【イタ】イタリアについて話そう37【スレ】

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731アナル作家 ◆ANALmoEo1s
スナック『イタスレ』の日の出  その1

「もう、本当にいやんなっちゃうわ!」
そう言い捨てるとたきーのは帳簿を床に叩きつけた。

「ただでさえ戦争だの、SARSだの、ってここまで足を運んでくれる
お客様が減っちゃったのに、挙句の果てには店子までこの調子!
あたしの体の具合なんか二の次なんだから!みんな、義理人情の
かけらさえないのね!!」
かれこれ1ヶ月にはなろうとしていた。
最近、お客もめっきり減って商売上がったりなのだ。
老舗のスナック『イタスレ』は半年あまり続く厨の嫌がらせ、そして
2ちゃん側の串規制などでどんどん人が減っていた。
ついにはこんな店にいては生活していけない、と店子のコテハンたちも
一人消え、二人消え・・・・。今いる店子はわずか数人。
往年のスナック『イタスレ』全盛時代の影さえ見当たらない。

「まあまあ、そう、カッカするなよ。たきーの。」
洗い物を終えたうすどんが慰める言葉ももう、力がない。

「だって・・・・。」

床に叩きつけられた帳簿は真っ赤だった。
732アナル作家 ◆ANALmoEo1s :03/04/23 08:24
スナック『イタスレ』の日の出  その2

「うすさん、ブロードで使った骨、捨ててないわよね!」
たきーのの趣味はブロードを作った鶏の骨でアクセサリーを作ることだった。
客も来ない今、暇をもてあますたきーのは店の中でショッチュウこの
アクセサリーを作っていた。

「ママ、もう、やめてよ!店の中でそれ、作るの!!
その匂いが充満するとただでさえ憂鬱な気分なのにもっとすさんだ気分に
なっちゃうわ!」

米粒が叫ぶ。
残った店子の一人だ。

「ママ、私も話があるんだけど・・・。」

たきーのがキッ、と米粒を睨みつけた。
「何?!あんたも出て行く、っていうの!!?」
そう、叫ぶと着物のすそを乱しながらたきーのは踵を翻し、
厨房の奥へと引っ込んでしまった。

「ママ・・・・。」
一人残された米粒は悲しい表情のまま、誰も使わなくなったカラオケの機材の
前で立ちすくんだ。
733アナル作家 ◆ANALmoEo1s :03/04/23 08:24
スナック『イタスレ』の日の出  その3

「もう、飲まずにはいられないわっ!!!」
下戸であるたきーのはそういうと、ジン抜きのジントニックを一気飲みした。

(ゲフ)

かなりイライラが溜まっているたきーのは柄にも無く大きなゲップをした。

「俺も飲むかな。ママに付き合うよ。」
そういうと、板前のうすどんはサーバーから生ビールを大ジョッキに注いだ。

冷えたビールをノド仏を鳴らしながらジョッキの半分くらいまで飲み干すと
ダン、とまな板の上にジョッキを置いた。

(ゲフ)

・・・・・・・・・・。(ブッ)
「お、下からも出たか!」

「プッ!」
眉間に皺を寄せていたたきーのが思わずうすどんのおならで笑ってしまった。

こういうことが出来るのはうすどんをおいて他にはいない。
734アナル作家 ◆ANALmoEo1s :03/04/23 08:24
スナック『イタスレ』の日の出  その4

「うすさん、あたしね、この店、たたもうかと思ってるの。」
たきーのは笑い泣きの表情でうすどんをまっすぐに見据えた。

「・・・・・・・・・。」
うすどんは言葉もなく、またビールを飲んだ。

「ねぇ、あたしの気持ち、わかるでしょ?」

「ママ・・・・・。」
米粒が扉の端から顔を出す。
「ママ、この店、なくなっちゃうの?本当に?」

「米粒・・・・・。あんたも一杯やる?」
そういうとたきーのは簡易ワインセラーの扉を開けた。

「あら?二本なくなってる!今日なんか、誰もワインオーダーしなかったわよね?」
几帳面なたきーのは何がどこにいくつあるか、いつも頭の中にインプットされている。
セラーの中を見ただけでその数が違う事がわかるのだ。

「またか。」
うすどんがつぶやいた。
735アナル作家 ◆ANALmoEo1s :03/04/23 08:24
スナック『イタスレ』の日の出  その5

「うすさん、この頃ワインのボトルがすごくなくなるワケ、知ってるの?
あたし、うすさんが料理に使ってると思ってたんだけど、無くなるのが
いいものばっかりだったから一言聞こうと思ってたのよ。」

「・・・・・・・此処未だよ。」

「!!!!!!!」

その名前はこのスナック『イタスレ』では今や禁句となっていた。
うすどんの一言で店の中に緊張感が走った。
一ヶ月ほど前から店子の一人、此処未は黙ってたびたび休みを取るようになった。
それを叱りつけるお姐さんも今ではお手上げ状態。
それでもここが好きなのか、顔は出していた。
此処未が半アル中状態なのは今に始まった事ではないが、
最近酒の量がかなり増えているのは皆も承知していた。

悪気はないのだろう。
知らぬ間に手を出していたのかもしれない。
736アナル作家 ◆ANALmoEo1s :03/04/23 08:26
スナック『イタスレ』の日の出  その6

「親友のふぃーみんがいなくなっちゃったからな。
頼れるものは酒だけになっちゃったんだろ。」
再びサーバーからビールを注ぐうすどん。
「まあ、アル中なのは俺も変わんないけどな。」

「どうしちゃったんでしょうかねー。こっこみさん。」
沙者も奥から顔を出した。

「・・・・・・あたし、思い当たる節があるの。」
たきーのが口を割った。

「え?ママ、何か知っているの?」
米粒が身を乗り出す。

「ちょっとね。」
そういうと、食器棚の中から一枚の小皿を手にとって見せた。

「その、小皿・・・・・?」
その小皿はお通しに使う小皿だった。
737アナル作家 ◆ANALmoEo1s :03/04/23 08:26
スナック『イタスレ』の日の出  その7

「この小皿に、ひじきの煮つけを出してわよね。・・・・・・。
今はもう、誰も作ってくれないけど。
・・・・・此処未、ひじきの煮つけが好きだったわ。」

「名無しさんが作ってくれたんですよね。私も好きだった。」
「私はローマさんのすきやきも好きだったなー。」
「沙者、今はひじきの話してんだぞ!」
うすどんの突っ込みも今は悲しいだけだ。

「思えば・・・・、あのひじきの煮つけが無くなったのが
とっても寂しかったんだと思うわ。」
小皿を手にして、たきーのは遠くを見つめていた。

バタン!
その時、誰かが表のドアを乱暴に開けて入ってくる音が聞こえた。

「誰かしら?こんな時間に。
・・・・・・もう、閉店ですよ!!・・・・あ!!」

入り口には此処未が立っていた。
738アナル作家 ◆ANALmoEo1s :03/04/23 08:26
スナック『イタスレ』の日の出  その8

髪の毛を振り乱した此処未は空のボトルを持って戸口に立っていた!

「此処未タン・・・・・。」
近づいた米粒を振り払い、此処未は一直線にワインセラーの方へと
やってきた。

「チッ、なんだ、ろくなワインが残ってないんだな。この店も終わりだな!」
そう言うとボルドーの二つ星ワインを取り出した。
ボトルを持って再び外へ出ようとする此処未の前にたきーのが
立ちふさがった。

「お待ちなさい。」

「どこへ行こうと言うの?どうしてそんなことしか出来ないの?
とりあえず、そのボトル、あたしに返しなさい。」
「ヤダッ!」
たきーのを振り払おうとする此処未の腕を今度はうすどんが
つかんだ。
「此処未、オマエ、勘違いしてるぞ。そのボトルはオマエのじゃない。
この店のだ。しかもこの店はオマエのものじゃない。
ここまでするにはなにかワケがあるんだろうな!
まず、説明しろ。」
739アナル作家 ◆ANALmoEo1s :03/04/23 08:29
スナック『イタスレ』の日の出  その9

「ヤダッ!!」
すでにアルコールの匂いがかなりする此処未はいったいどこで
ボトルを空けるつもりなのだろう。

うすどんの手も振り切って此処未は乱暴に外へ出て行った。
呆然と立ちすくんで事の成り行きを見守るしか術のないスナック『イタスレ』の一同。

「ハッハッハッ・・・・!!!」
奥で一人焼酎を飲んでいたはまちが高らかな笑い声を上げた。
「やられたな。此処未の勝ちだ。現行犯。しかも誰も止められなかった。
逃げ切ったヤツの勝ちだ。」

「はまちさん・・・・・。」
たきーのは、そう、つぶやくとがっくりと頭を垂れた。

外へ飛び出した此処未はある地下街を目指していた。

740アナル作家 ◆ANALmoEo1s :03/04/23 08:29
スナック『イタスレ』の日の出  その10

その地下街には2ちゃんの裏事情がわかる場所として2ちゃんヲタの間では
チョットした評判になっている店があった。
此処未はここの常連なのだろう。ボトルを持ち込みしても誰も咎める者がいない。

「よぉ!持ってきたな!何だ?今度は。
此処未がいるから俺たち安上がりでいつも助かるよ。」
「何だ、今日は安酒だな。」
「何言ってんだ。これ、フランスものだぜ。」
此処未の周りにはすぐに数人の取り巻きがつく。

「オマエ、あの店の店子なんだろ。いいのかよー。こんなにいつも。」
そう、言われでも此処未はうつろな目をしてふん、と皮肉な笑みを浮かべるだけだ。
「知ってるか?やっぱりたきーのは自作自演だったらしいな。」
「そんな話、もう、聞き飽きたぜ。それより、沙者、って香具師の方が臭いぞ。」
「ふぃーみんなんか一番怪しいよな。そろそろ危険を感じてコテをやめたんだろ。
わかりやすいよな。もう、遅い、って。」

笑いがあがる。
いつもの話題。○=●はここのお決まりの話題だ。
(こいつら、名無しの癖に・・・。いつか晒してやる。)

そう、瞳の奥に秘めた野心を燃やす此処未がいた。
741アナル作家 ◆ANALmoEo1s :03/04/23 08:29
スナック『イタスレ』の日の出  その11

「此処未、なんだかんだ言って人気者なんだよな。お前が2ちゃんで叩かれまくってても
俺たちはいつもお前の見方だからな。安心しろ。煽りは2ちゃんの華だぞ。」
「それにしてもスナック『イタスレ』、見てられないな。あの落ちぶれよう。」
「そりゃそうだろ。自業自得だよ。あんな偽善者のあつまり、気持ち悪くって
見てらんない、って。」
「まあ、『イタスレ』がなくてもランジェリーパブ『パリスレ』とか遊べるところはいくらでもあるもんな。」
「そうそう、オージー系の店も結構面白いよ。」

(面白い、ってどういうことだよ。・・・・・勝手な事ばっかり言ってやがる。)

「ところで、此処未、難民スレの方はどうするんだよ。お前がいないと遊べないぞ。
結構面白かったのにな。」

(お前らが来るから行かないんだよ。)

と、その時、入り口の方でざわざわと何かが起こった。
「ん?誰か来たのか?」
「誰だよ。あれ。」
「あ!!!あいつ・・・・あのニヤケた顔はどっかで見たことあるぞ。」
「誰だよ!」
「・・・・・!!!山崎渉だ!!!」

人垣の中心に2ちゃんで一番有名な厨の中の厨、山崎渉がいた!
742アナル作家 ◆ANALmoEo1s :03/04/23 08:30
スナック『イタスレ』の日の出  その12

山崎渉は小柄だった。
いったいあの小さな体のどこから2ちゃんのスレ順位を一度に大きく変えるパワーが
出るのだろう。
サインをねだるもの、握手を求めるものなど、山崎の周りは祭りとなっている。

此処未はワインをグラスに並々と注ぐと一気に飲み干した。
うつろな瞳に山崎の姿は入っていない。

「俺、チョット挨拶してくるよ。」
「あ、俺も。」
取り巻きの何人かがそう言うと、テーブルを後にして山崎の方へと行った。

しばらくして、山崎が此処未のいるテーブルにやってきた。
「此処未、山崎さんだ。」
そう、天下の山崎を紹介されても此処未はふん、と横を向いたままワインを飲み
続けている。
「此処未さん、ですよね。知っていますよ。(^^)を真似したでしょ?
っていうのは冗談ですよ。本当に酒好きなんですね。僕も一杯いただけますか?」

すばやくボトルを差し出そうとする取り巻きの手をぐい、と掴むと
その手からボトルを奪い返し、此処未はボトルを直接自らの口へと持っていった。

・・・・・・・・・。
一瞬、その場の空気が止まったかのようだった。
743アナル作家 ◆ANALmoEo1s :03/04/23 08:30
スナック『イタスレ』の日の出  その13

相変わらず横を向いたまま、ごくごくとボトルから直接ワインを飲み続ける此処未。

「・・・・あ、山崎さん、ウィスキーでもいいですか?
俺、ボトル持ってきます。」

どか、っと此処未の真向かいに山崎渉が腰をおろした。
ようやく此処未の目が山崎を捉える。
山崎は何も言わずに此処未を見据えている。

「まあ、僕のスレは僕が立てなくとも星の数ほど立っているわけだが・・・・。」
ゆっくりと山崎が口を開く。
「荒らしと言われようと何と呼ばれようと、僕の一レスで助かっているスレもあるわけで。」

「荒らしですよね。」
此処未が言った。

「ふん。やっと会話してくれる気になりましたか?」
山崎がほくそえんだ。
744アナル作家 ◆ANALmoEo1s :03/04/23 08:30
スナック『イタスレ』の日の出  その14

「あなたのやっていることは荒らしですよ。紛れもない。」

「荒らし、か。つまらない肩書きだな。
僕の肩書きは『山崎渉』、それだけだと自負しているが。」
不敵な面持ちで山崎は用意された水割りを手にした。
足は組んでいる。

「・・・・・まあ、一般海外板の場合、僕のやっていることなんか糞ほどの
もんでもないですけどね。特殊な板ですよね。あそこは。
住人が特殊。だからふつうの2ちゃんの板とは同じに考えてませんよ。
僕ほどの人間はまあ、とりあえず一通りの板は理解しているつもりですがね。
だから荒らしをするなら他の方法でするでしょう。」

「それは?」

「その板に一番あった方法です。あそこの板は自意識過剰な人間が多いですからね。」

「・・・・・・・。」

「そして荒らしと呼ばれる行為をする人間もまた自意識過剰。
だからツボを押さえられる。と、いうところかな?」
745アナル作家 ◆ANALmoEo1s :03/04/23 08:30
スナック『イタスレ』の日の出  その15

「自我が強いと荒らしになる、ということですか?」

「自我かどうかはわからないけどね。鬱積された自我の要求が顕著に見られるよ。
あの板は。ハハ。まあ、僕も自我の塊みたいな人間だからわかるのかもね。」
そう言うと、山崎は葉巻を出し、ユックリと火をつけた。

独特の香りが周囲に広がる。
山崎は一服すると、ンポ、という音をたてた。

「此処未さんもいかがですか?」
そういうと山崎は此処未に葉巻を差し出した。

「いいえ、結構です。それより、厨の心理学についてもう少し話をして欲しいです。」

「そんな、厨の心理学だなんて、難しく物事を言いたいようだね。
2ちゃんではそういうの、嫌われるでしょ。その点、僕、山崎渉はわかりやすい。
その辺かな?僕の人気の秘密は。」

「・・・・・・・ここには初めてですか?」

「いや、そんなこともない。まあ、お面をつけてくることがほとんどだけれどね。
僕ほどの人間はそうそう人目に晒されちゃいけないんだよ。
わかるだろ?そういうの。」
746アナル作家 ◆ANALmoEo1s :03/04/23 08:31
スナック『イタスレ』の日の出  その16

それから此処未と山崎の間では厨というもののイデオロギーについて
ながながと夜が更けるまで会話が続けられた。
取り巻いていた香具師らもひとり消え、二人消え、店には山崎と此処未、
二人だけが残された。
いや、実をいうとこの二人の雰囲気には他を寄せ付けないものがあった。
取り巻きたちもはじめの頃は二人の会話に耳を傾けていたが、
聞いてはいけないような感覚があったのだろう。ころあいを見て
遠くに席を置く者も少なからずいた。

店の灯りが一つずつ消されていく頃、山崎が言った。

「どうです、此処未さん、これからスナック『イタスレ』に逝ってみませんか?」

「ええ?これから?もう、誰もいないですよ。」

「まあ、でも逝ってみましょう。いや、逝ってみたい!」

かくして山崎と此処未はスナック『イタスレ』に向かった。

店の前に着くともう、朝方だと言うのに灯りがついていた。

(誰がこんな時間まで!)
747アナル作家 ◆ANALmoEo1s :03/04/23 08:31
スナック『イタスレ』の日の出  その17

そっとドアを開ける此処未。
中を見ると・・・・。

『イタスレ』の連中はそれぞれ店のソファーで横になっていたり、テーブルにうっぷして
寝ていた。

此処未がそーっと入っていくと物音に気がついた沙者が顔を上げた。

「!!!こっこみさ〜〜〜〜〜ん!!」
沙者の叫びで全員が目を覚ます。

「ね、寝ててください。チョット場所借りるだけだから、」

「此処未っ!」
たきーのがかつらをズラし、半寝ぼけまなこですっくと立ち上がった。

「ママ・・・・。さっきはゴメンナサイ。・・・あの、こちらは山崎渉さんです。」
此処未が紹介し、山崎渉がたきーのに上目遣いでニヤニヤした。
「チョット逝くとこなくなっちゃったんですよ。まだ、此処未さんと話があるものですから。
ここ、使わせてもらっていいですか?」

「へ?山崎渉さん?!」
まだはっきりとした意識が戻らないたきーの。こけながらも少し驚いたようだ。

「ど、どうぞ。そこでよければ。」
「ううむ。」
はまちがうなった。
748アナル作家 ◆ANALmoEo1s :03/04/23 08:31
スナック『イタスレ』の日の出  その18

「・・・・つまりね、此処未さん、残るはアナル作家だけなんですよ。
彼、強情だからね。一番自意識過剰でしょう?厨の自意識を満足させるには
彼の自意識をくじくしかないんですよ。」
山崎は続けた。

「でも、アナルなんていう字ずらは誰も見たくないはずだ!」
「違うな。問題はそこじゃない。この2ちゃんでアナルなんて字ずらごとき、
単なる屁理屈に過ぎない。そこに反応するのは、此処未さん、あなたですよ。」

「・・・・あの、これ、どうぞ。」
米粒がお通しを持ってきた。それは・・・・。
「米粒さん!!!」
此処未が叫んだ。その小鉢にはなんとひじきの煮つけが盛り付けてあったのだ!!!
「こ、これ、どうしたの?僕、もう、ひじきの煮つけは食べられないと思ってたのに・・・。」

「私が作ったの。今。」
はにかんだ様子で米粒がお盆を前に持ち、チョット後ろに下がった。

「山崎さん、これね、僕大好きなんだ。前は名無しさんがこれを作ってくれた。
でも、そんな名無しさんも、もう・・・・・・。」
そういうと此処未はズルッと鼻をすすった。

「此処未、トン汁もあるぞ。」
うすどんが厨房の奥から顔を出す。深夜の煮込み料理をしていたようだ。

「うすどん・・・・・・。」
749アナル作家 ◆ANALmoEo1s :03/04/23 08:31
スナック『イタスレ』の日の出  その20

「いつものミネラルウォーター切らしちゃったからジントニックにしました。
レモンを添えてみたんだけど。」
そう、言ってたきーのがトニックウォーターを持ってきた。

「ジントニック!」
「あ、山崎さん、それただのトニックウォーターですから。」
此処未が言い直す。

わけがわからないまま、山崎はトニックウォーターを飲み干し、話を続けた。
「・・・・まずいな。とにかく、晒す事なんか誰にもできやしない。それならハンムラビ法典だな。」
「ハンムラビ法典!」
「そうだ。目には目を。歯には歯を。だ。
あいつらは名無しで攻撃してくる。それなら、此処未さん、
あなたも名無しで攻撃するんだ!!!」
「でも・・・・・すぐにばれてしまいそう。」
「うむ。しかし、名無しがコテハンになって攻撃してくる事はないぞ。
相手にコテハンを求める事なんか、愚の骨頂。名無しだから攻撃できるんだ。
けれどコテハンは名無しになれる。いいか、コテハンで攻撃できないなら名無しで迎え撃つんだ!!!」

「山崎さん、名無しでいたんですか?」
「チョットだけな。」
750アナル作家 ◆ANALmoEo1s :03/04/23 08:32
スナック『イタスレ』の日の出  最終回

「でも、こっこみさん、名無しでいないでください。沙者はこっこみさんがいいです・・・・・。」
部屋の隅で話を聞いていた沙者がポツリとそう、言った。
「・・・・・私も。此処未タンがいない『イタスレ』なんて・・・・。」
米粒も涙をこらえてそう、続く。

「此処未・・・・・。もう、そんなお酒の飲み方だけはやめて頂戴!
見ていてこっちが涙が出てくるわ。此処未の『イタスレ』思いな気持ちは
とってもよくわかるの。・・・・でも、私たち、厨に対抗する気概に欠けていた・・・・。
そうよ!そうよね!山崎さん、私たちがまず、立ちあがらなければ!!」
そう言うと、たきーのはクルッと振り返って皆を見据えた。
「みんな!これからはコテハン=源氏名で出勤しつつ、危なくなったら
名無しで攻撃よっ!!!」

そういうと、たきーのはそのか細い腕を突き上げた!

「そうね!ママ!!」

「そうとなったらまずは腹ごしらえだな!」
うすどんがナベを抱えてやって来た。
「さっき、私、ご飯を炊いておいたから、みんなで食べましょう。
夜食には遅すぎるけど。・・・・・・もう、こんな時間・・・。
時間も時間、米は『日の出』よっ!!!」

米粒がしゃもじを朝日に向かって振りかざした!
「うん!」
此処未の目からは透き通った米粒のような涙が輝いていた。

    ― 完 ―