686 :
小説(イタリアOFF会の風景) 12:
男は話を続けた。
「たき-のはおれのかわりにバスの無賃乗車の罰金を払ってくれた
よ。制服の男は日本大使館に通報するとかなんとか言っていた。
おれは正直困ったね。そんなことされて親にバレたら大変だと
思った。たき-のもおれのために大使館への通報の件は勘弁して
もらえないか、ずいぶん頼んでくれたんだが、制服の男は首を
たてにふらなかったんだよ。」
オフ会のメンバ−は息をひそめてその男の話に聞き入った。
男は続けた。
「おれも若かったんだよな。次の停留所でいきなり走って
逃げたんだよ。もちろん警官はおれの後を追ってきた。
たき-のも走っていた・・・そしておれに早くこっちへ
来いと手招きをするのさ。・・・おれはある高層住宅の
ところまで走ってきた。そして階段をかけ登り始めた。
下の方では警官隊が追いついて、すごい勢いで登って
来る。もうだめか、と思ったら、たき-のが上の方にい
て、こっちに来いという。部屋に入ったら、そこがたき
-のの部屋だったのさ。」