原爆で消滅した爆心地周辺の暮らしをコンピューターグラッフィックス(CG)
映像で復元してきた映像制作会社社長田辺雅章さん(74)=広島市西区=が、
自身の被爆体験や映像作家としての半生を「『少年T』のヒロシマ」にまとめ
た。
今は原爆ドーム(中区)となった旧広島県産業奨励館そばに生家があった田辺
さんは当時8歳。疎開で直爆は免れたものの家族を捜し、2日後に入市被爆し
た。目にした惨状や両親と弟を亡くした戦後の苦労をつづった。
映画制作を志す契機となった故新藤兼人監督との出会いを振り返り、病気や結
婚、子どもの誕生のたび「原爆の影」におびえた本音も打ち明ける。すべてを
奪った米国への怒りも率直に書いた。
被爆体験の風化にあらがい、客観的に伝える仕事に努めてきた田辺さん。「人
生の終盤。被爆当時を生きた一人の人間として、きれいごとだけでない心の叫
びを書き残したかった」と語る。海外の学校などでも平和教育に活用してもら
おうと前半は日本語、後半は英訳で構成。A5判、312ページ。1680円。
第三文明社。
【写真説明】田辺さんが自身の被爆体験や映像作家としての半生をまとめた
「『少年T』のヒロシマ」
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201207080100.html