【タキーノ】イタリアについて話そう 24【マッテルヨ】
277 :
アナル作家 ◆ANALLovE :
たきーのを探して―はまち編― 11
バーガーキングを出ようとすると例のキャーッの集団がまたしても
俺たちの後をくっついて来た。
「また、いつかお会いしましょうね。」
彼女たちには悪いが今はたきーのが心配だ。
それにふぃーみんも。ふぃーみんはおびえきっている。
ふぃーみん、どうでもいいが俺のポロシャツを引っ張るのをやめてくれ。
子供じゃないんだから。
フランチェスコの案内でたきーのの家へと向かう途中、
俺たちはフランチェスコからたきーのの人となりを聞く機会にも恵まれた。
たきーのの実際はフランチェスコの話を聞く限り、
かなり複雑な人生を歩んできた人らしい。
物腰は柔らか。本当にいい人だ。と、フランチェスコは言った。
「私は日本にも住んだことがありますが、彼は日本人のいいところを
失うことなく、イタリア人もよく理解している。彼のような日本人が
もっと増えてくれればいいのですが。」
外国人のためのイタリア語学校で教えているフランチェスコは
遊びほうけてイタリア人のことも理解しないまま帰っていく日本人学生の
ことを危惧していた。
俺はその話を聞きながらいつものクセでロープのノッドをつくっていた。
船の上では暇さえあればみんなでノッドを作る。
一種の精神安定剤だ。
「ここです。」
パラッツォはミラノの中心からはかなり離れている。
ここまで方位磁石を使って歩ってくるのは大変だったろう。
フランチェスコのおかげだ。
俺は一つ、深呼吸をした。
278 :
アナル作家 ◆ANALLovE :02/09/26 05:39
たきーのを探して―はまち編― 12
車を降りると、パラッツォからオペラが聞こえてきた。
これは・・・・、ドミンゴだろうか。
フランチェスコがチトーフォノを鳴らす。
ドアが開き、俺たちはパラッツォの中へ進む。
たきーのの家の前に来るとそこからあのオペラが
流れてきていたんだとわかった。
たきーのさん・・・・。
ドアが開く。
優しそうな女の人。
そして・・・・。
中は段ボール箱がいくつも転がっていた。
「ごめんなさい。引越ししなくてはいけなくて。」
「え?引越しするの?」
フランチェスコが聞く。
「えぇ。ちょっと事情が・・・。」
すると、奥から車椅子の日本人が顔を出した。
力のない笑顔。たきーのさん?
「やぁ、フランチェスコ。・・・・・・!!」
「たきーのさんっ!」
俺は流れ出す涙を抑えることはできなかった。
フランチェスコが俺とふぃーみんを簡単に紹介する。
「はまちさん!ふぃーみんさん!!」
279 :
アナル作家 ◆ANALLovE :02/09/26 05:39
たきーのを探して―はまち編― 13
ふぃーみんは涙どころか鼻水も垂れ流している。
俺たちは初めて会うにもかかわらず何十年も会っていなかった
友人に再会したように抱き合った。
それにしても、たきーのさんそんなにやせ細って・・・・・。
「ここまできてくれるとは思いませんでしたよ。
本当にありがとう。はまちさんが来てくれるなんて・・・。」
たきーのさんも瞳が潤んでいる。
「入院するときにはアナルさんとblue windさんが来てくれたし、
その後、イタスレのみなさんから千羽鶴までいただいてしまいました。
そのときは盲腸で退院ははやかったのですが・・・・。
持病の糖尿がひどくなってしまいました。
ご覧の通り、車椅子になってしまいましたし、それに・・・・。」
「まだなにかあるんですかっ?」
ふぃーみんが叫んだ。
「えぇ。実は最近変なストーカーがうろついているんですよ。」
たきーのの交際者が口を挟んだ。
「ストーカーだって?」
俺たちは驚いた。
「もう、それは大変。ちょっと外に出ると通りの影からじっと見ているのが
いつもわかるし、この前一緒にシャワーを浴びていたときにシャワールームの窓に
人影が・・・。ここは3階だし、不可能だと思っていたのですけど・・・・。
私も仕事に行くときにつけられているようなので、
やっぱり引越しすることにしたんです。」
280 :
アナル作家 ◆ANALLovE :02/09/26 05:40
たきーのを探して―はまち編― 14
「この前なんか2週間ずーっとバラの花束が届けられましたよ。」
「バラの花束・・・。それは彼女に?」
ふぃーみんが聞く。
「いいえ、たきーのに、らしいんです。」
「カードが入っていたんですか?」
フランチェスコも興奮気味だ。
「それが、いつもカードも送り手の名前も何もないんですけど、
一度だけ、私が外へごみを出しに行ったらモンデッツァの蓋の上に
一輪のバラがあって、そこに『たきーのがいないイタスレなんてヤダ』って書いてある
カードがあったんです。」
「このままじゃたきーのにも彼女にもよくないですからね。
チェントロの病院にも近いところでまあまあ居心地のよさそうなところを
見つけたので、そこに移ります。車椅子じゃ何かと不便ですし。」
「ストーカーですか・・・・。最近そういえば多いそうですね。」
そうは言ったが、内心たきーのが日本へ完全帰国するのではなかったんだと
ほっとした。
それにしても、ストーカーとは・・・!
「俺、そういえばさっきここに入るときに後ろに誰かいた様な気がした。」
ふぃーみんがポツリと言った。
「きっと今も外にいると思いますよ。」
俺は思わず立ち上がって外へ飛び出した。
281 :
アナル作家 ◆ANALLovE :02/09/26 05:40
たきーのを探して―はまち編― 15
「誰だッ!誰なんだッ!出てこいっ!」
俺は外へ飛び出すと大声を上げた。
手にはノッドだらけのロープを持っていた。
すると物陰から人影が飛び出し、走っていくのが見えた。
「待てッ!」
俺はやつの後を追った。
高校のときアメフト部だった俺は走りには自信がある。
難なくそいつの首根っこをつかむと後ろ手にして
手首をロープですばやく締め上げる。
「お前、誰なんだッ!えっ?!」
「ゴメンネ、ゴメンネッ・・・。」
そいつはきゃしゃな若い男だった。
半べそをかくその男の顔は蒼白だ。
なんだ、こいつは!
「名前、なんていうんだ?どうしてたきーのさんをつけるんだ?
警察に届けてもいいんだぞッ!」
「ゴメンネ、ゴメンネ、ゴメンネ・・・・。」
「ゴメンしか言えねぇのかよっ!」
しゃくりあげるその男にどうしたものか困惑していると
ふぃーみんとフランチェスコが追いついて来た。
「ゼェゼェ・・・・は、はまちさん、つかまえましたか!」
「は、はまちさん??!!!」
男は驚いた表情で俺を見上げた。