人に言えないような恥ずかしい妄想を書き込むスレ2

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917彼氏いない歴774年
>>916

四段目『十三夜月(二)』

ある夜、ふと気付くと枯空がいなかった。あわてて表に出ると、
枯空は月明かりの中にたたずんでいた。「月が綺麗なものでな。つい見とれていた」と
聞いてもいないのに、饒舌になるにつけ、私の不安はゆるぎないものとなった。
「もうお身体は良くなったのですし、余りある好意もたくさん頂きました。そろそろ
元居た場所にお帰りになるべきかと・・・」と言うと、枯空は驚いて私を見た。
月明かりに照らされて枯空の精悍(せいかん)な顔が浮かび上がる。
お互いの視線が離れなくなり、その瞳に吸い込まれそうになった。
「そなたの言葉が誠なのか、それとも瞳が語る言葉が誠なのかわからない」
「私にだってわかりません。枯空様の胸のうちが・・・」

枯空はあのとき、困ったような、怒ったような、奇妙で複雑な表情をした。
そして何も言わず、ただ私を引き寄せるしかできなかったのだろう。
背中にまわされた腕の強さが、私をいっそう切なくさせていた。