以前は,君が代は音楽として駄作だと思っていたのですが,さいきん考えを変えました.
内藤孝敏氏の『三つの君が代』(一九九七年・中央公論新社:現在中公文庫)などを読むと
君が代の曲ひとつに,いろんな問題がからまっていることがわかります.
http://plaza3.mbn.or.jp/alpha_plus_music/kimigayo/index1.html
まず,明治時代には三種類の君が代が存在した.
薩摩藩の海軍がイギリス人音楽教師のフェントンにつくらせたもの(第一の君が代)は,
薩摩琵琶の旋律を採譜しただけの幼稚な旋律で当初から不評だった.そこで海軍関係者の
要望により,雅楽の林広守とドイツ人音楽教師エッケルトによる第二の君が代が制作され
る.われわれが今日聴く君が代の旋律は,この第二の君が代(のはずなのだが困ったこと
に・・・後述).そして,第三の君が代は,文部省によってつくられる.文部省と海軍省
の間の官僚的セクショナリズム,なわばり争いなど面白いが,ここでは省略する.第三の
君が代は結局,普及しなかった.内藤氏は,第二の君が代は音楽的にも傑作であるが,
第三の君が代は,凡庸な文部官僚が関わった駄作であるとしている(この点は,おおむね
私も同意).
---つづく---