光合成昆虫の最初の証拠
アブラムシが原始的な日光採取システムを持っているかもしれない。
http://www.nature.com/polopoly_fs/7.5903.1345222949!/image/1.11214.jpg_gen/derivatives/landscape_300/1.11214.jpg 太陽のエネルギーを収獲することができる色素がエンドウヒゲナガアブラムシの代謝を担っている?
SIMON FRASER/SCIENCE PHOTO LIBRARY
アブラムシの生態は奇怪だ。メスは妊娠している状態で生まれてくることがあり、またオスは時折口がないまま生まれ、
交尾の後まもなく死んでしまう。これら奇怪性リストに加え、彼らが日光をも取り込み、そのエネルギーを代謝に使って
いるかもしれない可能性が今週発表された研究で示された。
アブラムシは動物の間ではカロチノイドと呼ばれる色素を合成するユニークな能力で知られる。多くの生物は健全な
免疫機構を維持したり特定のビタミンを作るためにこれら色素に頼っているが、すべての動物はそれを食事を通して
摂取しなくてはならない。フランス、ソフィア・アンティポリスにあるSophia Agrobiotech研究所の昆虫学者Alain
Robichonらは、アブラムシのこれらの色素は太陽のエネルギーを吸収し、それをエネルギー産生に関与する細胞
機構に転送していることを示唆した。
動物では前例がないが、この能力は他の界では普通に見られるものだ。 特定の菌類やバクテリアと同様、植物と
藻類はカロチノイドを合成しており、それら色素はこれらの生命体すべてにおいて光合成機構の一部を成している。
アブラムシで見られる高濃度のカロチノイドはアブラムシ自身が作っているという2010年の知見を参考に、Robichonの
チームはこの昆虫がなぜこのような代謝的に高く付く化合物を作っているのか調べ始めた。
カロチノイドはアブラムシの色の原因であり、アブラムシの色はそれを見ることができる捕食動物の種類を決定する。
Robichon研究室のアブラムシの体の色は環境の影響を受け、寒い時は緑色、最適条件ではオレンジ、そして
個体数が多く限られた資源に直面しているときには白い個体が現れる。
すべての生物のエネルギー交換の「通貨」であるATPのレベルをアブラムシで測定したところ、その結果は驚くべき
ものだった。カロチノイドを高濃度で含んでいる緑のアブラムシはこれらの色素を欠いている白色のものより明らかに
多くのATPを含有していた。さらに、これら二種のカロチノイド含有量の中間の量を持っているオレンジ色のアブラ
ムシが光の下に置かれたとき、ATP生産が増大し、暗闇に移動すると低下した。
そこでオレンジ色のアブラムシを擦り潰してそのカロチノイドを抽出したところ、この抽出物が光を吸収しそのエネ
ルギーを受け渡していることがわかった。
著者の1人でSophia研究所の昆虫学者Maria Capovillaは、アブラムシが本当に光合成していることを確定する
には、もっと多くの研究が必要である点を強調するが、今回の研究結果はその可能性を強く示唆している。
体内でカロチン分子が並べられる方法もその仮説を支持するものだ。色素は、昆虫の外皮下の0〜40マイクロ
メーターの深さの位置で層を成しており、太陽の光を捕えるための理想的な配置をとっている。
コネチカット州West Havenにあるエール大学の昆虫遺伝学者で、アブラムシがカロチノイド産生遺伝子を持って
いるという最初の発見をしたNancy Moranは、まだまだ多くの答えられていない疑問があることを指摘する。「アブラ
ムシの餌は彼らがその大部分を使うことができない糖を過剰に含んでおり、エネルギー生産はアブラムシにとっては
最も後回しにしてよい問題であるように思われる。」
このことはアブラムシが光合成をする必要性に疑問を投げかける。しかしCapovillaは、新しい宿主植物に移住する
時のような、環境ストレスがかかった時、この機構がバッテリーバックアップとして働く可能性を推測している。
First evidence for photosynthesis in insects
Kathryn Lougheed/Nature News 17 August 2012
http://www.nature.com/news/first-evidence-for-photosynthesis-in-insects-1.11214 を超訳
>>2あたりに続く