◇対象外の野良猫がネック
県内の保健所に収容・捕獲され殺処分された犬猫は10年度2578匹と、09年度より
178匹増えたことが、県食品安全衛生課のまとめで分かった。猫は09年度より179匹増加。
順調に減少していた犬も1匹減だった。中でも猫は、08年度から県が殺処分を減らす
活動などを始めたものの、容易に減らず、「家猫(所有者あり)」「野良猫」とも困難に
直面した感は否めない。【佐藤伸】
曲がりくねりながら細い道が松林の中を続く。行き止まりになり視界が開けると、約30年前に
建ったという古ぼけた施設があった。酒田地区動物管理センター。飼えなくなったなどの理由で
引き取られた犬猫たちの収容施設だ。庄内保健所の担当者に案内してもらい中に入る。
けたたましく鳴く犬や猫。中は薄暗く、犬猫の体臭やふん尿の異臭が鼻を突いた。
「引き取り手がなければ、原則2週間後に天童の動物指導センターに移送され処分されます」。
担当者は沈痛な表情で話す。「こんな仕事はなければいいと思う。でも誰かがしなければ
いけないし」。県内にある同様の4カ所の施設は、犬猫にとって死の入り口。里親が現れなければ、
炭酸ガスの窒息死が待つ。
◇ ◇
ペットを「家族の一員」とみる共生思想が浸透する一方、虐待や遺棄、悪質業者の販売などが
社会問題となり、国が「動物愛護管理法」を改正したのは05年6月。これを受け県は08年度から
17年度までの行動計画をまとめた「動物愛護管理推進計画」を策定。愛護啓発、里親探しと
殺処分減、不妊去勢手術の普及を図ることなどを決めた。
一方、殺処分数については具体的数値を明示。17年度までに、犬は06年度処分数(364匹)
の7割以下、家猫は同(1046匹)5割以下と定め、5年後をめどに見直すとした。
殺処分数は犬は2年目に4割にまで減少。家猫も7割を切ったが、3年目の10年度は
15匹増えた。しかも猫の場合は「野良猫」という課題を抱え、殺処分減の計画にあいまいさを
残している。
◇ ◇
犬、家猫、野良猫を合わせた殺処分数は08年度2679匹▽09年度2400匹▽10年度
2578匹。うち野良猫が08年度以降、1703匹▽1551匹▽1715匹−−と、10年度は
増加に転じ、殺処分数を押し上げている。しかし県の殺処分減少計画の対象から野良猫が
除外され、殺処分の本質や実態は見えづらくなっている。
「家」と「野良」で「いのちの価値」を「差別」すれば計画の前提となる「共生思想」そのものの
意義が失われかねない。また、関係者は「えさやりをする人がいる」「野良の子猫が持ち込まれる
ケースが後を絶たない」と野良猫の総処分数に占める比重の重さを認識している。
どうすれば殺処分数は減るのか。「特効薬」がないまま現場の職員たちは地道な活動を続けている。
毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/area/yamagata/news/20110627ddlk06040015000c.html