売上高9兆円のEMS企業、話題の鴻海とは何者か
http://www.emeye.jp/2012/0908/stockname_0908_005_1.jpeg 鴻海グループの富士康科技集団(フォックスコン)で生産されるiPhone Apple/ロイター/アフロ
苦境にあえぐシャープ<6753.T>との出資交渉を続ける世界最大のEMS/ODM企業、鴻海精密工業<2317、台湾>
(ホンハイ)。EMSとは電子機器の受託生産、相手先ブランドによる設計製造を行なう業態のことで、同社は米アップル社を
始め世界中の企業から生産を請け負う。従業員は100万人、11年の業績は連結売上高約9兆3200億円、営業利益
約2200億円。日本で売上高が9兆円を超す企業は数えるほど。まさに世界的の大企業だ。
EMS市場におけるシェエは5割超に達し、業界2位のフレクストロニクス・インターナショナル(シンガポール)が売上高2兆
3900億円、3位のジェイビル・サーキット(米)が1兆3400億円なので、存在感はまさに圧倒的。シャープの12年3月期
連結売上高2兆4500億円はおろか、パナソニック<6752.T>の7兆8400億円、ソニー<6758.T>6兆4900億円をすら大きく
上回り、サムスン電子の11兆5500億円に迫る勢いを見せる。1974年創業の同社は何故ここまでの巨大企業になったの
だろうか。
従来は垂直統合と呼ばれる研究開発、部品製造、生産までを1社が一括して行なう方式が主力だった。現在でも日本
企業やサムスン電子<005930>などをこの方式を維持する。しかし近年はアップルや任天堂<7974.OS>に代表されるように、
研究開発と販売のみを行い部品調達、組み立て加工を委託する方式が急速に増えてきた。同社のその流れに乗り、中国に
おける安価な人件費を武器にアップルから「iPhone(アイフォーン)」シリージの生産を受託。同社の躍進にアップルからの
受注に抜きはあり得ないが、アップル側も大量の新製品を同時に揃えることの出来る鴻海の生産力抜きに急成長はなかった
かもしれない。
EMS市場は今後もコスト削減を図りたいメーカーが積極利用することが考えられ、伸び続ける可能性は高い。その中で
鴻海がシャープに出資を表明したのは何故か。これは、EMS市場の薄利多売という構造が関係している。メーカー側が
生産工程を委託するのは、人件費が掛かりその部分の利益率が最も低いため。逆に研究開発、販売は利益率が高いため
この構図は別名「スマイルカーブ」と呼ばれる。鴻海は巨大さでこの点を補ってきたが、近年は中国で人件費が急上昇しており、
同社最大の武器だった中国工場における「安い人件費」が揺らいできた。また、スマートフォンなどは競争が激化しメーカー
側からの価格引き下げ要求も強くなっている。好調の続く鴻海とて決して将来が安泰と言うわけではない。
そのため、鴻海はより利益率の高いスマイルカーブの両端に手を付けたいのが本音。これがシャープ出資の大きな要因に
なっている。品質の高い液晶パネルを持つシャープに出資すれば川上の部品製造に関わることが出来、受注へ柔軟に対応
できる。川下ではグループ企業が家電量販店に参入しており、単なるEMS企業ではなくなってきた。シャープとの提携が実現
すれば独自ブランドの投入も容易。シャープに対する出資交渉は発表から半年経ても諸状況からかなり難航しているが、
鴻海の立場から見れば何としても抑えたい企業なのは間違いない。
なお、同社のブランドとして良く聞く富士康科技(フォックスコン)は鴻海グループの系列会社。
宮尾克弥/EMeye 2012/09/08 14:40
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