従来「クマはいない」と思われていた比叡山系で、ツキノワグマが初めて捕獲された。5月に京都市左京区の曼殊院近く、8月に
大津市の奥比叡ドライブウェイ沿いで異なるオスのクマがイノシシ捕獲用のおりに入った。最も南では銀閣寺近くの大文字山で
目撃情報がある。今も周辺にいる可能性があり、秋の行楽シーズンを前に注意が必要だ。
スギの幹が無残にえぐられている。奥比叡ドライブウェイ沿いの山林。8月28日朝、1頭のクマが立ち上がっているのを近くの
工事作業員が見つけた。クマは昼ごろ、米ぬかが仕掛けられたイノシシ捕獲用おりに入っているのが確認された。
希少種のため滋賀県や大津市はクマを奥山へ移して放そうとしたが、クマがおりを破りそうな勢いで顔や手を突き出し、木や地面
を爪でえぐって暴れたため、やむなく射殺したという。体長119センチ、推定3〜4歳だった。県自然環境保全課は「比叡山でクマの
捕獲記録は今までなく、クマは比良山系にはいても、比叡山にはいない認識だった」と驚く。
比叡山一帯では今夏、クマらしき目撃情報が相次いだ。曼殊院近くの山林では5月28日、同様のおりに体長130センチの
オスのクマが入った。京都府森林保全課は「鞍馬方面とつながる左京区の静市や岩倉で捕獲例はあっても、国道367号
(鯖(さば)街道)や白川通以東の比叡山では聞いたことがない」とする。捕獲したクマには個体識別タグを付けた上で、「場所は公表
できないが、比叡山とは相当離れた市北部の奥山に放した」という。
ただ、その後も6〜8月に左京区北白川や山中越えなどで目撃が続いた。大文字山では7月20日に登山者が見たという。
奥比叡ドライブウェイ近くで捕まったクマと同一かどうかは不明だが、9月には新たに左京区八瀬で目撃があり、まだ周辺にいる
可能性がある。
京都大大学院農学研究科の高柳敦講師(森林生物学)は「ツキノワグマはオスの方が広範囲に移動し、移動距離は1日最大
4キロ、行動圏は1年で50平方キロメートルを超える例もある」と指摘。今回のクマについて「京滋や福井の山地にまたがって分布する
北近畿東部個体群のクマと考えて問題はない」が、どの方角から、どんな要因があって現れたのかは「全く分からない」という。
今年はドングリなどクマの餌となる木の実が2年に1度の凶作になるとされ、クマの出没増加が全国的に懸念される。府や県は、
鈴の携帯や食べ物の始末など出没防止策の徹底とともに、目撃時は管轄の役所や警察に通報するよう呼び掛ける。
ソース(京都新聞)
http://kyoto-np.jp/politics/article/20120909000061 写真=奥比叡ドライブウェイ沿いの山林で捕獲されたツキノワグマ。おりの中から木を爪でえぐっている
http://kyoto-np.jp/picture/2012/09/20120909175802kuma.jpg