1 :
名無しさん:
この記事は英ニューサイエンティスト誌6月10日号に掲載された
『The woman who dared to ask』を翻訳・転載したものです。
シェア・ハイトが女性のオルガズムについて調査した『ハイト・レポート』を発表して物議をかもしたのは1976年。
詳細なアンケートに基づくこの調査を、非科学的と批判する向きもあるが、
これまで語られなかった女性の側からのセックスを取り上げた意義は大きい。
男性がいなくても女性がオルガズムに達するという発表は、衝撃でもあった。
シェア・ハイトがこれまでの研究について語る。
セックスを研究するには、どんな方法を取るのだろう。ペニスやヴァギナを解剖したり、
他人の寝室に隠しカメラを置いて観察したり、アンケート調査で赤面するような質問をするのだろうか。
シェア・ハイトに聞けば、その答えがわかるはずだ。
ハイトは1976年、女性のオルガズムについて調査した『ハイト・リポート』を発表。
クリトリス(陰核)がボタンよりも大きいことを示した。
ハイトに言わせれば、セックスは電気的な刺激とか、科学的な分泌作用以上の何かがある。
ハイトがセックス学の意味を語ってくれた。
#「女性のオルガズム」を追い続けて
http://journal.jp.msn.com/worldreport.asp?id=000615ns_orgasm&vf=1
2 :
続き:2000/06/17(土) 14:53
●女性の性器を正しく知る
NS: クリトリスがそれまで考えられていたより、2〜3倍大きいことを最初に証明しようとしたのは、あなたですよね。
おそらくそうです。クリトリスは陰門の前にある小さな突起にすぎないと考えられていましたが、
ペニスと同様の働きをします。女性がオルガズムに達すると、クリトリスの血管も膨張するのです。
NS: ということは、教本が間違っているということですか。
もちろん。これまでのセックスの教本はすべて書き換えるべきです。
NS: 実際にクリトリスを解剖したのでしょう?
ええ。1981年に行いました。本のためにイラストが必要だったのですが、それまでのイラストがひどいもので、
細部をまったく書いていなかったからです。
そこで、イラストレーターに――彼女は看護婦ですが――もっと細部を書き込むよう頼みました。
死体を解剖をしたのは医学生で、その横で彼女が絵を描いたのだと思います。
NS: あなたと同じように考えた人はいなかったのでしょうか。
1890年代のフランスにはいました。
NS: フロイトはそれを認めなかったのでしょうか。それとも知りたくなかったのでしょうか。
いい質問ですね。彼がドイツの医学教育を受けたせいなのかどうかは、わかりません。
ドイツで10年間、看護婦になるための勉強をした知人によると、ドイツの教科書にはペニスの絵はあるけれども、
女性の性器に関する絵はないそうです。
つまりフロイトも、本来ならもう少し科学的に性について考えることができたかもしれないということは言えます。
NS: クリトリスに関する発見を知らない女性は、まだ多いのですか。
女性誌ではほとんど記事をみかけませんね。男性がその事実を受け入れないほど弱虫ではないと思いたいけれど。
3 :
続き:2000/06/17(土) 14:54
●マスターベーションの話はタブー
NS: キリスト教原理主義の信者であるあなたが、70年代にセックスの研究を始めたきっかけは何だったのですか。
ニューヨークのフェミニスト団体で活動していたときに、クリトリスに関する話をしました。
でも、みんな恥ずかしがって本音は語れませんでした。
他の女性と同様、人前でセックスの話はしないものだと教えられてきたからです。
私の家族もマスターベーションについて話すことはありませんでした。
72年に、女性の性に関するアンケートを実施することになり、私は名乗りを上げました。
この調査結果が、76年の『ハイト・リポート』になったわけです。
NS: 女性の性経験に関して、具体的に何を知りたかったのですか。
性交によって女性はオルガズムを得られるというのが通説でした。
男たちは、女性が性交で頂点に達するのは、男性が早くいくことなく「丁寧にやる」とき、
だと考えていたのです。どういう意味かは別としてね。
性の研究者であるウィリアム・マスターズとヴァージニア・ジョンソンは、
70年に『不適切な性』を発表しました。この本には、
クリトリスが女性のオルガズムの源であると書かれています。
しかし彼らは、それを外的な要因で起きると定義しています。
クリトリスを刺激することでオルガズムを得るというのはいいとして、
彼らはあくまで性交の間に自然に起きると考えていました。
手を使った場合を考慮に入れていないのです。
私はオルガズムの謎を解く鍵は、女性がいかにマスターベーションでオルガズムを得ているかを
解明することにある、と考えました。女性のマスターベーションに関しては、誰も教えてくれませからね。
それがわかれば、どのような刺激が最も効果的かを証明できるというわけです。
女性もマスターベーションで快感を得られることは知られていましたが、
実際に多くの人が試しているとは誰も思わなかったのです。
4 :
続き:2000/06/17(土) 14:55
●記述式アンケートで女性の生の声を集める
NS: 実際の研究はどのように行われたのですか。天文学者が天体の動きを研究するように、観察するわけにはいきませんよね。
マスターズとジョンソンは、特殊なカメラなどを利用して実際に観察する方法を使っていました。
彼らの教え子のメリー・ジェーン・シャーフィーは、静脈に血液が送り込まれることでオルガズムに達し、
その後、血管が収縮すると仮定しました。以後、オルガズムが頂点に達したときの身体の仕組みに関する研究は、ほとんど進んでいません。
私自身は、女性に質問をする方法を取っています。
個々人のセックス行動とオルガズムの関係を効率よく調べる方法を考えた結果です。
NS: どうやってマスターベーションするのかといった質問に、正直に答えるのはむずかしそうですね。
匿名性は完全に保障するようにしました。また、選択肢を用意するのではなく、記述式にしました。
選択式を採用するとデータの収集は楽ですが、女性のセックスに関する知識はまだほとんどありません。
選択式では広範な意見を集めることができない可能性もあります。
5 :
続き:2000/06/17(土) 14:56
NS: 記述式の調査は客観的な研究といえるでしょうか。
私のアンケート調査はしばしば「主観的」と評されますが、まったくその通りです。
しかし、オルガズムは生理的な現象であり、答えはとても明確なことが多いのです。
たとえば、「あなたがオルガズムに達するのはどんな時ですか」という質問には、
こんな答えが返ってくるはずです。「自分で触ったとき」「彼があそこをキスしたとき」「オーラルセックスのとき」。
1/3の女性が、性交しているときにオルガズムを得られると答えています。
オルガズムに達しやすいと答えている女性の2/3は、手や口などもっと直接的な刺激が欲しいと考えています。
NS: あなたの研究は科学的ではないとの批判があります。
確かに批判的な向きもありますが、社会科学研究の専門家などは私の手法を進歩的だと考えています。
今では性の研究者の多くが、同様の研究方法に頼っています。
私の研究に疑問をもつ人は、社会科学では仮説をたてて検証するのが著しく困難であることを
認識すべきです。でも私は、幾度も成功しています。
80年代に『ハイト・リポート』の第3弾『女性と愛』を作ったとき、多くの女性が離婚を望んでいることがわかりました。
それまでは、男性が離婚を切り出すと思われていたのに。
英米両政府が同様の見解を示す報告書を提出したのは、3年後のことです。
6 :
続き:2000/06/17(土) 14:56
●今でも「いったふり」をする女性たち
NS: 自分の研究が、女性にどのような影響を与えたと思いますか。
自信を与えたということかしら。「ひどく暗い過去がある。セラピーを受けなければ」と考えていた人が多いのです。
でも今は、問題をかかえているのは社会であり、自分はまっとうな人間だと考えられるようになった。
それに男女の関係は、昔よりずっとよくなっていると思います。
NS: 男性はどうでしょう。
胸をなでおろしたはずです。勃起が2時間持続しなくても大丈夫だとわかったのですから。
男性からもたくさん手紙をもらいました。
たとえば、ある60歳代の男性の話です。彼は20年前、妻がオルガズムを得るのは手を使ったときだとわかり、
それからうまくできるようになったんです。
でも彼は、本当は自分のペニスに問題があるのではないかと心配していたんですね。
彼は手紙にこう書いてきました。
「本当にありがとう。もうこれで自分が悪いと思わなくてすみます」
『ハイト・リポート 男性版』が導いた重要な結論の1つが、
たいていの男性は肉体的にとても惹かれる女性とは結婚しないということです。
しかも、彼らはそれを自慢に思っている。ある女性に情欲をいだき、
その女性が好色を示したら、結婚は考えない。
男は、肉欲を本当の愛とは考えられないのです。
7 :
続き:2000/06/17(土) 14:57
NS: ということは、愛とセックスには今でも隔たりがあるということですか。
インターネットや女性誌にはセックスに関する記事があふれているのに。あなたの試みは失敗したのですか。
いいえ。私たちの試みがどれだけの影響を与えたか考えてご覧なさい。
とはいえ、まだ先は遠いことはわかっています。
インターネットには昔ながらのポルノサイトがあふれかえっています。
しかし、これは社会が考える男性らしさを反映したものであり、他に選択肢がないせいでしょう。
私たちは「セックス」や「肉体」に対する固定観念ができあがっています。
ストレートなセックスが当たり前だと思い込んでいるため、新しいことにチャレンジできないのです。
NS: 科学と性はどのような関係だと思いますか。
性行動を含む人間の行動を解明するのに、生物学的なアプローチが重視されていますが、
それでは社会システムや信念などの影響を排除することなります。
しかしいわゆる純粋科学的手法は「論争が少ない」という理由で、もてはやされています。
このため質は悪いが、データは充実している、という状況を招いています。
NS: 科学的なアプローチを学んだ専門家が、セックスの問題について人々にアドバイスすることはあるのですか。
婦人科や泌尿器科が相談されたときは、巧みに話題をそらすことの方が多いのでしょうね。
エイズが広まってから、ペニスや性交について教師が生徒に教えるようになりました。
アナルセックスが最も感染の危険が高いからです。
けれども、たいていはまだ、セックスについて語るのに抵抗があるようです。
NS: 女性は今でも「いった」ふりをしているのでしょうか。
イギリス人女性の61%は、ある程度高まっただけのときでも、
「いった」とパートナーに思わせていると答えています。
日本の女性誌の編集者にこの話をしたら、とても驚いていました。
いったふりをするなどという行為は、日本人特有の礼節の一形態と思っていたらしいわ。
8 :
名無しさん:2000/06/20(火) 03:02
AGE
9 :
名無しさん:2000/06/20(火) 03:13
なんだこりゃ!?
厨房には難しい・・・。(;_;)
10 :
サイエンスから見る性@第二弾:
・セックスはなぜ楽しいか
(ジャレド・ダイアモンド(Jared Diamond)著 長谷川寿一訳 草思社(サイエンスマスターズ12)、1600円
原題:Why is sex fun? : The evolution of human sexuality@` 1997)
『人間はどこまでチンパンジーか?』新曜社の著者が、人間という変わった生き物の、変わったセックスの謎に挑む。
ヒトのセックスは変わっている。楽しみのためにセックスし、おまけにそれを隠し、女性には閉経がある。
こんな生き物はヒトくらいなのだ。その進化のメカニズムは、そして進化的意義はいったいどこにあるのだろうか。
と、こう書くと如何にも面白そうなのだが、実はあんまり面白くなかったりして。というのは、
やっぱり分からないことが圧倒的で、本書の話も結局「お話」の域を出ないからじゃなかろうか。
著者はヒトの性の進化にももっと目を向けるべきだという。性のありようは、
ヒトを現在のヒトたらしめた重要な特徴の一つなのだから、当然の主張である。
で、色々と考えてみる。なぜ男は授乳しないのか? セックスはなぜ楽しいか?
ヒトの排卵シグナルはいつごろ、どのような過程で隠蔽されるに至ったのだろうか?
なぜ閉経が起こるのか? セックスアピールはいったい何のためにあるのだろうか?
それぞれの内容については本書をめくって頂きたい。
ヒトの排卵シグナル隠蔽の話は、ちょっと面白いかな。
ふむふむと思わせるものがある。でもやっぱり、お話でしかないような気もするんだよなあ。
お話といえば、より「お話」な点で面白かったのはセックスアピールの話。
著者によると、女性の身体の性的な装飾──豊かな乳房、張った臀部はそれぞれ豊かな授乳能力や
産道の広さを示す「欺きのシグナル」ではないかと論じる人もいるそうだ
(という表現を著者は使っているが、著者自身もおそらくそう考えているのだろう)。
ともあれ、おそらく本書の主眼は「ヒトの性はなぜかくも奇妙なのか」ということを
他種(ゴリラやボノボなど)と比べて明らかにするということにあったのだろう。
そういう面では成功していると言えるかもしれない。