【政治】菅首相の“固執”に愛想を尽かす産業界…再生エネ買い取り、電気料金に全転嫁で、製造業の「日本脱出」で産業空洞化加速か
★金持ちにお金が逆再配分され、貧乏人がより貧乏になる太陽光発電の全量買取制度
■普通の物ならば、値段が上がれば消費を抑制すればいいが、光熱費の場合は削減ができない。
特に、お金がない貧困家庭は、もう節電し切っている。もっと節電効果のある家電製品に買い替えようと思っても、お金がない。
貧困家庭ほど、光熱費は厳しい。「私は負担できるから良いですよ」ということではない。「みんなで負担」は「それだけ苦しい」ということ。
「公共料金」とくくられる電気料金だが、あくまで私企業の消費。その価格に政府が介入し、それによって金持ちにお金が再配分されるという「逆進性」のある制度。
菅首相は「最小不幸」を売り文句にしていたはずなのに、このままでは「最大不幸」を生みかねない。
■ノーリスク・ハイリターン
2010年度は1kwh当たり48円、2011年度は42円。通常、家庭の電気料金は23円だから、倍の値段で買い取っている。
つまり、4kw発電できるソーラーパネルで2kwしか使わなかったら残り半分は電力会社が買い上げる、このケースだと、
電気代はタダでなおかつ、それまで支払っていた倍額の収入が得られる。なんともオイシイ副業ではないか。
国の補助金申請は年々倍増し、既に2011年度は17万戸分・350億円の予算を付けている。
価格はまだ未定ながら、恐らくは余剰電力買取制度と同程度で、しかも10〜20年固定させる。
通常の倍高い価格で長期的に確実に買い取ってくれると約束してくれているのだから、発電する側にとってはリスクフリーで、これほど安全確実な投資はない。
ソーラーパネル設置費用という初期投資は必要だが、補助金もあるし、毎年のノーリスク・ハイリターンで確実に回収でき、その後は純利益を生み続けるわけだから。
■ギリギリ最大のパネルを設置する人は、より勝ち組に
法案によれば、発電量10kw未満であれば「住宅用」、それ以上は「事業用」と分類され、後者の場合は買い取り価格も若干下げられる。
それだけに、普通の家庭だと3kw用で賄えるが、9kw用を設置する人が出てくるだろう。
つまり、高値で買い取ってもらえるギリギリ最大のパネルを設置する。
現行の余剰分買い取りだけでも6kw分(60万円)は売れるし、全量買取制度が施行されれば9kw分(90万円)丸々儲かるから。
■全量買取制度は、金持ちをより金持ちに、貧乏人をより貧乏にする
◆余剰電力買取制度での一例(5kWの場合)
家庭の場合、自給率220%超えであり、太陽光発電のうち4割しか使わない。残った6割を売る。
▽売電収入…年間30万8592円 ▽電気料金支払(夜間使用など)…年間9万2582円 ▽年間約21万円の収入
6割の余剰買取で売電収入30万円だから、全量になったら年間50万円の売電収入となり、差し引き41万円と倍の収入に。
そのツケは、太陽光サーチャージ=太陽光発電促進付加金として、太陽光発電を導入できない貧乏人に。
■既に負担は始まっている
高値で買い取った差額分は誰が負担するのか。
毎月、電力会社から届く「電気ご使用量のお知らせ」なる伝票をご覧なさい。請求予定金額の内訳に「太陽光促進深い金」なる項目がある。
■住宅用ソーラーパネルは、基本的に戸建てにしか設置できない。つまり、戸建てを持てる富裕層しか利益を享受できない制度。
なのに、負担は低所得層にも求められる。電力は、収入とは関係なく生活に必要な電力量は一緒。だから、低所得者層ほど電気料金の上乗せはダメージが大きい。
結局、富裕層のために低所得者層が多大な犠牲を払わされる制度。まさに、貧乏人が余計に貧乏になる仕組みなのだ。
確かに、再生可能エネルギーを普及させるためには法整備が必要だが、制度の中身についてはもっと吟味し、議論する必要がある。
このままでは、富裕層と低所得者層との格差は、ますます広がる一方。
■「脱原発すれば安全」は嘘
そもそも、中国で原発事故が起きれば、日本は地理的にアウト。黄砂がそれを示す。
■「全量買取制度をしないと、脱原発できない」は嘘
「再生可能エネルギーを、どうやって導入するのか」の問題。国民の電気料金の負担なのか、他の方法で導入するのか、という選択肢の話。
■欧州と日本との比較は、国単体ではなく、欧州全体で比較するべき
「欧州の一国」について語る時、電力発電については、「欧州一つ」という考え方の方が良い。
なぜなら、相互で電力を融通し合っている体制だから。
欧州一つという考え方で見ると、実は「各発電システムの割合は、日本に近い」ことも、考慮にいれないといけない。
■実は、日本の電力会社の利益率は高くない。海外の1/2〜1/3くらい。
それを端的に表すのが、日本は燃料を輸入しているにも関わらず、電気料金が安い。価格に転嫁できる「原価の適正基準」が非常に低い。
■ヨーロッパ全体で電気料金が高いわけではなく、再生可能エネルギーを導入した国、脱原発をして電力を輸入している国ほど高い。
再生可能エネルギーを一番導入しているデンマークは、風力20%だが、電気料金は日本の約4割増。
20年前は、デンマークはヨーロッパで一番安かったくらい。今は一番高い。次は、太陽光を導入したドイツ。
デンマークは風力だから、輸出入をしている。1/3をフィンランド、スウェーデン、ドイツに輸出し、風が吹かない時は1/3を輸入している。
■全量買取制度について
▼テレビや新聞などどは、いち早く2000年に全量買取制度を定着させたドイツは、制度導入で加えられたコストは電気料金全体の5%にしか過ぎないと賞賛しているが、
『実際には、5%というのは直接的な転嫁分で、制度が実施されたことによる発送電や他のコストなど間接的な上昇分も転嫁した値上がり率は、54%にもなる』。
▼アメリカでは、カリフォルニア州で既に1978年に(全量買取制度)導入したものの、その後、化石燃料の低価格化で発電コストが低下。
しかし、長期間の高価格固定制度だったため、結果、カリフォルニア州は全米一、電気料金が高騰してしまった。
つまり、『高価格を長期間固定する制度には、危険性が伴う』。現にアメリカではその教訓を活かし、その後現在に至るまで、この制度は大半のしてで導入していない。
▼再生可能エネルギー先進国と評されてきたスペインの場合、通常の電気料金の5〜6倍の高価格で25年間の長期固定という(全量買取)制度を2004年から導入していたが、
『負担を政府が負うことにしたところ、たちまち財政が逼迫。結局、政府は手を引いてしまった』。
■『全量買取制度の怖さは、「価格が長期間固定される」こと』。
ソーラー発電装置が技術革新で低価格にできても、一定の高価格で売れるのだから、業者間の価格競争が起こらない。
しかも、『入札で値段が決まるシステムでもないので、大量に設置して参入した者が必ず勝ち組になる。実に歪んだ仕組み』。
■さらに、『売電専用のためだけにソーラーパネルを設置する企業が出始めている』。
大企業ばかり儲かり、そのツケを、ソーラーパネルが設置できない中小企業が、高い電気料金として支払う搾取の形に。中小企業は電気料金が売上の1割も占める。
■今後のエネルギー政策「特定のエネルギーに依存しない=たくさんの選択肢を持つ」ことが重要
特定のエネルギーには、太陽光などの再生可能エネルギーも含む。
しかし、全量買取制度は、売電専用目的でソーラーパネルを設置したりする企業や家庭が出て来てしまい、逆にエネルギーの選択肢を狭めてしまう。