★ 公共施設1万5000棟、震度6強で倒壊の恐れ 財政の壁で地域差
全国の自治体庁舎やマンションなど大型建物の耐震化が遅れている。
会計検査院は9日、自治体所有の公共施設のうち、国の耐震基準を満たさず、
震度6強の地震で倒壊する懸念のある建物が1万5479棟に上るとの調査を公表した。
うち3797棟は特に耐震性が低く倒壊の危険性が高い。民間の建物の耐震対応も道半ばだ。
政府は投資減税の対象に耐震工事を加え、対策を急ぐ。
検査院は東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島を除く44都道府県の公共施設約15万6千棟の耐震化状況を調査した。
1981年の建築基準法改正に基づく耐震基準を満たさない建物は、公立学校を含む教育施設が1万3458棟、
市町村役所や警察署などの庁舎施設が1306棟、医療施設が715棟だった。
基準を満たす建物の割合を示す耐震化率は、全体で82.9%。教育施設が84.3%と比較的高かったが、医療施設は76.1%。
庁舎施設は70.4%。自治体役所は61.2%にとどまった。子供や傷病者が集まる施設で耐震化が先行する一方、
自治体の災害対応拠点となる役所の建物で対策が遅れている。
民間の建物も問題が残っている。国土交通省によると、全国のマンション戸数は2012年末時点で約590万戸。
このうち、建築基準法改正前の「旧耐震基準」で建てられた物件は約106万戸ある。
とりわけマンションの建て替えは所有者の8割の合意が必要で、耐震化がほとんど進んでいない。
今年4月時点で建て替え工事が完了したマンションはわずか183件。
旅館や大型小売店でも耐震性に不安のある建物は多いとみられる。
国は15年までに住宅や大規模な建物の耐震化率を90%とする目標を掲げる。
だが公共施設を所有する地方自治体は財政難にあえいでいる。民間の建物も含めれば、政府目標の達成は微妙な情勢だ。
耐震化の遅れを懸念し、政府も対応を強化している。
11月25日には、不特定多数の人が出入りする大規模な建物などの耐震診断を義務付ける「改正耐震改修促進法」を施行する。
9月末にまとめた企業向けの設備投資減税では、耐震工事を実施する場合に固定資産税を2年間にわたり半減する措置を盛り込んだ。
民間部門の耐震化の遅れは、裏を返せば建て替えなどの潜在需要が大きいともいえる。
第一生命経済研究所によると、マンション建て替えの潜在需要は今後10年で、
国内総生産(GDP)の5%分に相当する22.8兆円になるという。
震災リスクに備えた投資が活性化すれば、日本経済の潜在需要が実際の需要になり、経済成長を下支えすることにもなりそうだ。
日経新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC09013_Z01C13A0EA1000/