さくら市の60歳以上が集まる学習会「菜の花学級」が15日、東日本大震災の被災地を巡る日帰りバスツアーに旅立った。
折しもこの日は年金支給日。「被災地を経済的に支援しよう」と、財布のひもを緩めて食事やお土産を購入する高齢者に一日同行した。
ツアーは日帰り。午前7時半、会員の約7割にあたる112人が大型バス3台でさくら市を出発し、正午前に宮城県名取市の閖上地区に
到着した。津波で生徒14人が亡くなった閖上中学校を訪れ、記念碑や花束に手を合わせた。
喜連川から参加した吉川キヨさん(87)は「切ないね。まだ若いのにね」と涙を浮かべた。中学校近くに設置された資料館
「閖上の記憶」スタッフで、震災の体験を語った針生淳子さん(41)は「自分のことのように話を聞いてくれた。1年半が経っても
まだ復興されない現状を知ってもらえたと思う」。
正午過ぎ、バスは名取市の仮設住宅に併設された「閖上さいかい市場」へ。氏家公民館の橘川恵介館長が「今回のツアーの趣旨でもある
経済支援です。いっぱい買って、貢献しましょう」とマイクで声を上げると、車内から一斉に歓声があがった。約20分の滞在時間で
参加者は主に食品店に詰めかけ、競うように商品に手を伸ばした。
氏家の大嶋弘道さん(70)は、ささかまぼこや牛タンなどの食品を中心に1万円分を購入。「一人ひとりは小さな金額でも、ツアーで
来ると意味がある」。氏家の吉成満由弥(ま・ゆ・み)さん(66)は市場でかまぼこや昆布、帰路で立ち寄った仙台市中心部で
カバンなど計約6千円を使った。「年金の使い道としてはいいと思う」と話した。
ツアーのきっかけは昨年10月、さくら市の氏家公民館が開いた防災講座だった。約300年前に鉄砲水で町の大半が流されるなどした
市の歴史と、昨年3月の東日本大震災による津波の被害について学んだ会員から「何かできることをしたい」との声が上がり、実施が
決まった。橘川館長は「被災地を支援しながら、自分たちの街の水害にも興味を持ってもらえたらうれしい」と話した。
朝日新聞デジタル:
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