スズキのインド子会社、マルチ・スズキは16日、先月18日に起きた従業員らによる暴動で閉鎖している
印北部ハリヤナ州のマネサール工場の操業を21日から再開すると発表した。再開は1カ月ぶり。操業再開
にあたり工場の契約従業員を直接雇用するなど新たな人事システムを採用。安全対策も強化し再発防止に
努める。
16日、現地でマルチ・スズキのR・C・バルガバ会長と中西真三社長らが記者会見した。
マルチ・スズキとハリヤナ州政府はこれまで再開に向けて協議を続けてきた。会見でバルガバ会長は
「(暴動に関与した)正規の従業員500人を解雇したほか、警察部隊の500人配置などを州政府が約束
してくれた。従業員や幹部の安全確保ができたと判断した」と語った。
マネサール工場は売れ筋の小型車「スイフト」などを1日あたり1500〜1700台生産している。しかし、
暴動後に多くの従業員の逮捕や失踪が相次いだ。再開当初は正規従業員が300人体制で作業にあたるが、
1日あたりの生産台数は通常の1割程度の100〜150台が精いっぱいだという。
当面は現地市場で人気のあるスイフトのディーゼル車の生産を優先。マネサール工場でまだ対応できない
工程や他車種の生産では同じハリヤナ州内にあり暴動の影響がないグルガオン工場も活用する方針。
段階的にマネサール工場をフル稼働に戻していく考えだ。
操業停止で1日あたり6億〜7億ルピー(約8.4億〜9.8億円)分の車両生産が滞ったが、「在庫もあり
業績への大きな影響は避けられそうだ」(スズキ幹部)という。
工場の従業員は約4000人で、このうち半分は契約従業員だ。賃金が比較的安く抑えられている不満が暴動
を誘発した可能性も指摘されている。同社は、9月2日から契約従業員の直接雇用など新たな人事制度を導入。
また、正規従業員に引き上げやすい新たな人事システムの導入も検討するなど労務対策を強化する方針。
「最終的には正規8割、契約2割という従業員の割合にもっていきたい」(中西社長)という。
再開後の22日から、スズキの鈴木修会長兼社長がインドを訪問。印西部グジャラート州の新工場の建設
予定地などを視察するほか、モディ同州首相とも会見する予定。
マネサール工場での暴動は7月18日朝、インド人従業員がインド人班長から注意を受けたことに怒り暴力
を振るったことが発端。暴徒化した従業員らが工場内の事務所に火を放ちインド人の人事担当者が死亡、
日本人幹部を含む100人以上が負傷した。捜査当局はこれまで組合幹部を含め100人以上を逮捕している。
暴動の原因については「まだはっきりしない」(中西社長)という。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGU16010_W2A810C1000000/