★イタイイタイ病解決調印 発生102年、三井金属と
富山県の神通川流域で発生した四大公害病の一つのイタイイタイ病(イ病)の被害者らでつくる
「神通川流域カドミウム被害団体連絡協議会」(被団協)と原因企業の三井金属(東京)は十七日、
富山市内で、イ病の前段階症状の発症者に一時金を交付することなどで全面解決を確認する合意書を交わした。(川田篤志)
※合意書の骨子
http://www.chunichi.co.jp/hokuriku/article/news/images/PK2013121802100096_size0.jpg 一九一一(明治四十四)年の最初の患者発生(国の推定)から百二年、
全国初の公害病と認定された六八(昭和四十三)年から四十五年。
イ病は、被害者側と企業側が問題決着と位置付ける歴史的な瞬間を迎えた。
合意書では、国の基準で公害病患者とは認められていないカドミウムによるイ病の
前段階の症状である腎臓障害のある人に対し、三井金属側が、一人あたり六十万円の一時金を支払う
「神通川流域住民健康管理支援制度」を創設すると明記。
これとは別に被団協側へ解決金を支払い、被害者側は三井金属側の謝罪を受け入れて
「問題が全面的に解決したことを確認する」とも記された。解決金の金額は公表していない。
健康管理支援制度は七五年以前に汚染地域に二十年以上居住したことが条件。
対象となる腎障害の程度は、尿細管障害の指標となるタンパク質「β2ミクログロブリン値」の
尿中濃度が一グラムクレアチニンあたり五ミリグラム以上とした。年明けから申請受け付けし、再来年の支払いを目指す。
三井金属や被団協側は、制度による一時金の対象が五百人以上にのぼるとみている。
存命者だけだが、二〇〇九年度以降に亡くなった人に六十万円の弔慰金を支払うことで大筋合意しているという。
イ病問題は、二〇一二年三月に汚染農地の復元事業が完了したが、
多くの被害者は体内にたまったカドミウムによる腎機能の悪化に悩まされており、
その補償が残された課題となっていた。
合意書調印式は富山市内のホテルであり、三井金属の仙田貞雄社長が謝罪した上で、
被団協の高木勲寛代表(72)=富山市=と合意書に署名した。
合意を受けて富山県の石井隆一知事は来年度、健康管理支援制度の対象要件に該当する全住民を対象に、
あらためて健康調査を一斉実施する考えを明らかにした。対象は八千人近くにのぼるという。
被団協は、神通川や汚染農地の回復のめどがついたとして〇九年七月に全面解決に向けた協議を三井金属に申し入れ、
十二回の協議の末、今月九日に合意を確認した。
協議に参加した弁護団の山田博弁護士は「一九七二年にイ病の賠償と汚染土壌復元に関する誓約書、
公害防止協定を三井金属と結んだのに並ぶ大きな節目だ」と評価した。
●衷心よりおわび
三井金属の仙田貞雄社長の話 衷心よりおわびする。今後の補償と公害防止に誠意を持って取り組む。
●謝罪受け入れる
被団協の高木勲寛代表の話 謝罪を受け入れるが、合意は多くの先人の辛酸の歴史を原点とするものと再確認しなければいけない。
●敬意を表したい
石井隆一富山県知事の話 大きな節目を迎えたことは、富山県としても感慨深い。それぞれ誠意を持って全面解決した。
大変な努力だったと思う。敬意を表したい。
イタイイタイ病 富山県の神通川流域で発生した四大公害病の一つ。
三井金属が採掘した神岡鉱山(岐阜県飛騨市)の排水に重金属「カドミウム」が含まれ、
流域住民が汚染された飲み水やコメを通じて摂取した。体内に蓄積されると腎臓障害を起こす。
尿と一緒にカルシウムが体外に排出されて骨軟化症に進展すると、イタイイタイ病になる。
重症の場合はくしゃみ程度で骨折するほどで、激痛に見舞われた患者が「痛い、痛い」と叫んだのが名前の由来。
その後、全国各地でカドミウム汚染が判明した。中国でも近年、同様の症状が確認されている。
中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/hokuriku/article/news/CK2013121802100003.html