自動車のデジタル化が進むなか、米自動車メーカー大手のゼネラル・モーターズ(GM)とその子会社が、カーナビなどの車内向け
情報提供サービス(車載テレマティクス)による個人情報収集をめぐる問題で批判にさらされている。
サービスの解約後も顧客の車両情報を収集し続けるとした同社のプライバシーポリシーに対し、ドライバーからの苦情が殺到。
内容の変更を余儀なくされた格好だ。今回の騒動を受け、過去にやはりプライバシー保護に関して物議を醸した交流サイト(SNS)の
フェイスブックと同じ轍を踏んでいるとする見方も出ている。
GMは先ごろ、傘下のオンスターが展開する車載テレマティクス事業について、サービスを解約した顧客に対しては車両への
データ接続を無効にするとの方針を発表した。これまではサービス解約後も車両の位置情報や速度情報などの収集を継続。
個人情報を消去した上での第三者への提供・販売が可能となっていた。
米調査会社フォレスター・リサーチのアナリスト、ヘイディ・シェイ氏は電話でのインタビューに答え、今回の顛末について
「プライバシーの保護は極めてデリケートな問題で、収集した情報をいかに扱うべきかについては明確な答えが出ていない。
顧客によっては『騙されているのではないか』と疑心暗鬼に陥る人もいる」と述べた。
オンスターの以前のプライバシーポリシーに対しては、顧客のほか3人の米議会上院議員(何れも民主党)も懸念を表明。
規制当局による調査を求めたほか、行き過ぎた個人情報収集に異議を唱える書簡を同社へ送付するなどしていた。
今回の変更を受け、今後オンスターの顧客は、車両へのデータ接続を認めるかどうか、また収集した情報をGMがどのように
使用するかについて自ら決定できるようになるという。
調査会社ストラテジー・アナリティクスのアナリスト、ロジャー・ランクト氏は電話インタビューに答え、車載テレマティクスから
得られる車両情報はマーケティングの観点から大きな価値を持つと指摘。その上で、オンスターがこれを収集・利用する事には
企業戦略として正当性があるとの見方を示した。
一方で同氏は「オンスターはやり方がまずかった。車両情報の提供の可否を顧客にあらかじめ選択させ、提供に応じる顧客に
対しては何らかの特典を与えるといったシステムを採用していれば、顧客の不安をあおる事はなかった」と説明した。
米自動車業界調査会社エドマンズ・ドット・コムのジェレミー・アンワイル最高経営責任者(CEO)はGMについて、顧客との
コミュニケーションの失敗から高い利益を得るチャンスを逸したと分析。利用者やプライバシー保護団体などからの批判を受けて
同じく個人情報の公開範囲限定に踏み切ったフェイスブックの教訓を生かしていないと指摘した。
フェイスブックに対しては過去2年間にわたり、同サービス向けのアプリケーションを開発する外部企業などに顧客情報を
どの程度開示するのかが明確でないとの懸念が浮上。指摘を受けたフェイスブック側はプライバシー設定の方法を変更する事に同意し
アプリケーション開発者による個人情報へのアクセスは顧客本人の許可を得られた場合にのみ可能となるシステムを導入している。
GMが1996年に立ち上げたオンスターは、車内でのネット利用や高度な経路誘導(ナビゲーション)システム、事故時の自動通報や
盗難車の追跡機能などを顧客に提供する。
オンスターの搭載車種は「シボレー」「キャデラック」「ビュイック」といったGM傘下のブランドの新型モデルが占めるが
今年7月には既存の車両の内部に取り付ける事でサービスの利用を可能にするミラー型の機器「オンスターFMV(フォー・マイ・ビークル)」
も発売されている。
▽ソース:SankeiBiz(サンケイビズ) (2011/12/07)
http://www.sankeibiz.jp/business/news/111207/bsk1112070504001-n1.htm ▽画像
http://www.sankeibiz.jp/images/news/111207/bsk1112070504001-p1.jpg