◆ロンドン五輪柔道▽男子73キロ級(30日・エクセル) 男子73キロ級
で、五輪初出場の昨年世界王者・中矢力(23)=ALSOK=が決勝でロシ
アのイサエフに優勢負けし、悔しい銀メダルに終わった。同階級でのメダルは
階級変更前の96年アトランタ大会71キロ級金・中村兼三以来、16年ぶり。
92年バルセロナ大会71キロ級金の古賀稔彦らが活躍した男子中量級で、長
らく不振だった五輪に光明が差した。男子は競技初日から3日連続でメダルを
獲得した。
中矢が力尽きた。終了のブザーが響くと、あおむけになり、真上でイサエフが
両手を広げて喜びを表現する屈辱のエンディングを迎えた。大胆かつキレ味鋭
い背負い投げを駆使し大暴れ。しかし、快進撃は決勝で止まった。「金メダル
を持って帰るという目標を掲げていたので、この色のメダルはあまりうれしく
ない」と涙ぐんで言葉を絞り出すと、初の五輪を「すごく悔いが残る。決勝で
負けたのは自分の力不足」と振り返った。
開始1分過ぎ、背負い投げにいったところをもつれ、相手が巻きついてきた腕
ひしぎ十字固めで右肘にダメージを受けた。背負い投げで一度は、中矢に有効
のランプがつくが、取り消しに。しかし、3分30秒過ぎ、左腕ですくい投げ
をかけようとしたところをイサエフに返され右肩から落ちて有効を取られた。
最初の有効が取り消し判定になったことに、篠原監督は「不可解。どうなって
るんだ?」と不満顔で指摘した。
頑丈が代名詞だった中矢だが、五輪前は負傷していた右肩と右肘のけがが完治
せず調整が大幅に遅れた。得意の担ぎ技が使えず、「戦闘能力は50%。すご
く焦っている」と弱気になった。ロンドン入り後、調子を上げてきたが、大一
番で弱点を突かれた。
北京五輪後に急成長。初めて出場した昨年の世界選手権を制し、10年世界王
者の秋本啓之(了徳寺学園職)ら強力なライバルを抜いて五輪切符をつかんだ。
世界に通じる寝技は天性のものだ。「生後3か月で寝返りを打った。背筋の強
さはその頃から」と由里枝さん。中学時は夕食にラーメン丼で2合半の米をた
いらげ、牛乳瓶3本一気飲み。極め付きに3本目にはプロテインまで入れて体
を大きくした。
下を向く必要はない。男子71キロ級(現73キロ級)ではアトランタ大会以
来16年ぶりのメダル。長らく第一人者不在だった男子中量級で存在感を示し
た。中村コーチは 「それ以来、メダルがなかったのか…。あっという間でし
たね」
「まだまだ甘いということが分かった」と中矢。若き柔道家は次こそ光り輝く
メダルをつかんでみせる。
http://hochi.yomiuri.co.jp/sports/judo/news/20120731-OHT1T00047.htm