堺 雅 人 が好きな喪女 6

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26彼氏いない歴774年
「さっきの男、喪子のことずっと見てた」
喫茶店を出ると雅人が目をすがめたような微笑を浮かべ、ポツリと言った。
「そう?気のせいじゃない?わたしなんかにみとれる男なんていないって」
「見てたよ、舐めるような視線で・・なんかおれ、むかむかする」
片頬をぷーっと膨らませ拗ねた顔をする子供のような雅人を見て喪子はおかしくなりクスッと笑った。
喪子は雅人の独占欲がうれしかった。もっと独占してほしかった。喪子は雅人だけの女になりたいといつもおもっていた。
「もしかして嫉妬した?」喪子がてれ隠しで冗談ぽくおどけると、雅人はちらりと流し眼でこちらを見た。
ふたりの視線が絡み合う。
微笑が消えた雅人の目はいつもより鋭い光が宿り、潤んでキラキラして美しかった。
せつなげな目に吸い込まれるように見とれ、身動きできなくなった喪子は次の言葉が出てこなくなった。
完全に言葉を失ったとき、雅人の顔がゆっくりと近づいてきた。
喪子はドキドキしながら目を閉じ、彼のキスを待った。

雅人は普段はレンズの厚い黒縁メガネをかけている。
喪子と会うときはコンタクトレンズをつけてる。
一見、どこにでもいそうな黒縁メガネの普通の男、でも喪子だけは知っていた。
素顔の雅人が端正で美しい顔立ちをしていること。
喪子だけにしか美しい素顔は見せようとしない。その雅人のギャップに喪子はメロメロなのだ。

ふたりの唇が重なりそうになったそのとき、雅人はなにかを見つけ、身体をさっと離し距離を置いた。
喪子が振り返るとふたりの共通の知り合いが来た。
「やあ!堺じゃん、なにしてんの?あ、喪子ちゃんも一緒か!旦那さん元気?」
喪子は夫との約束を思いだし、忘れたかった現実に連れ戻されたような気がして少し落ち込んだ。
このあと喪子は夫と食事の待ち合わせをしている。今日は喪子の誕生日ディナー。
雅人との楽しいデートはもうすぐ終わる。
喪子は別れが切なくなり、雅人を見つめた。
雅人のせつなく熱い刺す様な視線を受け止めた。
「恋人同士にみえる」
ふたりを見ていた友人の一言で我にかえり、慌てて「何言ってんの」と笑って否定した。
喪子は夫と食事している間中、今日の雅人との甘やかな時間を思い反芻していた。
雅人が嫉妬したこと、雅人がキスしようしたこと、そして雅人のせつなくも力強い美しい目。
喪子は雅人を想わずにはいられなかった。