★アスベスト:中皮腫の死者増、石綿の労災認定減少 基準厳格化影響か
アスベスト(石綿)を原因とする肺がんで、死者数が増えているとみられる一方、労災認定件数が減少していることが、
厚生労働省の統計などでわかった。救済されない患者が増加している可能性を示す結果。
支援団体は、厚労省が07年、石綿による肺がんの労災認定基準を厳しくしたことが背景にあると指摘し、
「石綿問題は拡大している。認定の制限は不当で、やめなければ、救われない患者が増えるばかりだ」と訴える。【大島秀利】
厚労省人口動態統計によると、石綿被害の規模を示す指標である中皮腫の2011年の死者は1258人。前年よりも49人増えた。
現在の統計が始まった95年は死者500人で、2・5倍になった。
一方、石綿による肺がんの死者数の統計はないが、中皮腫の死者数の2倍とする海外の研究者の説が有力で、
石綿による肺がんの死者数も中皮腫と同様に増加しているとみられる。
しかし、石綿による肺がんで労災認定を受けた患者数は、06年度、783人となったのをピークに減少傾向が続き、
11年度には399人まで落ち込んだ。
労災認定が減った原因として、支援団体の石綿対策全国連絡会議は、石綿作業に10年以上従事したことなどを条件としていた
厚労省の労災認定基準が07年、10年以上従事しても、乾燥した肺1グラムに石綿小体(たんぱく質で包まれた石綿)が
5000本以上あるなどの条件を満たさなければ原則、不認定とするなど、厳しくしたことが影響していると指摘している。
この基準で不認定となった患者らが処分の取り消しを求めて訴訟を起こし、今年になってから、
東京地裁(2月)と神戸地裁(3月)で、いずれも「厚労省基準は不当」とする原告勝訴判決が続いた。
一方、中皮腫が原因で労災認定を受けたのは、06年度の1001人を最高に、近年は年間500人前後で横ばい状態になっている。
毎日新聞 2012年09月24日 東京朝刊
http://mainichi.jp/feature/news/20120924ddm041040057000c.html