東海、東南海、南海地震などが同時発生する「南海トラフ巨大地震」で最大23・9メートルの津波が
想定される高知県須崎市が、1946年の昭和南海地震を体験した当時の子ども107人の文集を
1000部復刻したところ、著作権法が禁じる無断複製にあたることがわかり、配布を取りやめた。
市は、80歳前後になった筆者を捜して復刻の承諾を集め始めたが、まだ30人。
「先人の教訓を今こそ伝えたい」と、市は配布をあきらめていない。
作文集は「南海大地震資料」と題された3分冊で、2年前に地元公民館で原本が見つかった。
地震3か月後の47年3月に旧須崎高等小学校の教諭が子どもらに書かせたとみられる。
市は1月、住民啓発用に、「海からの警告」(A4判257ページ)のタイトルで復刻印刷。
配布直前に外部から「著作権侵害のおそれがある」との声が寄せられた。
著作権法では、個人名義の場合、死後50年間、団体名義で公表後50年間、著作権が保護される。
市は、顧問弁護士と相談した結果、復刻版の配布には、筆者全員の承諾が必要と判断。
「著作権者不明」として文化庁に作文利用が可能になる裁定を申請する制度もあるが、
同庁は市の照会に対し、「子どもの作文は前例がなく、裁定が下りる可能性は低い」と回答している。
昭和南海地震で被災し、ボランティアで編集作業にあたった大家順助さん(79)は
「記憶が生々しい時期に書かれた作文だけに、被害の様子がよく伝わってくる。この体験を役立ててほしい」と話す。
市地震・防災課は「お蔵入りにはさせたくない。承諾を集める一方で、著作権をクリアする方法を探りたい」としている。
http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20120818-OYO1T00240.htm?from=main1