内閣が設置する「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)」
ではこのたび、公共データの活用を促進するための基本戦略「電子行政オープ
ンデータ戦略」を発表した。
同戦略の目的および意義として、(1)透明性・信頼性の向上(2)国民参加・
官民協働の推進(3)経済の活性化・行政の効率化、という3点を挙げている。
透明性や信頼性については、公共データが二次利用可能な形で提供されること
により、国民が自らまたは民間のサービスを通じ、政府の政策などに関して十
分な分析や判断を行えるようになる。
国民参加や官民協働の推進に関して、公共データの活用が進展し、官民の情報
共有が図られることにより、官民協働による公共サービスの提供や、行政が提
供した情報による民間サービスの創出が促進されるだろうとしている。
経済の活性化や行政の効率化については、市場における公共データの編集、加
工、分析などを通じて、さまざまな新ビジネスの創出や企業活動の効率化が促
され、日本全体の経済活性化が見込めるという。
行政のオープン化を先行して推進
このように、公共データのオープン化を政府全体で推進するに至ったのには、
経済産業省の取り組みが大きくかかわっている。経産省では、2008年10月に開
催した「行政CIOフォーラム」の中で、行政情報のオープン化を主要課題に掲
げるなど、早期から検討をスタートしていた。2009年10月には、オープンガバ
メントプロジェクトの第1弾として、国民の意見を収集するサイト「アイディ
アボックス」を立ち上げたほか、2010年7月にはオープンガバメントに関する
実証研究サイト「オープンガバメントラボ」、同年9月には統計データをオー
プンデータ化し、それを利活用できるサイト「データボックス」を設置した。
2011年7月には、東京電力福島第1原発の事故による電力供給不足を背景に節電
意識が高まる中、電力需給データが閲覧できるポータルサイト「節電.go.jp」
を開始。APIも公開したことで、各種ガジェットやデジタルサイネージと連携
したサービスがいくつか生まれた。2011年10月には文字情報基盤を公開し、戸
籍や住民票で使う文字と互換性のあるフォントを無償で提供した。半年間で約
2万件のダウンロードがあったという。2012年1月には、各府省や自治体が提供
する被災地支援制度を一元的に集約する「復旧・復興支援制度データベース」
を立ち上げAPIを公開するなど、さまざまな分野で公共データのオープン化を
進めているのだ。
そして今年6月、ITの融合が進む重点分野(医療、ヘルスケア、交通、農業)
において新事業創出に向けたアクションプランを具体的に議論する場として
「IT融合フォーラム」を新設した。公共データや公共性の高い民間データは、
大きな財政負担なくイノベーションを創出できる“宝の山”であり、まずは国
がデータの開放を積極的に進めるとともに、それを活用して異分野融合による
価値を生み出していきたいという思いが背景にあるという。
こうした取り組みについて、経産省CIO補佐官の平本健二氏は「日本の産業振
興のため」と力を込める。民間にニーズのある公共データを提供して、新たな
サービスを創出することで、市場の活性化や経済効果が生まれることを期待す
る。
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>>2以降に続きます)
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1207/27/news018.html