ショーペンハウエル 「女について」 

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12Ms.名無しさん
一夫一婦制が布かれている、わたしたちのヨーロッパ地区において、『結婚する』ということは、
男性が自己の権利を半減し、かつ、自己の義務を倍化するという意味になる。考えてみると、法
律が女性に男性と同等の権利を与えたときに、当然、法律は、また、女性に対して、男性の有っ
ているような理性をも与えなければならなかったのであろう。ところで、法律が女性に対して承
認する権利と名誉とが、女性の自然的な関係を、より多く超えて高められれば高められるほど、
実際に、この特典にあずかるようになる女性の数は、それだけますます減っていく。そして、法
律は、これら少数者に、その度を超えて与えたのと同僚の自然的な権利を、それ以外のすべての
女たちから奪いとるのだ。なぜなら、一夫一婦制の機構と、それに付随する婚姻法とが、何ら斟
酌するところなく、一般的に、女生徒男性とを全く同等の価値あるものと認めてしまい、これに
もとづいて、女性に賦与されたー反自然的な、しかも女だけに利益のあるー地位は、聡明にして
注意深い男性をして、かように大きな犠牲を払って、しかも、かように不平等な契約を結ぶこと
を、はなはだしばしば躊躇逡巡せしめるからである。それゆえ、一夫多妻制の諸民族にあっ
てはすべての婦人が扶養されているのに、一夫一婦制の民族においては、結婚している婦人の
数は、ほんのわずかばかりに限られ、扶養者を有たぬ婦人が、無数に、取り残されていて、その
上流社会に属するものは、無用の老嬢として坐食しているが、下層社会にあるものは、不適当な
重労働を課されるか、さもなければ、売春婦となるのだ。