【政治】県民サービス向上? 三重県議会、来年から通年制導入

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県民サービス向上? 県議会、来年から通年制導入

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来年1月から通年制に移行する県議会=県議事堂で

 県議会は来年1月から、現在の年2回制から通年制に移行する。緊急時に速やかに議会を開いたり、行政への監視
機能が高まることが最大のメリットだ。一方で議会運営の充実など中身の変化は特になく“器”だけが変わった印象はぬぐえ
ない。県民には少々分かりにくい、今回の議論を振り返った。

 七月、県議九人でつくる「会期等のさらなる見直しに関する検証検討プロジェクト会議」が「通年制の導入が適当」との
報告をまとめた。今春、栃木と長崎両県が導入しており三重県は全国の都道府県で三番目になる見通しだ。今後、
条例を改正し、来年一月から実施される。

 通年制で県民にどんな恩恵があるのか。

 報告書は、東日本大震災など不測の事態に素早く議会を招集し、対応できると指摘。さらに県の行政活動を継続して
監視でき「県民サービスの向上につながる」と強調する。

 県議会は二〇〇八年に全国で初めて年四回制から二回制に移行。〇九年には専門家による諮問会議を設置し、議会
改革への取り組みを加速させた。会期に関して諮問会議は一一年一月の最終答申で「通年制を前提にした年間スケ
ジュールの検討」を盛り込んだ。

 経緯を考えれば導入は“既定路線”とも言えるが、昨年六月に始まったプロジェクト会議での議論は真っ二つに割れた。
前向きな民主系会派「新政みえ」と、慎重な自民系会派「自民みらい」など保守系の会派が対立したためだ。

 メンバーを務めた県議によると、反対派の県議らは二回制と通年制で実質的な違いはないと主張。休会期間がなくなると、
地元での活動ができなくなると心配する県議もいた。

 風向きが変わったのは春以降だ。六月二十一日の第十二回で各派が歩み寄り、最終報告に通年制を盛り込むことに。
ある自民みらいの県議が明かす。

 「会派として改革に消極的だと見られることを避けた。会派出身の山本教和議長は全国都道府県議長会会長。先行
する県が出ておりやむを得なかった」

 では肝心の「中身」は変わるのか。

 プロジェクト会議の座長を務めた杉本熊野県議(新政みえ)は「何も変わらない」と即答。「中身の変更は四回制から二回
制への移行時にほぼ終えてしまった。通年制の議論だけが積み残されていた」と説明する。

 二回制導入の際は、常任委員会の日程を二回に分け、一般質問と議案質疑を分離するなど議論の充実に向けて抜本
的に変えた。今回も委員会日程など中身の変更を話し合ったが「不要」となった。結局、これまでの議会日程がそのまま適用
される見通しだ。

 ある県議は自嘲気味に言う。「中身が変わらないんだから今でも二回制でいいと思っているよ」

 議会改革を主導してきた前議長の三谷哲央県議(新政みえ)は「一年間、いつでも自らの手で議会を開くことができ、画期
的。大きな進歩だ」と評価。「ただ、委員会の在り方など改革は続けなくてはならない。通年制の利点を十二分に生かす議会
運営が今後も必要だ」とも指摘している。

◆視線

 知事がいったん議会を招集すれば、その後はいつでも議長が議会を開けるのが通年制だ。地方分権が進み、首長の権限が
強まる昨今。行政を常に監視できる意味でも“器”が変わる意義は大きい。取り組みを評価したい。一連の議論は会派間の
考え方や思惑の違いから割れた。終盤になって両者が折り合えたのが不思議だ。やはり政治は素人には見えにくいものなのだろう。
立場を超えて中身の議論が深まらなかったのも残念だった。とかく県議会は市民から遠く、分かりにくい。通年制が「県民サービスの
向上につながる」と胸を張るからには、各議員がメリットを分かりやすく伝えていく責任もある。

渡辺泰之/中日新聞三重 2012年9月17日
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