【イタ】イタリアについて話そう 30【スレ】

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547アナル作家 ◆N6ANALLovE

イタリアOFF会の風景@ローマ その16

丘にはうっそうと木が茂っている。
見るとその辺に浮浪者が寝ている。
ちょっと小高い丘の上から見下ろす深夜のローマも美しい。
夜空にはさめざめとした月が輝いている。

「なんだ、ここ?」
マルクスマンが何か発見したようだ。
みんながそちらへ行って見るとうっそうとした茂みの間に
ぽっかりと井戸のようなものが口をあけている。
「井戸、の跡ですか・・・・・ね?」オホモダチが不安げにアナルさんに聞く。
「穴、だな。」アナルさんが言うと別なもののようだ。
「誰か入れよ。」うすどんさん、また、煽るようなことを・・・・。
「僕、入ってみるよ。」
こ・・・・此処未さん。マジで、入るつもりですか?危険好きだったな。そう言えば。
見ると奥へ入れるように縄梯子が垂らしてある。
「誰か住んでるんじゃないですか?」blue windがそう言った。
「でも、浮浪者たちは外で寝てる様だぞ。・・・・・それに、ここ、もしかしたら
下水道に繋がってるんじゃないか?」
なるほど。もう一つさんの意見に皆がうなずいた。
となれば、ローマの地下水脈を探検する、っていうのも面白い。
もしかしたら2000年前の地下水路かもしれないし。

此処未さんが先頭を切って入っていく。
とりあえず、何があるかわからないので、女組みには外で待っててもらうことにする。
と言っても深夜を過ぎて危ないのでたきーのさんが付いていることになった。
地下に降りていく俺たちを不安げな様子で見守るたきーのさんたち。
地下に入ったら携帯だって使えないしな。
一抹の不安はよぎるが、乗りかかった船。ときに男には冒険が必要だ。
548アナル作家 ◆N6ANALLovE :02/11/06 22:15
イタリアOFF会の風景@ローマ その17

外は寒かったのに、地下は生温かい。

水の流れる音が聞こえる。
やっぱり下水道なのか?
はまちさんの持つライターが照らし出す穴の中は空洞だ。
がらんとしているのに湿気がある。
壁に触れるとその湿気がよくわかる。
不安が寒気を感じさせるのか、それとも寒いのかわからない。
ただ、しっとりと汗をかいているような感じがする。

みんな無口だ。
黙々と歩き続ける。
「おい、出口のところに何か印はつけておいたか?」
うすどんさんが口を開いた。
「つけておきました。」俺が言った。
とりあえずみんなの安全も考えなくては、と持っていたペンで
壁に書き付けておいた。
・・・・・・Ti amo、と。

水の音はだんだん大きくなるが、水路は依然として視界に入ってこない。
すると、人の泣く声がしてきた。
!!!!!!
みんな一斉にその声に振り返った。
俺たちと一緒についてきたやつが半べそをかいている。
「何だ。お前。戻ってもいいんだぞ。」うすどんさんが言った。
「・・・・・もう、戻れませんよ。それに、・・・・・俺、怖くて涙が出るんじゃないです。」
そいつはOFF会の初めからちょっと陰気なやつだった。
「どうしたんだよ?」ふぃーみんさんが不安げな顔で聞く。

「この雰囲気、この穴の中の空気が俺を・・・・俺を・・・・・・・。」
549アナル作家 ◆N6ANALLovE :02/11/06 22:15
イタリアOFF会の風景@ローマ その18

はまちさんがそいつの肩を抱くと、「前に進もう。」と言った。
俺たちはとりあえずその水のありかを突き止めたい、という気分になっていた。
とにかく、水さえ見たら後は戻ろう。
しかし、なかなかそこにたどり着けない・・・・・・。

いったいどのくらい歩いただろう。
ひどく長い間歩いたような気がする。
はまちさんのライターは既に灯がともらなくなり、此処未さんがライターをつけている。
「ちょっといいっすか?」もう一つさんが小便をしたくなったようで、後ろの壁に向かって
チャックをおろして小便を始めた。
俺たちはもう一つさんの小便の音に耳を澄まさなければならなかった。
「俺も。」
独板がその音に触発されて後ろへ下がった。
俺たちは独板の小便の音にも耳を澄まさなければならなかった。

小便をし終わった二人が俺たちに合流するとまた、前に歩き出した。
しばらくすると道が二手に分かれた。
水の音は右手から聞こえる。
右に曲がったところの壁に、俺はペンで書きつけた。
・・・・・Fammi sognare、と。

そしてそこから50メートルほど行った所で道は途絶えた。
俺たちの前には壁がはだかっていた。
しかし、水の音は前にも増して大きくなっている。
この壁の向こうに、確かに水はありそうだ。
ふと横の壁を見ると不自然なレンガが一つある。
俺は何の気なしにそのレンガを押してみた。
・・・・・すると。
550アナル作家 ◆N6ANALLovE :02/11/06 22:15
イタリアOFF会の風景@ローマ その19

ガガガガガガガッ・・・・・・・・・・・・・・!!!!
立ちはだかっていた壁が下がりだし、
俺たちの目の前にいくつもの水道管から噴出される水の合流地点が現れた。

それは昔見学に行った市の浄水場のようだった。
俺たちはその様子を黙って見つめていた。
こんな地下で水が、何本ものロープが縒り重なるように絡まりあっている。
しかも、どこからか明かりが入り込んでいるようで、
なんとも幻想的な光景が目の前にあったのだ。
・・・・・その部屋の壁には神々の姿が描かれていた。水の神殿。

「・・・・・・・きれい、だな。」
誰の口からともなく、そんな言葉が出た。

俺たちはとりあえずそこで満足すると引き返すことにした。
それにしても、この下がり降りた壁、どうやって元に戻せばいいんだろう。
通路の反対側の壁にも何も見つからない。
しょうがないのでそのままで出ることにした。

帰り道、俺たちはまだはらはらと涙を流し続けるそいつの話しを聞くことにした。
「・・・・ここは暗くて、何もない。けど、変に生温かくて、湿っている。
俺はそんな穴の中に入った・・・・・・・。それだけでも、・・・・・俺・・・・・・。」

「何か、あったのか?」アナルさんが聞いた。
「・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・でもな。人間なんて湿り気が欲しいんじゃないか?」うすどんさんが続ける。

「・・・・・・・・・・・俺、乾いていたのかもしれない。」
そいつはボローニャの男だった。
551アナル作家 ◆N6ANALLovE :02/11/06 22:15
イタリアOFF会の風景@ローマ その20

乾いているから湿り気が欲しくなる。
人間は水で出来てる。水が欲しい。
言ってみれば渇きがあるから水が素晴らしいものに思えるのかもな。

俺たちはボローニャの男の話を妙にリアルに感じていた。
実際俺なんかもそんな経験はないけど、この穴の中に入ってから、
あの水の合流する神殿を見て、俺の心の奥底にある本当の欲求が見えたような気がした。
砂漠で長い間旅をしててオアシスを見つけたときの喜びにも似ているんじゃないかな。
ただ、この穴の中は暗くて湿っていたけど。

「あそこを見るまで、俺はなんだかすごく嫌な空気だと思っていたけど、
それもあの場所を見たら、・・・・・そのためにこの暗い、嫌な道があったのかな、と思ったよ。」
blue windもそう言った。
「なんだか、人生みたいだな。」はまちさんが付け加える。
「嫌だけど、・・・・・・穴の中で俺は変な快感を感じたよ。」アナルさんがそう言うと、
ボローニャの男は涙を流した。

俺たちは言葉にしがたい何か共通の感覚を味わったような気になった。
俺たちは煩悩の塊で、・・・・・でも、いつかは神に出会えるときが来る。
そんな錯覚を覚えた。

「先を望んで前に進めば、何かすごくいいものに出会えるのかな・・・・・・・・。この穴の中みたいに。」
ボローニャの男はそんなことを言った。

俺の書き印に沿って歩いていくうち、俺たちは入り口の穴のところまでたどり着いた。
552アナル作家 ◆N6ANALLovE :02/11/06 22:15
イタリアOFF会の風景@ローマ 最終回

「お〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い!!」
俺は思いっきり大きな声で外へ向かって呼びかけた。

上を見上げると丸い穴の上に月が見えた。

パッ、っとエビコロが顔を出す。
「きゃーーーーー!!!ローマタン!!大丈夫ーーーー?」

「大丈夫だよーーーーー!!帰ってきたよーーーー!!」

そう言うと他のみんなも穴の中を覗き込んだ。
そして・・・・・・・・・。

穴の中から生還した俺たちの前に新たなる神が顔を覗かせた。

「皆さん、無事ですかー?」
たきーのさん!!

2ちゃんという穴の中が居心地よくて、ときに嫌悪感まで抱くのだが、それもまた快感。
そして、穴の中を通り抜けるとき、俺たちは神に近づけるかもしれない。

舞台は暗く、不毛でなくてはいけない。
俺たちはイタスレという舞台の中の役者なんだ。


― 完 ―