◇塾通えない中学生に無料指導
経済的な理由などで塾に通えない中学生に無料で勉強を教える塾が、県内3か
所で運営されている。元教師や主婦らの市民グループ「子ども・教育と貧困問
題を考える会」の「タダゼミ」だ。貧困を進学の障害にしてはならないとスター
トし、3年目を迎えようとしている。(野村順)
2008年のリーマンショック以降、中学生が家庭の経済的事情で塾に通えず、
志望した高校に進めないケースが多くなっているとされる。教育費が十分に準
備できない小中学生には、学用品の購入費や給食費などを支給する「就学援助
制度」があり、甲府市の支給認定者の割合は、2006年度の9・9%(14
43人)から、11年度には10・2%(1415人)に増えた。
そんな状況を背景に無料塾は全国で広がっており、タダゼミは、中学3年生を
対象に10年11月、甲府市でスタートした。11年秋に南アルプス教室、1
2年4月には長坂教室(北杜市)を開設。講師約50人、登録生徒は3教室合
わせて約50人で、毎週土曜の3時間、生徒1〜2人に講師1人という少人数
学習を行っている。
「一般の塾だと追い立てられる感じがあるんだけど、ここは自分の理解度に合
わせて学べる」と話すのは、甲府教室に通う男子生徒(15)だ。「考える会」
事務局の芦沢かおりさん(40)は「学力向上だけでなく、勉強する意識を養
うための居場所を提供するのも役割」と意義を強調する。
甲府教室は甲府市中央公民館(甲府市丸の内)と県ボランティア・NPOセン
ター(同)を会場にしているが、設備の充実度などから使い勝手がいいのは中
央公民館だ。しかし、教室として利用した場合の年間使用料を比較すると、同
センターの5000円に対し、中央公民館は5万円程度。手弁当の塾運営には
大きな負担になる。
「考える会」代表、元高校教諭の深沢久さん(69)(北杜市)が7月、甲府
市教委に出向いて公民館使用料の減免を訴えたところ、市教委は後日、減免を
承認した。中学の教師がタダゼミを生徒に紹介するなど周囲の理解も進む。
深沢代表は、生活保護世帯の子どもが大人になって生活保護を受給し、その子
どもが学費が払えなくて高校を退学するといった「貧困の負の連鎖」を見てき
た。深沢代表は「行政とも連携し、『負の連鎖』を断ち切りたい」と話してい
る。
(2012年8月2日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/yamanashi/news/20120801-OYT8T01577.htm