主導権はソニーがガッチリ!?
東芝とソニーが、スマートフォンなどに使われる中小型の液晶パネル事業を統合し、年内にも
新会社を設立する。これには政府系ファンドが出資する方向で最終調整に入っていることから
「官民一体となって国際競争力を高める」と、早くも関係者の鼻息は荒い。
ところが、当日の株価は東芝が12円高の409円と5営業日ぶりで反発したものの、ソニーは
31円安の2031円と4営業日連続で年初来安値を更新するなど、市場の受け止め方は
至ってクールだった。
「ソニーは顧客情報の漏洩問題に加え、ハッカーの新たな攻撃を受けるなどの特殊事情が
あったにせよ、市場は“国策統合”の裏の裏を読み抜いたということ。要するに同床異夢の
統合だから、遠からず馬脚を現すと睨んでいるのです」(市場関係者)
統合を検討しているのは「東芝モバイルディスプレイ」と「ソニーモバイルディスプレイ」で、ともに
東芝とソニーの全額出資子会社。テレビ用の大型液晶パネルで日本メーカーは韓国、台湾勢
の後塵を拝しているが、タブレット型端末などに搭載される中小型液晶は、テレビ用パネルに
比べて高い機能が欠かせないことから「まだ日本メーカーの優位は動かない」(業界筋)のが実情。
とはいえ、この分野でも韓国や台湾メーカーの追い上げが激しく、これに危機感を募らせた官民
出資の投資ファンド、産業革新機構が主導して両社の液晶統合を積極的に仕掛けた、
とされている。
産業革新機構は、技術力を持つベンチャー企業の育成や国際競争力を高めようとする企業
の事業再編などを後押しすべく、政府資本の日本政策投資銀行と大企業が出資して'09年7月
に設立したばかり。
大企業絡みの投資案件は今回が初めてのことだ。そうと理解すれば、東芝とソニーの液晶子会社
が統合後に予定している1000億円超の第三者割当増資を同機構がソックリ引き受ける結果、
最終的には7〜8割と断トツの出資比率となり、残りを東芝とソニーが分け合う形になるのも納得がいく。
その官民一体となった世界戦略を見据えての液晶統合を「同床異夢」とは穏やかではない。
前出の市場関係者が苦笑する。
「もし東電の原発事故さえなければ、東芝は原子力事業をフラッシュメモリーと並ぶ中核事業に
据えたに決まっている。しかし、このご時世では原発への深入りなどできるわけがない。といって
第三の柱として密かに狙っている医療装置などのヘルスケア事業はまだ収益予備軍に留まる。
だからこそ、液晶ビジネスを何とかしてドル箱路線に育てたい。そんな佐々木則夫社長の焦りを
見透かしたかのように、ソニーが連合軍結成の甘い罠を仕掛けた。それを知ってか知らずか、
佐々木社長が飛びついた図式です」
>>2に続く
http://wjn.jp/article/detail/9686560/ http://wjn.jp/article/detail/5896243/