☆鉄道整備 採算に壁/合併の先に☆
さいたま市の誕生時に掲げられた鉄道整備計画のうち、実現されたのは一部にとどまっ
ている。3月で開業10周年を迎えた埼玉高速鉄道(SR、地下鉄7号線)の岩槻延伸計
画も、清水勇人市長は「2012年度までの事業着手が目標」と言い続けるが、採算性な
どの壁が立ちはだかる。
SR浦和美園駅前(さいたま市緑区)は1日、埼玉スタジアム前で開かれた「埼玉B級ご
当地グルメ王決定戦」の客でにぎわっていた。会場に向かう臨時バスの停留所には、
長い行列。歩くと15分ほどかかる。家族4人で来た川口市の男性会社員(37)は「サッ
カーの試合でもよく来る。電車1本でスタジアム間近まで行ければ、かなり便利なんだけ
ど」と話していた。
■延伸に「期待」
SRは、南端の赤羽岩淵駅(東京都北区)で東京メトロ南北線に乗り入れている。北端の
浦和美園駅から東武野田線岩槻駅まで約7キロ延伸し、途中に「埼玉スタジアム駅(仮称)
」などの駅を設ける計画がある。延伸実現に向け、岩槻区の自治会や商店会などでつくる
市民協議会の田中岑夫会長は「(05年に)岩槻市がさいたま市に合併された時から期待し
ている。延伸してもらわないと、合併の意味がない」と言う。
SRは県やさいたま、鳩ケ谷、川口3市が出資する第三セクター。09年度の1日あたりの
乗客数は8万3700人で、予測した9万6千人を下回った。08年のリーマン・ショックが影
響したとして、10〜12年度の計画では、予測を9万5300人に減らした。09年度決算で
は、累積損失が550億円に上った。
延伸部分の概算建設費は05年現在で約780億円。さいたま市が09年、採算性につい
て約2千万円をかけて調査を外注したところ、中間駅付近の居住人口は4千人になるとい
う試算が出た。しかし、市地下鉄7号線延伸対策課は「条件が複雑に絡んでいて、採算に
見合うかどうか、まだ分析できていない」と説明する。延伸した場合、投じた巨費が運賃に
はね返り、割高になることも予想される。ちなみに、王子駅(東京都北区)からの運賃は、
大宮駅経由でJRと東武を乗り継いだ場合、岩槻駅まで570円。これに対し、南北線とSR
を利用した場合は浦和美園駅まで620円で、すでに50円高い。
■新駅進まず
浦和、大宮、与野の旧3市が00年に作った「新市建設計画」には、SR以外にも様々な鉄道
整備事業が盛り込まれている。JRと東武野田線の具体的な5区間を挙げた新駅設置事業
もその一つ。しかし実現したのは、周辺の区画整理で人口増が見込まれ、09年に開業した
JR川越線日進―指扇駅間の西大宮駅だけ。川越線の大宮―日進駅間、武蔵野線の南浦和
―東浦和駅間など4区間は、めどが立っていない。
「新駅設置は周辺の街づくりや利用者増加の見通しが鍵」(市都市交通課)という。設置は市
が鉄道会社に要望するが、建設は原則として市の事業となる。西大宮駅は約49億円かかっ
たという。JR東日本大宮支社は、新駅について「自治体の要望を検討し、積極的に協力する」
との立場だ。ただ、ダイヤに影響することもあり、「一度に多くは建設できず、計画的に対応す
る」と説明する。
[2011年05月07日]
▽ソース:アサヒドットコム
http://mytown.asahi.com/saitama/news.php?k_id=11000001105070003