☆東日本大震災 こどもの日/読書で静かな時間と潤いを☆
震災後、避難所となっていた岩手、宮城、福島3県の小中学校は4月中旬以降、新学
期をスタートさせた。子どもたちにとって本当に長い春休みだったろう。
いまも近隣の施設を間借りして授業を再開する学校、損傷した校舎を修復中の学校が
多く、いつもの学級生活に戻るにはもう少しの我慢が要る。特に校内の図書室が使え
ず、多くの公立図書館も被災して閉館したままで、本に触れる機会が少なくなっている
のは気掛かりだ。
避難所ではボランティアの高校生らが、全国から届いた善意の本を見知らぬ小学生に
読んであげる光景がよく見られた。なかなか心を落ち着けられないでいる子どもたちに
は、静かに過ごす時間が大切といわれる。市町村が行っている移動図書館や学校など
への臨時貸し出しを活用し、親子などで読書を楽しむ場面をつくってほしい。
沿岸部の大きな避難所には公立図書館から300冊が貸し出された所もあり、職員らに
よる絵本の読み聞かせも好評だったという。深刻なテーマは避け、楽しめる内容を中心
に選んだが、避難所によっては「とても読書どころではない」と申し出を断られるケースも
多かったと、ある図書館職員は話す。
ことしは、「子どもの読書活動推進法」が施行されてから10年に当たる。児童生徒の読書
環境を整えるといった理念先行型の法律だったが、3年前に改定され、司書教員の増員、
学校での貸出冊数を増やす具体的な取り組みがうたわれた。仙台市内の小中学校では、
総合学習や国語の授業を「読書の時間」に充て、司書やボランティアの主婦らを招いて読
み聞かせをする「ブックトーク」という活動が盛んだ。ボランティアを育成する研修事業も併
せて行われ、今回の震災では、移動図書館の手伝いなどに大きな役割を果たした。災害
時だけの一過性に終わらせることなく、読書活動を盛り上げる担い手として期待したい。
せんだいメディアテークにある仙台市民図書館は3日に開館した。「市民の心を癒やした
い」と職員が膨大な数の蔵書を元に戻す作業に奔走しての再開だ。仙台に先駆け、気仙
沼図書館は4月20日に再開にこぎ着けた。高台にある図書館は、3月の震災で津波の難
を逃れたが、本が散乱、3週間後に再開した。4月7日の余震で、今度は建物被害を受け
た。児童室に部分倒壊の恐れが生じたため、児童書を一般室に移して再開した。「図書館
の底力」としか言いようがない見事な対応である。
阪神大震災の総括検証で、内閣府は文化施設について、「毎日の生活に直接関わらない
ため、対策は後回しになる傾向があるが、復興に向けた原動力、生活の潤いになる。早期
の再開が重要」と結論づけている。知的な潤いを求めるのは自然な感情だ。将来を担う子ど
もたちが気軽に手を伸ばし、お気に入りの作品と出会える環境に少しでも近づけられたらと願う。
[2011年05月05日]
▽ソース:河北新報
http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2011/05/20110505s01.htm