STAP細胞の論文で画像の使い回しなどの疑惑が相次ぎ指摘されている問題で十四日、ようやく開かれた理化学研究所(理研)
の会見。ノーベル化学賞受賞者の野依(のより)良治理事長が急きょ出席し、謝罪したものの、「世紀の発見」の真偽を問う質問に、
理研幹部は「不正は確認されていない」と繰り返すばかり。歯切れの悪い会見は四時間に及んだ。
午後二時から東京都中央区の会議室で開かれた会見には、海外メディアを含む約二百人が詰め掛けた。テレビカメラ約三十台
の前で、当初出席を予定していなかった野依氏を含む幹部五人が「世間にご迷惑、心配かけたことをおわびする」と頭を下げた。
野依氏は「未熟な研究者が膨大なデータをずさんに扱っていた」と、小保方(おぼかた)晴子研究ユニットリーダーを批判。
今回のような研究者の無責任さは「氷山の一角かもしれない」とまで踏み込んだ。上司に当たる理研の発生・再生科学総合研究
センターの笹井芳樹副センター長の責任も「シニアになるほど大きい」と断じた。
しかし、実験データの捏造(ねつぞう)やSTAP細胞の真偽など、問題の核心に質問が及ぶと、傍らの理研幹部にマイクを渡す姿
が目立った。
その理研幹部も「不正は見つかっていないが、調査中」「真偽の確認は第三者の検証、再現が唯一の手段」と煮え切らない答え
に終始。小保方氏の会見については「今はその段階ではない。調査がほぼまとまった時点で機会を設ける」と話した。
当事者が公の場で語らないことや理研の説明の不十分さを、多くの科学者が問題視している。東京大医科学研究所の上昌広
(かみまさひろ)特任教授は「意図的にデータをいじっていれば、それは不正だ。理研は不正があったと認めるべきで、今日の発表は
身内をかばっているように感じた」と話す。
「科学者は結論に責任を持つべきだ」。上教授はツイッターでもそう訴えてきた。「小保方氏や笹井氏が自ら真相を説明するべきだ。
理研の姿勢は、世間の感覚と離れている」と批判した。
■「公正さ回復努力」理研研究者ら声明
小保方氏らが所属する理研発生・再生科学総合研究センター(CDB)の研究室のリーダー二十八人のうち二十二人が十四日、
「科学の公正性を回復、担保するためあらゆる努力を払う」とする共同声明を発表した。
声明にはiPS細胞を用いた初の臨床治療の準備を進める高橋政代CDBプロジェクトリーダーらも参加。事態を「大変深刻に
受け止めている」と陳謝し、「社会および研究者コミュニティーにたいして最大限誠実な行動をとる」と誓っている。
STAP細胞の発表で注目を集めたCDBだが、論文への疑惑が報じられるようになって「内部でも真相が見えないことへの不安と、
研究所の信頼が低下することへの危惧が広がっていた」(広報担当者)という。声明は、研究者らが自主的に発表を決めたという。
ソース(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014031502000110.html