出発地岡崎に戻った土居さん(写真提供:りぶらサポータークラブ)
http://images.keizai.biz/okazaki_keizai/headline/1352984926_photo.jpg 岡崎市図書館交流プラザ「りぶら」(岡崎市康生通西4)に11月10日、全国の図書館2640カ所を回り終え、
「じてんしゃ図書館」の土居一洋さんが到着した。
土居さんは1978(昭和53)年、神戸生まれ。徳島県で育ち、21歳の時に仕事を求め愛知県に来たという。
工場の派遣社員として半田市、豊田市などに移り住み、2003年秋、岡崎に引っ越した。
「じてんしゃ図書館」を始めたきっかけは一冊の本との出会いから。2004年3月、豊田の書店
「ヴィレッジヴァンガード」で「百年の愚行」(Think the Earthプロジェクト刊)を見つけたという。
「店員さんが書くPOPに『この本から目を背けてはいけない』とあった。そう言われたら手にするしかない
じゃないですか」と土居さん。もともと環境問題に関心があり学生時代にはボランティアなどにも参加して
いたというが、「自然破壊の惨状を切り取った衝撃的な写真が多く載っていたほか、池澤夏樹さんなどの
エッセーが寄せられていたことに感銘を受けた」と話す。
「環境問題というと難しい本が多いが、この本(百年の愚行)は知識でなく感覚に訴える本なので、子どもから
お年寄りまで多くの人に広めたくて、日本中の図書館に収蔵してもらいたいとお願いをして回ることを思いついた」
2005年1月、岡崎市シビックセンター(羽根町)の分館を皮切りに全国を巡る。当時「りぶら」はまだ完成しておらず、
岡崎市中央図書館(明大寺町、現在は岡崎市美術館に統合)を回った後、蒲郡市から東へと旅立った。
「日本に約3500の図書館があるが、『百年の愚行』がすでに置かれている図書館に行く必要はないのでそれらを
省き3000カ所を目標にスタートした。巡回していく途中も蔵書検索すると私が行く前に収蔵する図書館が徐々に
増え、2640カ所になった。足掛け7年かかった」と土居さん。
(
>>2へつづく)
http://okazaki.keizai.biz/headline/730/ (
>>1からのつづき)
「『じてんしゃ図書館』を名乗ったのは2005年5月、北海道に渡った函館市から」という。自転車の後ろにつないだ
水車をまねて自作した本棚が同図書館。同年1月に岡崎をスタートした際は、ベビーカーを改造したものに本を
平積みしていたという。「その年の12月に仙台市で自転車ごと壊れてしまった。せっかく荷台を作るなら人の目に
つきやすいようにと思い水車型の荷台にした」と話す。本を立てて置けるようになったほか、ご飯を炊くかまどや
野菜の栽培もできるようにしたという。
環境関連の本20冊ほどを積み、図書館や役場などのほか、興味を持って声を掛けてくる人に説明して本を貸し出し
たという。「貸し出し」といっても本は土居さんが自費で購入したもので、各地を旅する土居さんに返しようがないため、
寄贈するようなもの。「表紙をめくった最初の白いページに『読み終わったら葉っぱの絵を1枚書いてほかの人に
読んでみるよう薦めてください』といったメッセージを書いて渡している」。各地の図書館に収蔵してほしいと土居さん
が働き掛けている「百年の愚行」は、「じてんしゃ図書館」では貸し出さない。
自費購入した本は延べ約1600冊に上る。野営生活をしながら、資金が不足すると現地で働き生活費と図書購入費を
稼いでいたという。
長旅を終えた土居さん。今月14日から岡崎を離れ、実家の徳島県に帰った。「これからまずエコ検定を受検する。
あとは資金をためながらいずれ出版社を興したい」と意欲を見せる。「場所は滋賀か京都がいい。全国の図書館を
回って気付いたのは、琵琶湖があるせいか滋賀県と、1997年CPO3が開かれ京都議定書が制定された京都府の
各図書館は環境への関心が高いのかもしれない。他地域に比べ蔵書が充実していると感じた」
「もちろん岡崎もいい。愛知県の中で私が住んだ他の街より人々がゆったりしている。城下町のせいですかね」