効果的なトレーニングとは、どんなものだろうか? 比較的やりやすいものから始め、段階的に難しいものに挑戦でき、
最終的な到達点、目標の設定が容易だとトレーニングも進めやすいに違いない。
そして一緒に励まし合えるような仲間がいて、成功した時に目に見える成果があるのもよいだろう。
こうした観点から見ると、日本にはネット犯罪者のための理想的なトレーニング空間がある。
ソーシャルゲームだ。例えば、若年層による事件が発覚しているアメーバピグなどがそれに当たる。
そんなに簡単に犯罪行為が可能なわけはないと思う方もいるかもしれない。だが、今春発生したグリーのカードバトル型
ソーシャルゲーム「探検ドリランド」事件をみてほしい。バグを利用して、レアカードを複製して多額の
現金を稼いだ者は少なくない。数百万円の利益をあげたものもいるとされている。
多数の参加者がおり多額の現金が動くにもかかわらず管理体制はぬるい。それがソーシャルゲームだ。
(1) 段階的に犯罪の腕を磨ける
(2) ターゲットに事欠かない=会員数が多い
(3) 犯罪への精神的ハードルが低い
子どもたちは、この3つの条件を備えたネットの遊び場=ソーシャルゲームに首ったけである。これからこの3条件を検証する。
(1) ソーシャルゲームでは段階的に腕を磨ける
最初は、リテラシーの低い者をターゲットにし、じょじょに対象を高度な相手に変えてゆく。
その過程で仲間を作り、組織化する。小さな成功を収めるたびにアイテムあるいは仮想通貨という目に見える成果を得られ、仲間からほめられる。
さらに具体的な犯行方法は、ネットを検索すれば簡単に見つけられる。特にソーシャルエンジニアリングについては、
そのまま実行できるほど具体的な記述のある記事が多い。特別な情報源は必要ない。
あまたの新聞記事に具体的な記述があるのだ。トレーニングにはうってつけである。
そしてさらに先に進みたくなるような仕掛けもたくさんある。つまりより多くのゲーム内アイテムを買いたくなるようにできている。
ソーシャルゲームの売上と利益率には目を見張るものがある。タダで利用できると誘い込み、
実際にプレイしてみるとお金を払ってなにかを買わなければゲームを楽しめないという罠が、
いかに効果的に人を誘い込んでいるかを示している。単に楽しくないだけではない。
友達とパーティを組んだ時、迷惑をかけることにもなるのだ。ソーシャルゲームは単に
物欲を刺激するだけではなく、責任感やら友情やらいろんなものを刺激して、金を使わせようとしてくる。
そこに子供が引っかからないわけがない。お金がない時に、あきらめられない子供は、ネット犯罪によって先に進むのである。
若年犯罪者養成機関としてのソーシャルゲーム
(一田和樹:作家、カナダ在住)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120814-00000000-scan-secu