皮づくりの工程
60年以上にわたって皮づくりをしてきた當山嘉晴さん(78歳)と、息子である嘉美さん
(49歳)に皮の製造工程を見せていただくとともに、皮づくりという仕事への思いを語っ
ていただきました。現在は嘉美さんが毛のついた皮を三味線に張れる皮へと仕上げる工程
を担当し、乾燥と胴に張るのは嘉晴さんの仕事です。
<皮剥ぎ>
週3回、大阪府と和歌山市から保健所で処理された犬が運ばれてくる。1回につき20〜
30頭あるが、今は保管する冷凍庫が満杯に近いため、津軽三味線に使えそうな大きめの犬
を選んで“めくる”(皮を剥ぐ)。すぐに加工しないものは冷凍庫へ。皮を剥いだあとの
部分は、保健所が回収し、岐阜県の動物保護センターで焼却処理される。
<仕込み・毛抜き>
表面の毛を取り除く。まずソーダ液に漬けて毛を取りやすくする(夏は2日、冬は3〜
4日)。それから皮を「まさ」と呼ばれる木の板の上に載せ、セン包丁(刃を落とした包
丁)で柔らかくなった毛をこそぎ落とす。
<荒だおし>
皮の裏についているニベ(脂)を取り除く。ローラーとローラーの間に皮をいれ、回転
によって脂や老廃物を取り除く機械は、嘉晴さんが開発した。水洗いしたあとにさらにロ
ーラーにくぐらせ、皮の表面をなめらかにする(荒だおし)。
ローラーを通した皮はスッキリと白く、透明感のある布のようになった。
音は皮が教えてくれる 〜父・當山嘉晴さん
14歳でこの仕事を始めた。それはきつかった。ちょっと力を抜くと脂が抜け切らず、白い
皮が乾いた時に黄ばんでしまう。何回、親方に怒られたか・・・。
昔(戦前)は、うちみたいな三味線製造屋が大阪市内だけで17軒あったけど、みんな止
めてしもうて、今は全国で4軒、大阪ではうちだけ。それだけ苦しい。厳しい。
作業が厳しいのは、食べていくためには仕方ない。それだけじゃなくて、犬の皮が手に
入らんのです。昔は、犬を獲る人から死骸を買うてた。せやけど子どもが友達から「おま
えのお父さん、犬獲りや」と言われるのがつらくて、みんな捕獲人をやめてしまった。う
ちは保健所から入るから続けられるけど、そうじゃないところは皮が手に入らないから廃
業するしかない。
「犬殺し」「犬獲り」って言うけどね、保健所がやらなあかんことをやってきたんやから、
仕事にはちがいない。私も和歌山市と大阪府で捕獲人をやってました。野犬がうろついて
困るというような連絡が保健所に入ったら、捕獲人が呼ばれるんです。
犬をひっかける針金の引き方なんかは簡単にできるもんやない。その腕を見込んで、保
健所は我々を雇ったわけです。
今は、表向きは何も言われない。でも陰では言う。「ああ、汚い」「(犬が)かわいそ
うな」と。保健所で処分した犬の皮を使っていても・・・。目の前で言われれば、「あん
たは私の仕事を邪魔するのか」と言うけど、我々の前ではよう言わん。
逆に若い人は、看板見て「ここで三味線つくってはるわ」と言うても、三味線の皮が何
でできているのかは知らない。
ブームの三味線も、皮がないと始まらない
「僕らがいなかったら、三味線はつくられへん」。そう思い始めたのが25〜6歳の時です。
保健所からくる犬の皮を剥いで三味線にするけど、殺すのとは違う。皮を三味線に使うこ
とで、死んだ犬を生かすのやと思ってる。年に一度は和歌山や森之宮へ供養にも行きます。
最近は不景気で注文もさっぱり。輸入ものの安い皮も入ってきてるしね。タイにいる友人
に勧められて、うちも輸入したことがあるんですよ。毛がついたままの皮が塩漬けで送ら
れてくるんです。でも毛を抜いたらすぐわかる。暑い国やから皮膚病に罹っていて、その
跡が残るんです。100枚のうち、使えるのは2割。もったいないからキレイなところだけを
選んで使うけど、皮そのものの値段は安くても、輸送費や手間を考えたら割に合わないの
で止めました。今は向こうの職人が加工して、張るだけの状態になったものを輸入してい
るらしい。僕らはあんな皮をどうやって使うのかなと思うけど。
まぁ、結局、三味線作りってこんなにグロイわけだ。
で、問題なのは三味線の演奏家や愛好家と言われる人たちはこういうグロイところ
には目をつぶって見ない振りをしている愚劣な人種と言うことだ。
自分たちの耳の痛い話をするやつが現れると意味もなく馬鹿というしか出来ない
脳無しさんだしね。
そもそも小学校で三味線を教えようなんてアホのすることだ。
何から出来てるか教えられないんだからね。
ヴぁーーかって感じだね。