女はしゃべりたいことだけをしゃべってしまうと、ポケットからタバコを取り出しつまらなそうに火を点けた。彼女がいったいどこまで真剣なのか、僕にはうまく把めなかった。
「でも総合格闘技をするプロレスラーだっている。」僕は試しにそう言ってみた。
「それはそうよ。みんな生き残るために必死なの。いろんなことを考えながらプロレスをするのは、はっきり言って何も考えずに総合格闘技をするよりずっと疲れる。そうでしょ?」
そのとおりだった。
深いね、どうにも(w
このスレ面白いよー。
49 :
ムルアカ ◆2GETDbPA :02/09/28 23:07 ID:GvYr7E9e
(・∀・)
50 :
お前名無しだろ:02/09/28 23:38 ID:hFLC+21T
プロレス
プロレスと何度も口の中でくりかえしていると
それはある瞬間から
プロレスではなくなってしまうような気がすることがある。
それはもう八百長を楽しむ格闘技ではなく
実体を失った
ちょうど夢のしっぽみたいな形の
もとプロレスというただのことばの響きでしかない
そんなただのことばの響きを観に行くとたのしいよ
51 :
お前名無しだろ:02/09/28 23:40 ID:272Rbdli
やれやれ
もしかして
>>3は村上龍とガチで勘違いしているのか?と亀レスしてみる。
「健介の話をしよう」と僕は言った。「どうも気にかかるんだ」
二人は肯いた。
「なぜ死にかけているんだろう?」
「塩分を取り込みすぎたのね、きっと」
「ヴァアしちゃったのよ」
僕は左手にコーヒーカップを持ち、右手にに煙草を持ってしばらく考え込んだ。
「どうすればいいと思う?」
二人は顔を見合わせて首を振った。「もうどうしようもないのよ」
「パワーウォリアーに還るのよ」
「敗血症の永田を見たことある?」
「いや」と僕は言った。
「ミルコのハイキックで石のようにダウンするの。試合開始のほんの短い時間でね。最後に心臓が停まるの」
僕はため息をついた。「死なせたくない」
「気持ちはわかるわ」と一人が言った。「でもきっと健介には荷が重かったのよ」
それはまるでプロレスでガチはNOAHだけだからあきらめなさい、とでも言う時のような実にあっさりとした言い方だった。
僕はあきらめてコーヒーを飲んだ。
>>53 >それはまるでプロレスでガチはNOAHだけだからあきらめなさい、
>とでも言う時のような実にあっさりとした言い方だった。
ここだけ惜しいな・・・
55 :
お前名無しだろ:02/10/01 00:53 ID:n6Ad+ytj
「ねえ、プロレスラーって本当は強いと思う?」と突然彼女が言った。
「プロレスラー?」僕は呆然として彼女の顔を見つめた。
「プロレスラーって、あの全日とか新日とかの・・・?」
「そう、本当は強いと思う?」
「プロレス的な強さとか、メタファーとしてのプロレス最強とかじゃなくて、実際の強さ?」
「もちろん。」
「わからないな。」と僕は言った。「わからないよ。」
「わからないじゃ困るのよ。強いか強くないか、どちらかにしてよ。」
「強くない。」と僕は言った。
「総合格闘家はどう?強いと思う?」
「総合格闘家は強いような気がするな。」
「気がするじゃなくて、イエスかノーで答えて。」
「イエス。」と仕方なく僕は言った。「強いよ。」
「それなら、プロレスと総合格闘技の強さの違いっていったいなんなの?」
僕はポケットから煙草をひっぱり出して口にくわえ、火をつけないまま唇の上で転がした。
「総合格闘技というのはつまり現実的強さを軸にする価値転換だな。」と僕は口からでまかせを言った。そういうのはとても得意なのだ。
「ふうん。」
「しかしプロレスというのは、強さ対するアンチ・テーゼだ。」
「つまり価値転換は認めるけど、アンチ・テーゼは認めない、って訳ね。」
「ややこしいものを認めるとキリがないからさ。」
「でもね、本当に強いプロレスラーがいたらどうする?」
「参っちゃうだろうね。」
「それだけ?」
「いけないかな?」
「いけないわよ。信念というものはもっと崇高なものなの。山があると思えば山がある、山がないと思えば山はない。」
僕は火のついてない煙草をくわえたままため息をついた。やれやれ、なんだかドノヴァンの古い歌みたいだ。
あげ
>>55 これ吸血鬼のやつっすね。なんていったっけ…
>>10,12,20
腹痛いくらい笑いました。
こんなに笑ったの久しぶりです。
このスレは長く続いてほしいなぁ。
59 :
サニービーチ:02/10/01 13:38 ID:AfbgT5B3
僕がアパートに帰ると双子はオイルサーディンのような形に
並んでベッドにもぐりこんだままクスクス笑い合っていた。
「おかえりなさい」と片方が言った。
「何処に行っていたの?」
「ディファ有明さ」と僕は言ってネクタイをゆるめ、双子の間に
もぐりこんで目を閉じた。ひどく眠かった。
「何処の団体?」
「メインは何だったの?」
「ノアさ。GHCのタイトルマッチだった」
「どんな試合?」
「ノアは好き?」
「頭から落ちる技ばかりだったな。でもノアがそれほど好きな
わけでもないんだ」
僕が煙草に火を点けて吸い終わるまでの間、二人は黙っていた。
「悲しいの?」と片方が訪ねた。
僕は黙って肯いた。
「お眠りなさい」と片方が言った。
そして僕は眠った。
たのしいのであげ
巡回上げです
「プロレス内ガチなんて存在しない。わざと打たせるピッチャーがいないようにね」
僕が大学生のころ偶然知り合ったゼロチューは僕に向かってそう言った。
僕がその本当の意味を理解できたのはずっと後のことだったが、少なくとも
それをある種の慰めとしてとることも可能であった。プロレス内ガチなんて
存在しない、と。
しかし、それでもやはりプロレスを見るという段になると、いつも絶望的な気分に
襲われることになった。僕が楽しめる領域はあまりにも限られたものだったからだ。
例えばジョニーローラーに興奮できても、小川良成のサミング、あご砕きに興ざめ
してしまうかもしれない。そういうことだ。
8年間、僕はそうしたジレンマを抱き続けた。--8年間。長い歳月だ。
もちろん、UWFのビデオを見続ける限り、プロレスに幻想を持ち続けるのはそれほど
苦痛ではない。これは一般論だ。
20歳を少し過ぎたばかりの頃からずっと、僕はZERO-ONEしかみないように努めてきた。
おかげでプレデターから何度も追い回され、変な踊りを和牛太と踊り、また同時に多くの
不思議なマッチメイクも見た。様々な外人がやってきて話題を提供し、俺ごと刈られ、
まるでホットスタッフヘルナンデスのように二度と戻っては来なかった。僕はその間
ノアオタの煽りにじっと口を閉ざし、何も語らなかった。そんな風にして僕は2002年
最後の興行を迎えた。
やれやれ、あげとくか。
今、僕は信じようと思う。
もちろん問題は何ひとつ解決していないし、
信じきれた時点でもあるいは事態は全く同じということになるかもしれない。
結局のところ、プロレス内ガチを信じることは最高教へちかづく手段ではなく、
最高教へちかづくささやかな試みにしか過ぎないからだ。
しかし、信じることはひどくむずかしい。僕が信じようとすればするほど、
ノアの経営は闇の奥深くへと沈み込んでいく。
弁解するつもりはない。少なくともここに語られていることは現在の僕におけるベストだ。
付け加えることは何もない。それでも僕はこんな風にも考えている。
うまくいけばずっと先に、何年か何十年か先に、救済されたノアを発見する事ができるかもしれない、と。
そしてその時、三沢はプライドのリングに立ち僕はよりプロレス内ガチを信じ始めることだろう。
>>62 >>64 >>10 8年と2ヶ月、健介はそのしょっぱい闘いを続けそして失踪した。
2001年8月のある晴れた日曜日の朝、頭を丸め、両手に
オープンフィンガーグローブをつけたまま36秒でVTデビュー戦を
勝利で飾ったのだ。彼がプロレスをしていたことと同様、VTをしたことも
たいした話題にはならなかった。
僕がUFOに所属したままの小川の試合を偶然見に行ったのは股の間に
ひどい皮膚病を抱えていた中学三年生の夏休みであった。僕にその試合を
提供してくれた橋本は3年前に長州のアングルを患い、小川にボコボコに
殴られ、負けたら引退スペシャルを組まれたままSTOをくらい続けて引退した。
ZERO-ONEを旗揚げした時、彼はまるで狡猾な豚のようにひどく赤茶けて
太っていた。
☆
猪木には全部で三人の弟子がいたが、一人はスタッフを引き連れて
新日を離脱した。全日との対抗戦の2ヵ月後に元子の誘惑に負けたのだ。
ただ一人新日に残った蝶野は現場監督になって全国の地方都市を
巡業している。
雪崩式あげ
68 :
お前名無しだろ:02/10/04 10:43 ID:owEDA3Xl
保守
テロリストも実は意外と繊細だったんだね
サニービーチおもんない
俺は62とか好きだけど…
73 :
70:02/10/06 07:04 ID:???
そっか。じゃあサニービーチ頑張れ。
三沢光晴が良いプロレスについてこんな風に書いている。
「プロレスとは、とりもなおさず自分と自分をとりまくノアオタとの距離を
確認することである。必要なものはガチではなく、今風だ」(「マットが
ふわふわで何が悪い?」1999年)
三沢が今風を片手に恐る恐る全日を辞めたのは確かジャイアント馬場が死んだ
翌年で、それからもう2年にもなる。2年かけてノアは実にいろんなものを放り
出してきた。まるで小学生の仲間はずれのように川田と渕を放り出し、垣原を
放り出し、ZERO-ONEを締め出し、そして最後にはあわれな大森を放り出した。
2年の間ノアはありとあらゆるものを放り出し、そのかわりに殆んどファミ悪は
放り出さなかった。
それが果たして今風だったのかどうか、僕には確信はもてない。つまらなく
なったことは確かだとしても、年老いて三沢や小橋がリングにたてなくなった
時に一体ノアで誰がトップになっているのだろうと考えるとひどく怖い。
ワイルド2ではファンひとり残りはすまい。
もっといろいろ読みたいなぁ。
サニービーチ以外の職人の方もがんばって!!
こんな、夢を見た。
男が一人で座って居る。
その手に封筒を握りしめ、紅潮した頬を泪が伝って居る。
私は彼の前に立っている。だうも私にとつて彼は大層厄介な人物のやうだ。
しきりに心中で「嗚呼、厄介だなあ」と思ってしまふ。
「細君が北斗星」
先刻より男はその台詞を繰り返す。
私は男の封筒に書ひてある文字を読みたくて首を伸ばすが、指が邪魔でそれは読めない。
「ああ、あれは辞表と読むのだらう」
隣の男が私に伝えてくれた。その男には角が生えていて全身が紅をひいたやうな赤である。
その時私は不意に、ああこの辞表の男と私は拳闘の誓ひをしたのだな、と思った。
男は泣き続けている。
78 :
:02/10/08 00:07 ID:wHPa2LDL
「誰かを巻き添えにして負けることは、アンダーテイカーの試合のオプションの中にはない」
「そのとおり」
>>62 >>64 >>10 >>65 >>66 >>74 「プロレスラーは膝ばかり痛める。もっと悪いプロレスラーは膝さえも痛めない」
死んだ祖母はいつもそう言っていた。
馬場が死んだ夜、三沢がまず最初にしたことは、自分名義の借金をそっと
会社名義にしてやることだった。三沢が離脱すると同時に、馬場が27年間
育て続けた全日はまるで舗道に落ちた夏の通り雨のように静かに消え去り、
後にはハゲしか残らなかった。
↑
すげえ!(w
10月14日のある晴れた昼に
100パーセントのプロレスラーに出会うことについて
82 :
お前名無しだろ:02/10/09 07:56 ID:EbS7kGqx
10月14日の晴れた昼、水道橋の東京ドームで僕は100パーセントのプロレスラーに遭遇する。
>>62 >>64 >>10 >>65 >>66 >>74 >>79 もう一度プロレスについて書く。これで最後だ。
僕にとってプロレスを観るのはひどく苦痛な作業である。1ヶ月間すべての試合を
早送りで観ていることもあれば、三試合連続で観た挙句それがみんな見当違い
といったこともある。
それにもかかわらず、プロレスを観ることは楽しい作業でもある。総合格闘技の
困難さに比べれば、日本人が活躍するのはあまりにも簡単だからだ。
十代の頃だろうか、僕はその事実に気がついて一週間ばかり口もきけないほど
驚いたことがある。少し気を利かせさえすればプロレス界は猪木の意のままになり、
あらゆるレスラーはPRIDEでも活躍し、格オタもプロレスを認める……そんな気がした。
それがアングルだと気づいたのは、不幸なことにずっと後だった。僕はノートの
まん中に1本の線を引き、左側に納得できるものを書き、右側に納得できない
ものを書いた。納得できないもの、ロープの反動、4秒でやめてしまう反則カウント、
トップロープからの攻撃に気がつかないレスラー、お約束のような同士討ち……僕は
それらを最後まで書き通すことはできなかった。
僕たちがプロレスについて持っている幻想と、実際のプロレスラーとの間には
深い淵が横たわっている。いくら高橋の暴露本を読んでもその深さを測りきることは
できない。僕が好きで観ているのは、ただのプロレスだ。スポーツでも真剣勝負でも
なければ、格闘技でもない。まん中に線が1本だけ引かれた一冊のただのノートだ。
セメントなら少しはあるかもしれない。
もしあなたが格闘技や真剣勝負を求めているのならK-1やPRIDEを観ればいい。真の
格闘技が生み出されるためには興行会社が不可欠だからだ。ランペイジジャクソンが
そうであったように、森下が見つけ出し、ホームレスアングルを作り、首からかける
鎖を用意し、そしてその間にジャクソンはLAの太陽の下で柔術に耽り、レスリングに
取り組む。真剣勝負とはそういったものだ。
夜中の3時に寝静まった街で若手と焼肉を貪るような人間には、それだけの試合しか
見せることはできない。
そして、それがプロレスだ。
「あの、あなたプロレスって楽しめないでしょう?」
「ええ、プロレス楽しめないです。3分くらいで忍耐力に限界がきちゃいます。」
「僕はプロレスファンですから、あなたとは逆に測定できないものをいちばん
大事に思っているわけです。もちろん僕は格闘技ファンの生き方や考え方を
否定しているわけじゃありません。否定でもなく肯定でもない、いわばニュー
トラルな立場でお話をうかがっているわけです。しかし世の中の人々が送っ
ている人生の大部分は、測定できない雑多なものごとで成り立っているわけ
です。それを根こそぎ測定可能なものに変えていくというのは、現実的に不
可能なことでしょう。」
「ええ。そういうエンターテインメントが無価値だと思っているわけではない
ですが、ただプロレスを見ていると、あまりにも納得できないものが多いとい
うふうに感じるんですよ。納得できないなものを、リングの上にどんどん増
やしている。たとえばロープに振られたら戻ってくるとか、技をあえて受ける
とか。」
「PRIDEやK-1がやったのは、そういう測定不可能な要素をどんどん減らし
ていって、それによって観戦する人間の考える力を奪っていくということで
す。プロレスファンから見た格闘技のイメージは九九パーセントまでそれ
です。アングルとブックの見方。それに対する邪推やツッコミ。内側から見
れば、これらのセットがプロレスなんです。因縁の対決がどうこうとか、軍
団抗争がどうこうというのは、マスコミの描くプロレスです。私のまわりでは
アントニオ猪木が話す『リングの上の闘い』について真剣に考えている人間
なんていません。ああいうレベルのことでは、誰も納得なんかしません。」
「私がやりたいのは関節技とか打撃とか、そういう格闘技的要素をひとつ
ひとつ、少しでも競技として体系化していくことです。たとえばブラジルな
んかに行けば、それを生活の中で頭からしっかりと身に付けている人たち
がたくさんいますね。でも先進国の人たちがそういうものを理解して納得し
て受け入れるには、しかるべき理論化が必要な時代になってきていると思
うんです。」
おもしろいのでage
88 :
お前名無しだろ:02/10/12 18:55 ID:3y+tPrsI
77は太宰っぽいね
90 :
88:02/10/13 02:57 ID:???
ああ,そうかぁ!そうだよね.夢十夜だね.
さすが漱石は上手い文章を書くね.
77も良い文章だ.健介を好きになったよ.
明治文豪プロレス
92 :
お前名無しだろ:02/10/14 23:26 ID:wlJc0UER
三年つきあって結婚を約束していた恋人がノアヲタ化して、それでわれわれの中が
ぎくしゃくしてしまった頃―――いったいどこの誰がノアヲタ化した恋人とうまくやって
いけるだろう?―――僕は毎晩のように酒場で飲んだくれて、バーリ・トゥードで秒殺
されたケンドー・ナガサキみたいにげっそりやつれていた。
「お兄さん、お願いだから彼女のことはあきらめて」と妹が忠告してくれた。「ノアヲタ化
したものはもうもとには戻らないわ。もうはっきりとカタをつけなきゃいけないわよ。そう
でしょ?」
たしかにそのとおりだ。妹が言うように、一度ノアヲタ化したものは永遠にノアヲタ化し
たままなのだ。
僕は恋人に電話をかけてさよならを行った。「君と別れるのはつらいけど、でも結局こ
うなる運命だったんだね。君のことは一生忘れないよ・・・云々」
「あなたはまだわからないの?」ノアオタ化した恋人は言った。「ノアのプロレスは本当
なのよ。ノアだけはガチなの。どうしてあなたは三沢さんのエルボーの凄さをしっかり
見据えようとしないの?どうして井上雅央の幼児体形部分にばかり目がいくの?」
どうして?と質問したいのは僕の方だった。どうしてノアヲタ化した人々はそのように
偏狭な考え方しかできないのだ。
しかしとにかく、そのようにして、僕は恋人と別れた。
>92
その恋人はノアヲタなのに雅央は嫌いなのか?
あなたが新日から得られるものは殆ど何もない。似て非なるプロセスに置き換えられたPRIDEもどきだけだ。
失うものは実にいっぱいある。歴代K-1王者の銅像が全部建てられるぐらいの銅貨と
(もっともあなたにボブサップに負けたアーネストホーストの銅像を建てる気があればのことだが)
取りかえすことのできぬ貴重な時間だ。
あなたが東京ドームで孤独な消耗を続けているあいだに、あるものはヤオガチ論に引き付けて
「あずまんが大王」を読み続けているかもしれない。
またあるものは場末感漂う漫画喫茶で2ちゃんねるを眺めながらプロレスにモー娘。を当て込んだ痛々しい
プロレス論を書き込んでいるかもしれない。そして彼らは時代を洞察する同人作家となり、あるいは幸せな引きこもり
となるかもしれない。
しかし新日はあなたを何処にも連れて行きはしない。リプレイ(遺恨試合)のゴングを鳴らすだけだ。
リプレイ、リプレイ、リプレイ・・・、まるで新日そのものがマンネリ化を目指しているようにさえ思える。
マンネリ化について我々は多くを知らぬ。しかしその影を推し量ることはできる。
新日の目的は格闘技にあるのではなく、格闘技を模した茶番にある。人気の拡大ではなく、人気の縮小にある。
プロレスにではなく、WWEの劣化コピーにある。
もしあなたが格闘技や人気の拡大やプロレスを新日に求めれば、あなたは会場で新日のヤングライオン達に容赦なき
報復をうけるだろう。
ハヴ・ア・ナイス・ゲーム
ネタスレ中に正直スマン。
昔、芦屋大学で村上春樹が朗読会をやった時に、少し話を
したよん(ヤクルトスワローズの話)
あの時は坂口征二にサインをもらった時より緊張したな。
パンクラス再襲撃
そんなに簡単にプロレスは消えないのよ
99 :
お前名無しだろ:02/10/18 13:03 ID:H8Bf9tU9
age
100 :
キリ番ゲッター:02/10/18 14:18 ID:D8FupvoI
100
>98
ワロタ
そんなに簡単にこのスレは消えないのよ