★ 豪、6年ぶり政権交代 アボット氏首相就任へ 保守連合圧勝
【シドニー=高橋香織】7日に投開票されたオーストラリアの総選挙は野党・保守連合(自由党と国民党)が
下院(定数150、任期3年)の過半数を獲得して大勝した。約6年ぶりの政権交代が実現する。
次期首相に就任する自由党のアボット党首(55)は法人税減税やインフラ整備を進め、豪経済の再生を目指す。
日豪の経済連携協定(EPA)交渉にも弾みがつく可能性がある。
選挙管理委員会によると、下院選は開票率96%の段階で、保守連合が改選前の72議席を大幅に上回る88議席を獲得した。
改選前に71議席だった労働党は57議席にとどまっている。与党労働党のラッド首相は敗北宣言し、党首を辞任する意向を表明した。
一方、自由党のアボット党首は同日夜、シドニーで「豪州の政権は交代し、ビジネスに開かれた」と勝利宣言した。
週内に第28代首相に就任し、直ちに組閣に着手する。同党首は選挙戦で、過去6年の労働党政権の間に財政赤字が拡大したと強調。
堅実な経済運営に努め、規制緩和で資源産業などをてこ入れすると訴え、支持を得た。
世界的な資源価格の下落などを背景に、2013年度(13年7月〜14年6月)の実質国内総生産(GDP)成長率は2.5%にとどまると予想されている。
新政権の当面の課題は資源頼みの経済からの脱却となる。
アボット氏率いる保守連合政権は、労働党政権が導入した炭素税と鉱物資源利用税の撤廃に着手する。
豪州で資源・エネルギー産業に携わる日本企業などにとって、負担軽減につながる。
法人税率もいまの30%から28.5%に引き下げる方針で、企業活動の活性化を目指す。
「インフラ首相と呼ばれたい」。アボット氏は選挙戦でこう繰り返した。
広い国土を効率的に結ぶインフラ整備の15年計画を立案し、成長戦略の柱とする方針。
鉄道より道路整備を優先すると明言しており、労働党が選挙戦の終盤に打ち出したブリスベーン―メルボルン間の高速鉄道計画の実現は遠のいた。
日本が新幹線を売り込む構想は見直しを迫られそうだ。
アボット氏は07年に始まった日豪EPA交渉の早期妥結を最優先課題と位置づけており、交渉は加速する可能性がある。
保守連合は環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で焦点の一つとなっている投資家と国の紛争解決(ISDS)制度の受け入れにも柔軟な姿勢を示している。
労働党政権は日本の調査捕鯨の中止を求めて国際司法裁判所に提訴したが、
アボット氏は「日本を大いに困惑させた」と提訴に批判的だ。日本をアジアの重要なパートナーで「50年代からの変わらぬ友人」と表現している。
安全保障では、米国との同盟関係を最も重視する自由党の伝統的な路線を継承する。
豪州は12年から北部ダーウィンで米海兵隊の本格駐留を受け入れており、拡大する可能性もある。
ただアボット氏はシリアへの軍事介入には慎重な構えだ。
保守連合を構成する国民党は農家の利益を代表する地方政党。
貿易自由化には積極的だが、外資による豪州の農地買収には反対の立場を取っている。
日経新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM0702T_X00C13A9FF8000/