エジプトで3日発生した軍事クーデターは、経済の低迷などに対する国民の強い不満に後押しされていた。2011年の民主化要求運動
「アラブの春」で軍の離反を招きムバラク独裁政権を崩壊させた大規模デモが、初の民主選挙で選出されたモルシ大統領も追い落とした。
超法規的な国家元首排除が繰り返され、エジプトは民政復活に向け再び険しい道を歩むことになった。
◇観光低迷、投資は減少
モルシ氏の「終わりの始まり」は6月30日、就任1年の記念日だった。全土で反政権デモが起き数十万人が辞任を要求。モルシ氏の
出身母体・穏健派イスラム原理主義組織ムスリム同胞団の本部が襲撃された。
こうした事態を受け、軍は1日、モルシ氏らに48時間以内に妥協しなければ介入すると通告した。だが、大統領は2日夜の演説で、
自らが留任する挙国一致内閣を提案。軍は「国民の要求に応えていない」と判断し権限を剥奪、同胞団幹部も拘束した。
歴代政権に弾圧された同胞団だったが、2012年1月に終わった人民議会(国会)選挙では第1党に。昨年6月の大統領選決選投票
でもモルシ氏が勝利。国民も経済立て直しや民主化推進を期待し昨年8月の支持率は72%に達した。
だが、経済政策の失敗が同胞団政権をつまずかせた。革命の影響で主要産業の観光が低迷し、海外からの投資も減少。国際通貨
基金(IMF)からの融資導入を図ったが、条件であるパンや燃料の補助金削減などを決断できなかった。補助金カットは同胞団が
支持基盤とする貧困層を直撃する恐れがあった。新憲法を巡っても野党との対立が先鋭化。国政経験や人材が不足する同胞団政権
は状況を打開できなかった。
この結果、治安は悪化し物価は上昇。12年の殺人は前年比約2.5倍の1885件。食料品価格は2年で約3割上がった。失業者は
革命前から100万人増え失業率も12%を超えた。
◇強権対応で国民離反
強まる批判に政権側は強権的に対応し、批判的な活動家やジャーナリストを相次いで「扇動」容疑で拘束した。「危機など存在しない」
との政権首脳の発言は、生活苦を痛感する国民の支持離れを招いた。5月には大統領辞任署名活動が拡大。6月には支持率が25%
にまで低下していた。
今後は、大統領選挙に向けた世俗・リベラル派の動向が焦点だ。「反同胞団」では一致したが、昨年の大統領選では候補者乱立で
共倒れした。
エルバラダイ前国際原子力機関事務局長や前回大統領選に出馬したサバヒ氏ら有力候補の連携が鍵を握りそうだ。
ソース(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20130705k0000m030086000c.html http://mainichi.jp/select/news/20130705k0000m030086000c2.html 写真=カイロの大統領宮殿周辺でクーデターの成功を祝う反モルシ派の市民
http://mainichi.jp/graph/2013/07/05/20130705k0000m030086000c/image/001.jpg