723 :
嘆きの滝夫人。続きA:
アントニオは困惑した表情で後ろから滝の首筋にその生意気な
鼻をつけて呟いた。
アントニオ「泥棒・・君だって僕の心を・・・。」
:アトリエは薄紅色のベールに包まれた。しかしアントニオは
この時まで、滝の瞳が時折、赤色に変色することや、爪が鋭く
生え揃うこと、滝が教会に行くことを何故拒むのかを知らな
かった。
滝 「アントニオ・・逃げるのよ。」
アントニオ「えっ??」
:突然アントニオの携帯が、けたたましく鳴り響いた。
アントニオ「プロント?」
電話「もしもしFBIのモルダー捜査官ですが、テスティーノ
さんですか?」
:滝のそばの小さなテーブルのバカラグラスが音を立てて割れる:
滝 「アントニオ・・遠くへ!」
♪Dufay:Par droi je puit bien complaindre et gemier
(私が嘆き、うめくのも無理からぬところ・)
の曲と共に幕が下りる。