喪「おい、立てるか」
彼『ゲホッ…ん』
静まり返る玄関
「よし私は鍋をうぉおおおおおお!!?」
強く、私の逞しい腕が引き寄せられた
「何をする、ああそうだ、あんた椎茸は食えるか?ハハッ、大好物なんだ」
彼はドアを開け、すっかり日の沈んだ外へさりげなく屁をかました私を連れ出した
『来て』
「おい、雨が降っている、戻るぞ」
『いいから』
「…」
神社へ着くと、彼のごぼうのような足が止まった
「おい震えてるぞ、寒いんだろ」
『さむい』
「ったく」
五月だがすでに潮の噴いたジャンバーを彼の肩にかけた
『芋けんぴ…』
「ほら帰ろう、暖かい鍋を食べようじゃあないか」
『いらない』
「何故だ?私の小銭臭い手に切られた野菜達は食べたくないか」
『いらない』
「そうか…実は初めから、お前を呼ぼうと思っていたんだがな、しかたあるまいな」
『俺がほしいのは』
私のたらこ唇に、薄く冷たい感触が残る
『どこまでも逃げて、隠れてよ、絶対見つけ続けてあげる』
「おのれ…」
『喪ちゃんは俺の囚人』
私は全速力で逃走した
しかし、そのすぐ後ろを、もやしが駆けてくる
(ドターーーン)
「!?おい、大丈夫か」
『う、うぅ…グッ…』
「捻挫か…もやしが調子乗りやがるから」
広い背中を彼に向けた
「乗れ、行くぞ」
『ごめんなさい』
「かまわん、帰ったら手当をしよう、それよりあんた軽いな、ちゃんと飯食ってるか」
『甘いね』
「ああ…?」
『ほら、喪ちゃん捕まえた』
「お前がこけただけだろう」
『わざと』
「捻挫は?」
『嘘』
「ならおろすぞ」
『だめ、喪ちゃんの背中好きだから、おぶっててよ』
イェエーース!!イッッエェーース!!!oh…