福井県敦賀市の冬の食卓を彩る「にしんずし」。こうじを用いたなれずしの一種で、酸味を帯びた大根と柔らかいニシンの歯ごたえが
食欲をそそる。主材料の身欠きニシンは、江戸期に北前船が北海道から運んだ代表的な積み荷の一つ。港町の歴史に裏打ちされた
郷土料理だ。
「にしんずしは敦賀祭りのごちそう。それに子どものころは、ニシンがおやつ代わりだった」と振り返るのは、毎年にしんずしの調理
講習会を開いている敦賀市生活改善実行グループ連絡研究会の山本静子会長(75)=敦賀市。「小さいときは母親から、結婚したら
しゅうとめさんに教わって、その家のにしんずしの味を覚えたんだよ」。敦賀の家庭で代々受け継がれてきた味だ。
天谷調理製菓専門学校の天谷祥子理事長によると、ニシンは血中コレステロールを低下させるなど優れた食材。「発酵させることで
さらに栄養価の消化吸収が良くなる。理にかなった料理です」
同グループに作り方を聞いた。1週間干した大根を一口大に切り、2〜3日間、3%の塩水で下漬け。身欠きニシンは、米ぬかを
いれた水に一晩漬け柔らかくする。
下準備が終わればいよいよ漬け込み。使用する乾燥こうじに細かく切った唐辛子を混ぜておくと、辛みが均等に行き渡る。まずは
一段に大根と好みの大きさに切ったニシンを並べ、こうじをまぶす。あとは同じ作業の繰り返し。次の段を漬ける時に大根とニシンを
ずらしておけば、ニシンと大根を均等にすくうことができる。
同グループでは、最後にしょうゆとみりんと酒を混ぜた調味料をまぶす。通常は塩とこうじだけだが「調味料を入れると、味がまろやか
になるんです」(山本会長)。涼しく風通しのよい場所で保管しておけば、2週間後には食べられる。
味の好みの変化か手間を嫌ってか、にしんずしをつくる家庭は減少している。ただ同グループの講習会には市外から引っ越してきた
人の姿も。「敦賀からこの味が消えたらさみしい。守り続けたいね」。にしんずしを味見する山本会長の表情に笑顔が浮かんだ。
ソース(福井新聞)
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/event_calture/48050.html 写真=食べごろになったにしんずし。こうじのにおいが食欲をそそる
http://www.fukuishimbun.co.jp/modules/news0/photos/20140112165250_986510198.jpg