菅直人前首相の初動対応のまずさから「人災」とも言われる東京電力福島第1原発事故の原因について、
発生から9カ月近く経過しても、国民の疑問に答える調査結果はいまだに示されていない。
政府の調査委員会は12月26日に中間報告を出す予定だが、
これまで菅氏や枝野幸男前官房長官(現経済産業相)らへの聴取は行っていない。
9月末に設置法が成立した国会調査委員会もまだ発足していない。米国と比べ対応の遅れは否めない。
「私の関与している事実関係について、私にヒアリングせずに事実認定してもらっては困る。 要請があればしっかり対応したい」
17日の参院予算委員会で、枝野氏はこう語った。政府の事故調査・検証委員会(委員長・畑村洋太郎東大名誉教授)から要請があれば、
官房長官として当たった事故対応について聞き取り調査に応じる考えを示したものだ。
これはいまだに要請がないことの裏返しだ。調査委の小川新二事務局長は菅氏や枝野氏への聴取について
「必要に応じて実施する」と述べるにとどまる。
調査委は事故3カ月後の6月に設けられた。1979(昭和54)年の米スリーマイル島原発事故では
2週間後に調査委が発足、半年後に報告書が出たのと比べても、出足から鈍かった。
調査には、事故翌日の菅氏の強引な現地視察など初動対応の検証が不可欠だ。
菅氏も 設立時には「私自身も含めて被告だ」と啖(たん)呵(か)を切ってみせた。
しかし、 調査委は責任追及を目的としない方針で強制力もない。「政府お手盛り」との指摘も根強い。
年末の中間報告で、政府の初動対応の問題点にどこまで切り込めるかは不透明だ。
これに対し国会調査委は強制力を持つ。国政調査権を背景に、菅氏らを参考人招致することができ、
偽証罪による告発も可能だ。「政争の具にしない」との方針だが、個人の責任追及も排除していない。
ただ、史上初の試みともあって、民間委員人選など与野党間の調整に時間がかかっており、
正式発足は来月となる見通し。半年をめどに報告書をまとめるが、本格的な調査は来年にずれ込みそうだ。
こうした状況を尻目に、民間からは独自の動きが出ている。科学技術振興機構前理事長の北沢宏一氏を委員長に、
元検事総長の但木敬一氏ら7委員で構成する「福島原発事故独立検証委員会」だ。
民間企業の支援で運営されており、震災1周年の来年3月11日までに報告書を公表する方針だ。
「国際的に信用されるためにも、調査は民間も含めて多面的に行うことが必要だ」と北沢氏。
すでに海江田万里元経産相、福山哲郎前官房副長官に聞き取り調査を実施済み で、菅氏、細野豪志原発事故担当相にも協力を依頼中という。
野田佳彦首相は9月の国連での演説で、「事故のすべてを迅速かつ正確に国際社会に開示する」と表明した。
「すべて」には政治家の責任も含まれるはずだ。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111123/plc11112321520011-n1.htm