財政資金捻出に向けギリシャ政府が進めている国有資産の売却で、北部の山間部にある発電所
(投資額8億ドル=約626億円)をめぐる動向が、ギリシャのユーロ圏残留の可否を占う試金石として注目を集めている。
「ギリシャの起源」として知られるフロリナ近郊にあるこの発電所は、国有電力会社のパブリック・パワー
(PPC)が売却を予定する4つの発電部門で最新式の設備を備える。売却は国内エネルギー市場の
規制緩和を求める欧州連合(EU)の4年越しの要請に応じるのが狙い。しかし、ギリシャで最も強力な
労働組合は計画を阻止するため、夏の観光シーズンの最盛期に全国規模の停電実施も辞さない構えを示している。
1万8000人余りが加盟する労組GENOPの責任者、ニコス・フォトポロス氏は先月、アテネにある自身の事務所で、
「われわれはギリシャの全国民のためにPPCを救う。信念と情熱を持って懸命に闘う。
深刻な状況にある国は戦略的に重要な事業をコントロールする必要がある」と強調した。
PPCの状況は一見、経済危機に見舞われているギリシャの葛藤を示す一例のようだが、
ユーロ圏残留を維持するためギリシャがなお直面している問題も浮き彫りにしている。
ギリシャ国民に国内で発電した電力を供給するため1950年に創設されたPPCの問題は、
政治的庇護(ひご)や利権、海外資金への依存といった特異性に代表されるギリシャ経済の縮図といえる。
以前、新民主主義党(ND)に所属していたマノス元財務相は「PPCには非常に強力な労組があり、
これまでのところ変化を阻止している。政府はエネルギー分野全般、特にPPCで達成したいことについて
明確な戦略が必要だ」と話している。(ブルームバーグ Jonathan Stearns、Natalie Weeks)
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/120813/mcb1208130502009-n1.htm