★ 中国BYDの苦境鮮明に EV販売、1〜6月は300台と低迷
【広州=桑原健】電気自動車(EV)の開発で注目を浴び、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が出資する
中国自動車大手の比亜迪(BYD、広東省)の苦境が深まっている。1〜6月期のEVの販売台数は約300台と低迷。
EV事業を資金面から支えてきた携帯電話関連事業は大幅な減収となり、中国のEV開発の先頭に立ち続けられるかの正念場を迎えている。
王伝福董事長は28日の1〜6月期の決算発表記者会見で、同社のEV「e6」と家庭で充電できる
プラグインハイブリッド車(PHV)の販売台数について「それぞれ200〜300台だった」と明かした。
同社は2008年に世界初の量産型PHVを発表し、11年秋には中国大手初の個人向けEVの量販に乗り出して注目されたが、
経営の柱となるにはほど遠い。
中国政府が次世代新エネルギー車の本命とするEVの販売停滞は、各地の地方政府の支援が広がらないことが原因だ。
同社の「e6」は36万9800元(約460万円)と高価で、充電のためのインフラも必要。
本社のある広東省深セン市は独自の補助金を設けて購入を支援するほか、タクシーに採用するなどして充電施設の設置を進める。
だが、他の都市の多くは地元メーカーの開発を待ちながら支援体制を整える構えだ。
同じ広東省でも広州市は補助金とインフラの両面で「まだ販売できる状況でない」(比亜迪)。
広東省政府関係者は「広州市には地元メーカーの広州汽車集団がある。比亜迪を支援する発想はない」と話す。
自動車は各地の雇用と税収を支える主要産業。EVの補助金制度を設けても、対象を地元生産車に絞る都市が多い。
こうした各地の「地方保護主義」のため、e6の個人向け販売はほぼ深セン市内に限られている。
比亜迪の1〜6月の売上高は前年同期比0.4%減の213億9900万元となり、純利益は94%減の1600万元と、利益がほとんど上がらない体質になりつつある。
業績悪化の主因は携帯電話関連の不振だ。携帯電話の部品・組み立て事業は売上高が11%減となり、携帯電話などの電池事業も9%減となった。
これらの事業はフィンランドのノキアや米モトローラを顧客として成長。
従来型の携帯電話からスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)への移行で両社がシェアを落とすのに伴い、比亜迪の受注量も減少した。
今月初めには同社幹部らが自社株の売却により、1カ月間で8億元超を得ていたことが判明した。
会社側は「個人的な理由」と説明するが、市場では「今後の成長を悲観した動き」(中国の証券アナリスト)との見方が広がっている。
王董事長は「自動車の一段の中高級品シフトと携帯電話事業のスマホへの対応を進める」と強調した。
まずはガソリン車の時代を乗り切る踏ん張りが試される。
日経新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2905D_Q2A830C1FF2000/