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小説(イタリアOFF会の風景) 11:
ギタ−の弾き語りの男は続けた。
「おれがイタリアに来たのはもうだいぶ前のことだ。
そのときおれは語学留学してたんだけど、勉強は
そっちのけで悪い友達と遊んでばかりいた。」
男は自分が差し出した帽子に客から金を集め終わると
また静かに話を続けた。
「あるときバスに乗っていたら、急に制服の男が乗り
込んで来て切符をチェックし始めたんだ。おれは、
そのとき何が起きたのか、分からなかった。だって
友達からはバスは無料だから切符は要らないと言わ
いたんだからね。・・・でも時すでに遅しさ。おれ
は制服の男に捕まった。でも罰金を払えるだけの金
なんか持っていない。絶体絶命。そこでたき-のに
会ったんだ。」