ビデオ判定導入前に問われる審判の姿勢/オピニオンD/デイリースポーツ online
http://www.daily.co.jp/opinion-d/2014/07/21/0007162897.shtml 2014年7月21日
自分の非を認める‐。これまで見てきた審判員の印象を覆す、ある出来事があった。7月14日
にナゴヤドームで行われた中日‐阪神戦。5‐3と中日リードの八回1死一、三塁から中日・和田が
放った痛烈なライナーを、右翼・福留がギリギリで捕球したかに見えた。
東一塁塁審はアウトをコール。この判定に中日ベンチから谷繁監督が出て猛抗議した。すぐさ
ま審判団が集まって協議した結果、アウトの判定が覆り、フェアとしてゲーム再開。本塁打のビデ
オ判定ならともかく、プレーが動いている中で判定が変わるのは異例中の異例だ。
試合後、東塁審はこう報道陣に説明した。「アウトと判定した僕に疑念が生じた。だから他の審
判に聞いたんですけど、3人は全員、フェアの判定。僕が一番、悪い角度で見てしまったかもしれ
ない」。これまで何度も微妙な判定を審判員に取材してきたが、ここまで素直に自らの非を認めた
方はいなかった。
さらに「審判が協議して判定を変えることはルールとして認められていますので」と付け加えた東
塁審。ではなぜ、今まで明らかな“誤審”であっても判定は覆らなかったのか。審判は不可侵とい
う不文律が野球界にあり、判定ミスもまたプレーの一部として捉えられてきた歴史を持つ。
元阪神捕手の城島健司氏がかつて「審判の方もプロなんだから。ボール、ストライクとか判定に
関してこちらからとやかく言うことはない」と語っていたように、お互いが同じ立場に立つことで信頼
関係は保たれてきた。だが近年、首脳陣、選手への退場宣告数を誇る審判員も出てきた。審判
は絶対‐。その意識が強くなりすぎた結末が、メジャーで導入されたビデオ判定、チャレンジ制度
ではないだろうか。
今回の東塁審の判断に非を唱える現場関係者はいなかった。和田監督の「アウトのジャッジで
プレーが変わったのでは?」という抗議にも、「アウトをコールしたのはセカンドへ送球した後です」
と毅然とした態度で説明したという。
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