【国際】安倍首相の靖国参拝、朝日の世論調査でも6割賛成…肯定的な海外メディア、外国政府は皆無。国内と海外の認識のずれは危険な兆候

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2諸星カーくんφ ★
>>1の続き)

 安倍首相の「恒久平和への誓い」を読んで、小泉純一郎首相の靖国参拝との違いを感じるのは「加害の歴史」に対する認識である。

 「小泉総理の靖国神社参拝が、過去の軍国主義を美化しようとする試みではないかとの見方は誤りである。総理はかねて、
靖国神社への参拝は、多くの戦没者に敬意と感謝の意を表するためのものであり、A級戦犯のために参拝しているのではなく、
また、日本が極東国際軍事裁判の結果を受け入れていることを明言している」

 「総理はまた、我が国が、『植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた』
ことを認め、『歴史の事実を謙虚に受けとめ、痛切なる反省と心からのお詫びの気持ちを常に心に刻』むべきことや、『世界の国々との
信頼関係を大切にして、世界の平和と繁栄に貢献していく決意』であることを、繰り返し表明している」(外務省HPより、靖国神社参拝に
関する政府の基本的立場)

 小泉首相は「加害の歴史」と東京裁判を認め、A級戦犯への参拝意図を明確に否定していた。靖国参拝で中国や韓国との関係は
冷え込み、欧米メディアは「隣国との関係悪化」に懸念を示したものの、声高に小泉首相の靖国参拝を批判しなかった。

 これに対して、安倍首相の「恒久平和の誓い」は「加害の歴史」には言及せず、A級戦犯については「靖国参拝については、戦犯を
崇拝するものだと批判する人がいますが、私が安倍政権の発足した今日この日に参拝したのは、御英霊に、政権一年の歩みと、
二度と再び戦争の惨禍に人々が苦しむことの無い時代を創るとの決意をお伝えするためです」と直接の答えを避けているようにも
聞こえる。

 今回の安倍首相の靖国参拝を肯定的にとらえた海外メディア、外国政府は皆無だろう。それに比べて、国内では、安倍首相の靖国
参拝を支持する声が多い。中韓との関係を改善するため首相在任中は参拝を見送るのではとの見方もあっただけに、電撃参拝は
国内と国外のパーセプションギャップ(認識のずれ)をさらに広げてしまう結果となった。

 小泉首相当時と比べて、尖閣をめぐる中国との緊張がギリギリまで高まっていることも、海外メディア、外国政府の懸念を強めている。

 また、安倍首相とオバマ米大統領の関係は、小泉首相とブッシュ大統領のそれほど緊密でも親密でもない。ケリー国務長官、
ヘーゲル国防長官が千鳥ケ淵戦没者墓苑を訪問して牽制した米国にとって、安倍首相の靖国参拝は予想できなかったのではないか。

 安倍首相から発せられるメッセージは断片的で、小泉首相ほどわかりやすくはない。しかも、先の大戦について、安倍首相の立場が
もう一つはっきりしない。

 米歴史家ジョン・ダワーが『敗北を抱きしめて』でいみじくも指摘したように、国内にとどまった多くの日本人にとって、あの戦争は悲惨な
「被害の歴史」として記憶された。しかし、アジア諸国や英米にとって日本は間違いなく「加害国」なのだ。

 領海侵犯力づくで尖閣の現状を変更しようとしている中国や、中国と急接近する韓国とうまく折り合うのは難しいとしても、安倍首相は
自分の取った行動について同盟国の米国や、欧州諸国にはっきりと伝わるメッセージを発しなければならない。

 中国が尖閣を含む東シナ海上空に防空識別圏(ADIZ)を設定し、一段と地域の緊張が高まる中、国内と国外でパーセプションギャップ
がこれだけ広がっているのは極めて危険な兆候だ。

●木村 正人 在英国際ジャーナリスト

 ロンドンを拠点に活動する国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。日本国憲法の改正問題(元慶応大学法科大学院
非常勤講師=憲法)や日英両国の政治問題、国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部で大阪府警・
司法キャップを務めるなど大阪で16年間、事件記者を務め、東京で政治部や外信部を経験。2002〜2003年、米コロンビア大学
東アジア研究所客員研究員。2012年7月、独立してフリーに。

(終わり)