故・黒澤明監督のフランス語通訳者として知られるカトリーヌ・カドゥー監督のドキュメンタリー『黒澤 その道』が、
第64回カンヌ国際映画祭カンヌ・クラシック部門で初披露された。
現地でインタビューに応じたカドゥー監督は「私が黒澤先生の映画を作ったなんて、天国で『まさか!?』と驚いているんじゃないかしら」と笑った。
第64回カンヌ国際映画祭コンペ部門出品20作品
映画には、ポン・ジュノ、塚本晋也、テオ・アンゲロプロス、マーティン・スコセッシ、
ベルナルド・ベルトルッチ、クリント・イーストウッド、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、アッバス・キアロスタミ、
ジョン・ウー、ジュリー・テイモア、宮崎駿という世界の名だたる11人の監督たちが登場。
そして、好きな黒澤作品の魅力と、いかに自分たちが黒澤作品に影響を受けたかを、
映画少年・少女に戻ったかのように語り尽くす52分の作品だ。
中には、1990年のカンヌで『夢』がオープニング上映された際、壇上で黒澤監督に
「クロサワ先生が、とても、とても好きです」という日本語でオマージュを捧げたベルトルッチ監督が、
黒澤監督の威圧的な雰囲気に圧倒され、そして、そのわずかな日本語を覚えるのに苦労した思い出話を披露。
また映画『夢』にゴッホ役で出演したスコセッシ監督は、
「自由にやりなさい」と言ってくれたのに、いざカメラの前に立つと「3歩歩いてから右を向いて……」と細かく演出された撮影裏話など、
実際に黒澤監督に触れた監督たちの貴重なエピソードも含まれている。
11人の監督たちにインタビューするため、
米国、イタリア、日本、韓国、中国と世界中を飛び回ったかカドゥー監督は
「タイトルの“その道“には、黒澤先生の道。黒澤先生が開いた道。そして、黒澤先生への道という3つの意味が込められています」と製作意図を説明する。
カドゥー監督は日仏語通訳・字幕の第一人者で、
黒澤監督とは映画『影武者』でカンヌ国際映画祭グランプリを受賞した1980年から1998年に亡くなるまで親交を温めてきた。
そのカドゥー監督が本作製作するきっかけとなったのが、
2009年にヴェネチア国際映画祭で行われた黒澤明監督生誕100周年を記念して行われたシンポジウム。
同映画祭に『鉄男 THE BULLET MAN』で参加していた塚本監督が飛び入り参加して語った、
黒澤体験を聞いたのがきっかけだったという。
塚本監督は高校2年生の時、東京・有楽町の劇場で『七人の侍』のリバイバル上映を観たのだが、
インターミッションが入った瞬間、前席からざわざわざわ〜っと、どよめきが迫ってきたことに感動し、自分もこんなどよめきを起こせるような映画を作りたいと映画監督になった経緯を持つ。
カドゥー監督は
「あのときの塚本監督のイキイキとした表情が忘れられなかった。ほかの監督たちにもあるであろう黒澤体験をうかがって、それを皆に伝えたいと思ったんです」と言う。
しかし残念ながら、日本では権利の問題で上映できず。
フランスでは、9月30日にCINE+Classicで放映が決まっている。
カドゥー監督は未収録のインタビューを含めたDVDをいずれリリースしたいという。
http://www.cinematoday.jp/page/N0032323