>>2 ★中国国防費の急増は“異常”か?
●(中国の)国防費の対GDP比率は最低に近い
中国の「改革開放」政策によって経済成長が始まったのは1978年で、
当初の約10年間は国防費は極端なまでに抑えられ、原資は経済発展に集中されたが、
少し余裕も生れたのか89年から2ケタ増に転じた。
88年から2012年までの24年間に、公表国防衛費は215.2億元から6503億元へ、30.2倍の増加となった。
その間GDPは1兆5042億元から52兆1836元へ35倍余になり、歳入は2357億元から11兆7593億元へほぼ50倍だ。
この結果、公表国防費のGDPに占める率は87年の1.45%から、昨年で1.27%に低下し、
日本の0.96%よりは高いが、米国の4.57%よりはるかに低いのはもちろん、
冷戦後、急速に軍備を縮小した英国の2.5%、仏の1.86%を下回り、ドイツの1.2%とならぶ水準となっている。
ちなみに台湾は2.2%、韓国は2.5%、インドは1.97%だ。
●国防予算増=軍事力増大ではない
経済成長にともなって国防予算が増えても、それに比例して軍事力が増大するものではない。
日本の場合、防衛予算が1960年からの24年で18.7倍になったが、自衛隊の戦力が18倍になったわけではなかった。
物価が上昇するだけではなく、国が豊かになり、国民の生活水準が向上すれば、
民間にさほどひけを取らないように将兵の給料のほか、毎日の食事や兵舎、官舎、衣服などを改善する必要が生じる。
また兵器の近代化、特にIT化によって兵器の単価は急騰した。
日本の例では最初の超音速戦闘機F104は1機約4億円だったが、次のF4は20億円余、現在のF15は80億円、
今後入るF35は最初の4機を1機(予備部品付き)102億円で契約したが、
米国の2014年度国防予算案では1機1億9000万ドルになる、という。
維持費の大部分は部品代だから、航空機の単価の上昇は維持費の上昇にも直結する。
このため多くの国の空軍も機種更新のたびに機数が減る傾向にあるが、
中国空軍の数的減勢は極端で1980年代末には戦闘機・攻撃機約4500機を擁したが、今日では約1500機に減少、
うち800機はソ連で1950年代に初飛行したMiG19、MiG21を中国で改装した物など、ひどい旧式だ。
●初の空母も波があると艦載機が発進できない
潜水艦は80年代に117隻あったのが、今は58隻(うち旧式24隻)、
水上艦だけは増えて80年代末の53隻が75隻になったが、うち旧式が約40隻だ。
昨年の9月就役した初の空母「遼寧」はカタパルト(艦載機射出装置)がなく、波があると発進できない代物で実用にならない。
陸軍はかつての230万人から160万人に減り、戦車も1万1450輌から7400輌に減り、うち4300輌は超旧式だ。
防衛省・自衛隊の幹部達も中国軍の数的減少を承知しているが、「戦力は量掛け質。数は減っても近代化で戦力は向上している」と言う。
中国軍だけの戦力を見ればそれは正しいのだが、装備の更新、近代化は、よほど貧しい国を除いて、
どの国の軍も行っているから大局的には打ち消しあう要素だ。
http://diamond.jp/articles/-/36016